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恋人編(前編)
第25話
しおりを挟む「あら、すっごくイケメンね。」
フェルとの食事を楽しんでいたある日、突然そんな声が掛かった。
誰だ?と食べることを一旦止めて首を捻って横を見れば、腕を組んでこちらを見下ろす女の人がいた。
び、美人だ。
私の目が最大限まで見開かれる。
ゆるくウェーブがかった漆黒の髪の毛は艶々としていて細部まで十分手入れが行き届いているのが分かる。
少しつり上がっている切れ長の目、二重も綺麗なラインをとっており、大人なオンナを連想させる。
卵形のシュッとした輪郭も、赤く塗られた弧を描くような真っ赤な唇も全てが美しい。
そして私の目は自然と目の前にあるソレにいく。
ーーーッ大きい。
豊かに実ったそれは果実のようだった。赤くキラキラとしたドレスは襟がなく、胸が強調されるような作りになっており、谷間が誘うように盛り上がっている。
白い肌に黒髪と赤いドレスが映えていて本当に綺麗だった。
「名前、なんて言うのかしら。」
目の前の美人さんが、フェルを見ながらそう聞く。
なに?新手の逆ナン?え?
心配になってフェルを見れば、彼も顔には出ていないが心底驚いているようだった。
「あら、喋れなかったのかしら?」
顎に手を当てて、そう言う彼女は確信犯だ絶対に。
色気で釣ろうとしてるのだろうか。
腕にぎゅっと挟まれた胸の谷間が先ほどよりももっと強調されている。
卑怯だ。
彼女の胸を見てから、自分のささやかな胸を見た。
なんと寂しいことだろう。
少しの膨らみしかない私には彼女のおっぱいには適わない。
でも、絶っ対にフェルは渡さないんだから。
彼女に敵対心を持ったことで、少し機嫌の悪くなってきた私に気づいたフェルが慌てたように手を握ってきた。
温かいフェルの手。
少し落ち着こうと冷静になってみる。
「フェルディナントだ。」
フェルは優しい。
だから彼女の問いにも答えてあげていた。
「ふーん。いい名前ね。」
さらりと彼女が彼を褒めたことに冷静さが崩れ、またもや苛立ちが募ってくる。
なんなのこの人。
別にフェルの名前はカッコイイし褒めるのもわかる。
だが、何故こんなにも上から目線なのだこの人は。
腕組みをして腕の上に胸を置いているのも気に食わない!
ムキーっとなる気持ちをなんとか気合いで押し込める。
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「あの、どうしてここに?」
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得意のニコニコ顔を顔面に貼り付け、私は彼女に問う。
───しかし、私は彼女の眼中にないらしい。
見事なまでのスルースキルを使って、私をいない存在だと認識したようだ。
もちろん返事は、ない。
マグマのように熱いものが私の奥底からふつふつと湧き上がる···気がする。
が、それもまたなんとか抑えた。
「私達、今、二人で食事中なんですよね。」
遠回しに彼女に「二人で食べてるから邪魔者はどっか行け」と伝える。
フェルは私の態度にオロオロとしだした。
駄目よフェル。これは女の戦いなんだから。
「まあ!いらっしゃったんですか?気が付かなかったです。ぷっあまりにも、小さくて···ふふ。」
あからさまに嫌味ったらしい口ぶりでそう言う彼女。
口に手を当て嘲るように私を見る視線は、
身長と、
胸を見ていた。
ほんとに何ですか?この人!
ムカつく!
私は苛立ちを隠すように、目の前のご飯を食べることを再開した。
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