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特別な出会い
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――ユリアス、お前との出会いが全てを変えた。
陛下との確執、母を死に至らしめたという罪悪感、王族の中で自分だけが違うという劣等感、様々な葛藤の中、自暴自棄になっていたアルフレッド殿下は、死と隣り合わせの軍の中に身を置く事で、自身との感情に折り合いをつけていたと言った。
「当時は、本気で死んでも良いと思っていた。だからこそ、危険な任務にも積極的に参加したし、何処ぞの知らない場所で、のたれ死んでも良いとさえ思っていた。お前と出会った、あの森にも実地調査で入っていた。簡単に言うと、野盗狩りだな。あの時も草食獣人の誘拐事件が頻発していて、王命で軍に調査が指示されていた」
だから、あんな得体の知れない森に殿下が居たのか。
「ただ、それだけでは無かったがな。ユリアス、俺が昔から命を狙われているのは知っているな?」
「えぇ、殿下との出会いが出会いでしたからね、そこら辺は想像がつきます。あの時、殿下の腹部には刺し傷がありました。ただ、あの程度の傷で、狼獣人が倒れるなど考えられませんでしたから、すぐピンときましたよ。毒だとね」
「やはり、お前は勘がいい」
勘というよりも経験値の違いだと思うが。伊達に前世、獣医をしていた訳ではない。
「あの日、調査中に部下に腹を刺されたんだ。傷は大した事は無かった。それよりも俺が負傷したことで、隊に動揺が走る事を一番に懸念した。森の中という特殊な状況下で、隊を束ねる長が怪我を負うなど、混乱を招くことに他ならない。しかも、敵がどの程度潜んでいるかもわからない。あの時は、俺が隊から離れることが最良の選択だった」
軍医をするようになり知ったことも多い。実践に近い部隊になればなるほど、それをまとめる隊長の重要性は増す。隊長が負傷するだけで、その部隊を壊滅させるだけの打撃を与えることも出来るのだ。あの森の地理に詳しければ話は別だろうが、実地調査に入ったばかりの隊では、隊長が負傷すれば混乱が起きるのは必然だ。
部隊の中に裏切り者が居たと言うことは、命を狙われていたのは殿下で間違いないだろう。どこぞの黒幕から暗殺指令が出ていたのかも知れない。
アルフレッド殿下さえ、その部隊から居なくなれば、他の隊員に危険が迫ることは回避できる。だからこそ、殿下は自分が囮となり、隊を離れたのだろう。部下を巻き込まないために。
「隊を離れたまでは良かったが、まさか武器に、毒が塗ってあったとは思わなかった。目が回り、徐々に身体が痺れ、漠然とこのまま死ぬのだと感じていた。ただ、それでいいと思った。やっと、全ての苦しみから解放されるのだと」
遠くを見つめ、物悲しげに話す殿下の横顔を見つめ、心がキュッと痛み出す。この痛みが、子を思う親の気持ちというモノなのだろうか。
「殿下は、そんな状況に落とした陛下の事を今でも恨んでいるのですか?」
謁見の様子からは、そんな感情は微塵もうかがえなかった。自分なら、どんなに時が流れようとも、そんな状況を作った陛下の事を恨み続けるだろう。
「ユリアス、お前に出会わなければ、今でも父の事を恨んでいただろうな」
「私は、何もしていません。ただ成り行きで殿下を助けただけであって、陛下との仲を取り持った訳でもない」
「いいや、違う。お前に、あの時出会えたからこそ、俺は生きようと思えた」
「それは大袈裟です」
「大袈裟なものか! 俺は二度もお前に助けられた」
二度、助けた?
どういう事だ。殿下の命を救ったのは、森での暗殺未遂事件の時だけだ。
二度とは、いったい……
「俺は、お前に話さねばならないことがある。驚かないで聞いてほしい。ユリアス、お前は――」
「これはこれは、アルフレッドと――兎獣人か……」
突然の乱入者に、アルフレッド殿下の殺気が一気に膨れ上がる。
「――ちっ……レオンハルト……」
背後を振り向き認めた人物は、青銀の髪を持つアルスター王国の王太子、『レオンハルト・アルスター』その人だった。
陛下との確執、母を死に至らしめたという罪悪感、王族の中で自分だけが違うという劣等感、様々な葛藤の中、自暴自棄になっていたアルフレッド殿下は、死と隣り合わせの軍の中に身を置く事で、自身との感情に折り合いをつけていたと言った。
「当時は、本気で死んでも良いと思っていた。だからこそ、危険な任務にも積極的に参加したし、何処ぞの知らない場所で、のたれ死んでも良いとさえ思っていた。お前と出会った、あの森にも実地調査で入っていた。簡単に言うと、野盗狩りだな。あの時も草食獣人の誘拐事件が頻発していて、王命で軍に調査が指示されていた」
だから、あんな得体の知れない森に殿下が居たのか。
「ただ、それだけでは無かったがな。ユリアス、俺が昔から命を狙われているのは知っているな?」
「えぇ、殿下との出会いが出会いでしたからね、そこら辺は想像がつきます。あの時、殿下の腹部には刺し傷がありました。ただ、あの程度の傷で、狼獣人が倒れるなど考えられませんでしたから、すぐピンときましたよ。毒だとね」
「やはり、お前は勘がいい」
勘というよりも経験値の違いだと思うが。伊達に前世、獣医をしていた訳ではない。
「あの日、調査中に部下に腹を刺されたんだ。傷は大した事は無かった。それよりも俺が負傷したことで、隊に動揺が走る事を一番に懸念した。森の中という特殊な状況下で、隊を束ねる長が怪我を負うなど、混乱を招くことに他ならない。しかも、敵がどの程度潜んでいるかもわからない。あの時は、俺が隊から離れることが最良の選択だった」
軍医をするようになり知ったことも多い。実践に近い部隊になればなるほど、それをまとめる隊長の重要性は増す。隊長が負傷するだけで、その部隊を壊滅させるだけの打撃を与えることも出来るのだ。あの森の地理に詳しければ話は別だろうが、実地調査に入ったばかりの隊では、隊長が負傷すれば混乱が起きるのは必然だ。
部隊の中に裏切り者が居たと言うことは、命を狙われていたのは殿下で間違いないだろう。どこぞの黒幕から暗殺指令が出ていたのかも知れない。
アルフレッド殿下さえ、その部隊から居なくなれば、他の隊員に危険が迫ることは回避できる。だからこそ、殿下は自分が囮となり、隊を離れたのだろう。部下を巻き込まないために。
「隊を離れたまでは良かったが、まさか武器に、毒が塗ってあったとは思わなかった。目が回り、徐々に身体が痺れ、漠然とこのまま死ぬのだと感じていた。ただ、それでいいと思った。やっと、全ての苦しみから解放されるのだと」
遠くを見つめ、物悲しげに話す殿下の横顔を見つめ、心がキュッと痛み出す。この痛みが、子を思う親の気持ちというモノなのだろうか。
「殿下は、そんな状況に落とした陛下の事を今でも恨んでいるのですか?」
謁見の様子からは、そんな感情は微塵もうかがえなかった。自分なら、どんなに時が流れようとも、そんな状況を作った陛下の事を恨み続けるだろう。
「ユリアス、お前に出会わなければ、今でも父の事を恨んでいただろうな」
「私は、何もしていません。ただ成り行きで殿下を助けただけであって、陛下との仲を取り持った訳でもない」
「いいや、違う。お前に、あの時出会えたからこそ、俺は生きようと思えた」
「それは大袈裟です」
「大袈裟なものか! 俺は二度もお前に助けられた」
二度、助けた?
どういう事だ。殿下の命を救ったのは、森での暗殺未遂事件の時だけだ。
二度とは、いったい……
「俺は、お前に話さねばならないことがある。驚かないで聞いてほしい。ユリアス、お前は――」
「これはこれは、アルフレッドと――兎獣人か……」
突然の乱入者に、アルフレッド殿下の殺気が一気に膨れ上がる。
「――ちっ……レオンハルト……」
背後を振り向き認めた人物は、青銀の髪を持つアルスター王国の王太子、『レオンハルト・アルスター』その人だった。
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