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前編(ミレイユ視点)
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赤、黄、青、緑……、色鮮やかな世界に、眩いばかりの光が差し込み、真っ白な翼を持つ天使が、キラキラと輝く泉の周りを飛び回る。天蓋つきベッドの天井に描かれた天界図を眺めていると、この場所が魔界で、自分が、この魔界で最も尊い御方に組み敷かれていると言うことすら忘れてしまう。
囚われている部屋に、いつの間にか充満した甘い匂いが鼻腔を抜けるたびに、脳は酩酊し、何も考えられなくなる。己の口からひっきりなしに上がる淫雛な声を恥ずかしいと感じる心まで、失ってしまったようだ。
「……ひっ、いぃ…あぁぁ……」
先ほどまで、己の口腔内を這い回っていた舌が、銀色の糸を纏いながら離れ、頬、首筋、そして、ささやかに主張する胸の膨らみをたどり、赤く色づく頂へと這っていく。そんな光景を、滲んだ視界の先に見つめることしか出来ない私は、蛇に睨まれた蛙のように、喰われることをただ震えながら待つことしかできない。
時折り見える赤い唇と舌が身体を這い回る様は、否応なしに己の官能を高めていく。
「ひっ!! いっ……、あぁぁ…んぅ……」
「あぁ、ミレイユ。私の愛撫にも感じてくれているのですね」
「へっ……、えっ……」
チロチロと胸の頂を舐めていたディーク様の唇が唾液で濡れ、室内を照らす橙色の光に照らされ、妖艶に赤く光る。その様を見つめていた私の喉がゴクリっと音を立て嚥下した。
『次は何をされるのだろうか?』と考えるだけで、己の奥深くが何かを欲しがって疼く。しかし、性の知識に乏しい私は、自分が何を欲しがっているのかさえわからない。
ただただ、なされるがままディーク様に翻弄されるのみ。しかし、それを嫌がっていない自分が確かにいる。
ディーク様への想いが変わったのはいつだったのか?
始めは、自分の身さえ守れない、貧弱で非力な幼子だと思っていた。それなのに、前魔王の落とし胤というだけで命を狙われる日々。仕え始めた頃は、同情以外の感情はなかったように思う。守ってくれる親は死に別れ、頼れるのは育ての親のハルト公爵のみ。しかし、ハルト公爵のディーク様へ向ける態度は、臣下のそれに他ならない。幼いディーク様にとって、無条件に甘えられる存在は、いなかったように思う。
いつしか、仕えるべき主人が、守るべき弟のような存在へと変わっていった。親愛の情を私にだけ向けてくれるディーク様。
この御方を守れるのは私だけ。
ディーク様の愛は、私だけのもの。
ドス黒い感情が心を支配していく。その感情は、浅ましい優越感。最下層のオークの女戦士でありながら、この魔界で最も尊い御方の親愛を独り占めしているという優越感は、私の心の中にある汚い欲望を育てていった。
――――、このままディーク様が覚醒しなければいい。
そうすれば、彼はずっと私だけのもの……
しかし、そんな汚い願望は、いとも簡単に崩れ去った。大怪我を負い、次に目が覚めた時、手を握り、安堵の表情を浮かべたディーク様の成長した姿を見た私は、絶望した。
もう、ディーク様は私だけのディーク様ではないのだと。
「ミレイユ……、なぜ泣くのです?」
瞳から溢れた涙が、頬を伝い流れていく。その涙の跡をなぞるように、優しいキスが降る。そして、次の瞬間には手首の拘束が解かれディーク様に抱きしめられていた。
「ミレイユ、どうして泣いているの? 私の愛撫は、泣くほど苦痛でしたか?」
「うっ……、ひっく……うぅ……」
艶をなくしガサガサの私の赤髪をディーク様が撫でる。その行為が、まるで幼子をなだめているかのように優しくて、益々涙は止まらなくなった。
首を振ることでしかNOと言えない自分は、幼子のように脆い。数ヶ月前までは、ディーク様を守る立場だった強い私は、もういない。それが、不甲斐なくて、不甲斐なくて、悔しくて仕方がない。
「ひっく……、ディーク、様に……、私はいらない」
「なぜ、そんな悲しいことを言うのですか?」
「だって……、ディーク様は、私より、強い。弱い私は……、いらない」
「ミレイユ、あなたの存在価値は、護衛騎士としての強さだけではないでしょ。さっきも言いましたが、私はミレイユだから側にいて欲しいのです」
「違う、違う……」
「何が違うと言うのですか?」
「だって、私……、綺麗じゃない」
「はっ? 綺麗じゃない? ミレイユは、私が容姿だけで、伴侶を選ぶと思っているのですか?」
ブワッと立ち上った殺気に当てられ、止めどなく流れていた涙が引っ込む。優しく髪を撫でていたディーク様の態度が急激に変化していく。上体を起こしたディーク様に怒りを宿した瞳で睨まれ、ヒッと喉が鳴った。
囚われている部屋に、いつの間にか充満した甘い匂いが鼻腔を抜けるたびに、脳は酩酊し、何も考えられなくなる。己の口からひっきりなしに上がる淫雛な声を恥ずかしいと感じる心まで、失ってしまったようだ。
「……ひっ、いぃ…あぁぁ……」
先ほどまで、己の口腔内を這い回っていた舌が、銀色の糸を纏いながら離れ、頬、首筋、そして、ささやかに主張する胸の膨らみをたどり、赤く色づく頂へと這っていく。そんな光景を、滲んだ視界の先に見つめることしか出来ない私は、蛇に睨まれた蛙のように、喰われることをただ震えながら待つことしかできない。
時折り見える赤い唇と舌が身体を這い回る様は、否応なしに己の官能を高めていく。
「ひっ!! いっ……、あぁぁ…んぅ……」
「あぁ、ミレイユ。私の愛撫にも感じてくれているのですね」
「へっ……、えっ……」
チロチロと胸の頂を舐めていたディーク様の唇が唾液で濡れ、室内を照らす橙色の光に照らされ、妖艶に赤く光る。その様を見つめていた私の喉がゴクリっと音を立て嚥下した。
『次は何をされるのだろうか?』と考えるだけで、己の奥深くが何かを欲しがって疼く。しかし、性の知識に乏しい私は、自分が何を欲しがっているのかさえわからない。
ただただ、なされるがままディーク様に翻弄されるのみ。しかし、それを嫌がっていない自分が確かにいる。
ディーク様への想いが変わったのはいつだったのか?
始めは、自分の身さえ守れない、貧弱で非力な幼子だと思っていた。それなのに、前魔王の落とし胤というだけで命を狙われる日々。仕え始めた頃は、同情以外の感情はなかったように思う。守ってくれる親は死に別れ、頼れるのは育ての親のハルト公爵のみ。しかし、ハルト公爵のディーク様へ向ける態度は、臣下のそれに他ならない。幼いディーク様にとって、無条件に甘えられる存在は、いなかったように思う。
いつしか、仕えるべき主人が、守るべき弟のような存在へと変わっていった。親愛の情を私にだけ向けてくれるディーク様。
この御方を守れるのは私だけ。
ディーク様の愛は、私だけのもの。
ドス黒い感情が心を支配していく。その感情は、浅ましい優越感。最下層のオークの女戦士でありながら、この魔界で最も尊い御方の親愛を独り占めしているという優越感は、私の心の中にある汚い欲望を育てていった。
――――、このままディーク様が覚醒しなければいい。
そうすれば、彼はずっと私だけのもの……
しかし、そんな汚い願望は、いとも簡単に崩れ去った。大怪我を負い、次に目が覚めた時、手を握り、安堵の表情を浮かべたディーク様の成長した姿を見た私は、絶望した。
もう、ディーク様は私だけのディーク様ではないのだと。
「ミレイユ……、なぜ泣くのです?」
瞳から溢れた涙が、頬を伝い流れていく。その涙の跡をなぞるように、優しいキスが降る。そして、次の瞬間には手首の拘束が解かれディーク様に抱きしめられていた。
「ミレイユ、どうして泣いているの? 私の愛撫は、泣くほど苦痛でしたか?」
「うっ……、ひっく……うぅ……」
艶をなくしガサガサの私の赤髪をディーク様が撫でる。その行為が、まるで幼子をなだめているかのように優しくて、益々涙は止まらなくなった。
首を振ることでしかNOと言えない自分は、幼子のように脆い。数ヶ月前までは、ディーク様を守る立場だった強い私は、もういない。それが、不甲斐なくて、不甲斐なくて、悔しくて仕方がない。
「ひっく……、ディーク、様に……、私はいらない」
「なぜ、そんな悲しいことを言うのですか?」
「だって……、ディーク様は、私より、強い。弱い私は……、いらない」
「ミレイユ、あなたの存在価値は、護衛騎士としての強さだけではないでしょ。さっきも言いましたが、私はミレイユだから側にいて欲しいのです」
「違う、違う……」
「何が違うと言うのですか?」
「だって、私……、綺麗じゃない」
「はっ? 綺麗じゃない? ミレイユは、私が容姿だけで、伴侶を選ぶと思っているのですか?」
ブワッと立ち上った殺気に当てられ、止めどなく流れていた涙が引っ込む。優しく髪を撫でていたディーク様の態度が急激に変化していく。上体を起こしたディーク様に怒りを宿した瞳で睨まれ、ヒッと喉が鳴った。
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