魔法適性の無い魔法使い

雪咲響鬼

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過去

リツとカナの最後。

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燃え盛る炎の中。
ふたつの影が、向かいあっていた。

「約束。守れなくてごめんね。
こんなにボロボロになるまで無理させてごめん。
協力してくれてありがとう。」


グリム・ノーツに驚異が無くなったと言われ、そしてグリム・ノーツが作った結界の中でリツがカナに言う。

「ううん。
君が最後の攻撃を守ってくれたし、
こんなの全然平気だよ。
リツこそ、むちゃばかりして、あんなバケモンに突っ込んで行くし、しかもあの時の他にも戦ったんでしょ?」

「まぁ……ね
それが僕のすべきことだったし、僕は大丈夫だよ。

じゃあ。最後の約束も守るね。
ずっとずっと待たせてごめんね。」
そう言ってカナに着いていた鎖を。
魔法を壊す。

「ありがとう。」
魔法が壊れたのがわかったんだろう。
彼女は泣きそうになりながら笑う。
彼女に魔法をかけた人物はもう殺されているが、魔法は消えずに残ったままだった。

「これで自由だね。」

「そう。だね。
ねぇ。この後もまだあんなのと戦うんでしょ?」



「そうだね。グリム・ノーツとの約束もあるし、戦うことになると思う。」

「じゃあ。私も着いていく。」

「え!?もう、自由なんだよ?
なんでも出来るんだ。俺のそばにいなくてもいいんだ!!」

「私に居場所なんてないんだよ。
だから、あなたが私の居場所になってよ。
あなたが私を守ってくれるって言った時すごく嬉しかった。
だから、あなたのそばにいさせて。
何があっても離れない。
ずっとずっとそばにいる。
あなたのことを世界の誰もが嫌ってもずっとずっとあなたのそばにいるから。
だからお願い
そばにいさせて。
これを新しい約束にしよう。
ダメ……かな?」
リツの目を見つめて手を握りながらカナが誓う。


「ありがとう……

わかった。
僕が君の居場所になる。

これから先はきっともっと危なくなる。
だから、僕が君を守る。
何があっても、どんな敵が来ても、
必ず僕が君を守ってみせる。
だから、どんなときでもそばにいて欲しい。
新しい約束。」

「約束。何があっても僕は君を守るよ。(僕を救ってくれた、生まれたことを否定された僕を認めてくれた)君を、僕は何に変えても守るよ」
手を握り返し、まっすぐカナの目を見てリツも誓う。


「クスッ。
口調、戻ってるよ?」

しばらく見つめ合い、照れるように、からかうようにカナが言う。

「あ……
ん。んん。
これから、新しい人生を始めるんだ。
あの人たちも、居なくなった。
あの人たちからつけられたグリム・ノーツ。
カナリア。
そんな名前からとった名前は捨てちゃおうか。
全部。全部いままでの全部捨てて新しくやり直そう。」

それをうけ、リツが仕切り直すように言う。

「リツ気に入ってたんだけどなぁ……
でも、そうだね。
それもいいかもしれない。
新しい名前どうするの??」

「んーー。また後で考えようか。
あの2人そのままだし。」

「あ。そういえばそうね。
忘れてた。
とりあえず、傷直しちゃお。
黄色。」


しばらくして傷が癒えた頃。
2人揃って歩き出す。
いままでの全部を捨てて、待たせてる2人の元に向かう。
グリム・ノーツに言われて知っていることを、

この元城に向かって2人の両親が向かってるのを2人に伝えるために……

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