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デジャヴ② ※

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「――うっ……、あっ……」

 ぴちゃぴちゃと鳴る卑猥な水音と、くぐもったうめき声が、静寂に包まれた部屋に響く。

 子猫がミルクを舐めるように、ハインツの胸を縦横無尽に動き回るエリザベスの舌が、膨らみ始めた突起をかすめる度にあがるハインツのくぐもった声に、エリザベスの胸の鼓動も速くなる。

(ふふふ、男の人も感じるところは一緒なのね。声抑えちゃって、ハインツ様も可愛いところがあるわ)

 ハインツから主導権を奪ったエリザベスは悦に浸る。後ろ手に縛られたハインツは、エリザベスの暴挙になされるがまま、抵抗すら出来ない。

 ハインツよりも優位に立っているという滅多にない状況に、エリザベスの悪戯心がむくむくと育ち、頭の中ではハインツをもっと虐めてしまえと、悪魔がささやく。

(散々、振り回されたのですもの。ちょっとくらい意地悪したっていいわよね)

 エリザベスは、ハインツの胸から顔を上げると、ベッドに横たわる彼を見下ろし笑みを浮かべる。そして、唾液でぬらぬらと濡れた胸へと手を這わせた。

「ハインツ様のお胸の突起……、膨らんできていてよ」

「――そうですね。エリザベスが丹念に舐めるものだから。乳首……、そんなに美味しかったの」

 口元に笑みを浮かべククっと笑うハインツを見てエリザベスの頬がカッと熱くなる。

(お、おいしい? ですって……、それじゃ、まるで私が乳首好きの変態みたいじゃない)

 今更ながらに、自分の置かれている状況を客観視し始めたエリザベスの羞恥心が一気に高まる。

(私、ハインツ様を縛って、馬乗りになって……、何やってんのよ。恥ずかしい……)

 このまま、この場を立ち去ればいい。

 彼の手を縛っているリボンを解き、一目散に逃げ出せば痴女というレッテルを貼られずに済むかもしれない。

 そんな甘い考えは、次に放たれたハインツの言葉と挑発的な視線にあおられエリザベスの頭から霧散して消えた。

「おや? もう終わりですか。私に罰を与えると意気込んでいた貴方はどこへ消えてしまったのですか? それとも、これが罰だとでも。そうなら随分優しい罰だ」

「ひゃっ、あぁ!!」

 ハインツの手を縛っていたリボンを解こうと前屈みになっていたのが悪かった。

 突然、首筋に感じた冷たい感触にエリザベスの口から小さな悲鳴がもれた。ハインツが、隙をついてエリザベスの首筋を舐め上げたのだ。

 そのほんのわずかな刺激でさえ、今のエリザベスには身悶えるほどの快感を生む火種となる。刺激が全身を駆け抜け、腹の奥底が潤み出す。

「ハ、ハインツ様! 約束が違います!! 私には指一本触れないと」

「はて、そうでしたか? 指は触れていませんね」

「なっ!? 貴方に与える罰は終わってなどいませんわ! ハ、ハインツ様、覚悟なさいませ」

 クスクスと笑いながらトボケているハインツの態度にカッとなったエリザベスは、後先考えずにハインツの挑発に乗ってしまったのだった。

(ハインツ様が私にやったのと同じようにすればいいのよ! キスをして、段々と降りていくの。首、鎖骨、そして胸へ……、あとはお腹にキスされて、それから、それから……)

 頭の中のエリザベスが、ハインツの手によって身悶える。その姿に、エリザベスの頬はますます赤くなっていく。

(……それから、それから――)

「あっ! ひゃっ……」

 妄想の中のエリザベスの足が開き、あらぬ所をハインツに舐められる映像がフラッシュバックして、あまりの衝撃にエリザベスは自分の顔を両手で隠した。

(うそっ……、なに想像しているのよ!! ちがう、ちがう……)

 頭をふり、なんとかしてエッチな妄想を頭の中から閉め出そうとしていたエリザベスに、ハインツの容赦ない一言が突き刺さる。

「エリザベスは、面白いですね。一人百面相して……、私との初エッチでも想像していたのでしょ。この変態」

「へ、変態!? 違いますわ! そんなこと、想像していません」

「嘘つき……、エリザベスは気づいていないのですか? 自分が濡れていることに」

「えっ? ひゃ、あぁぁぁ……」

 突然、下腹部を襲った激しい快感に、エリザベスの身体がハインツの上で跳ねる。

「ほらっ……、濡れている」

「やっ、ま、待って――、動かさないで!!」

 わずかに立てたハインツの膝がエリザベスの秘裂に喰い込み、秘豆を潰す。その強烈な刺激が全身を震わせ、エリザベスは軽く達してしまったのだ。

 快感の余韻に力が抜けたエリザベスの身体が横たわるハインツの身体の上へと重なる。

 目を瞑り、ハインツの胸の上で荒く呼吸を繰り返すエリザベスの耳に吹き込まれた悪魔のささやき。

「軽く達しましたか。一人で気持ち良くなってエリザベスは、ひどい人ですね。でも物足りないんじゃないですか? エリザベスは知っていますよね。もっと狂おしいほどの快感があることを」

 狂おしいほどの快感。

 それをエリザベスは知っている。

 痛みを耐えた先にある幸福感。そして腹の奥底で燻り続けた官能の火が燃え上がり、満たされる一瞬の刹那。あの狂おしいまでの快感を知ってしまったエリザベスは、小手先の快楽などでは満足出来ない身体になっていた。

 あの快感が欲しい。ひとつになる幸福感を味わいたい。

「さぁ、エリザベス。どうすればいいか、わかりますよね?」

 耳に落とされた悪魔のささやきにエリザベスはコクンっと頷く。

 ハインツの誘惑に陥落したエリザベスの頭の中からは、ハインツを翻弄しお仕置きをするという本来の目的は、綺麗さっぱり消え去っていた。
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