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出会い編
第20話
しおりを挟む眩しい光と、
隣に感じる温かい体温。
「ーーーっ!」
それで目覚めた私は伸びをしようと体を動かした瞬間に走った痛みに、悲鳴をあげそうになった。
フェルさんに何度も愛され、甘くドロドロに溶かされた私は、どうやら途中で力尽きてしまったようだ。何度目かの絶頂の後の記憶が曖昧で、ハッキリとは思い出せない。ひたすら喘いでいたような気がするが。
私は昨夜の出来事を思い出し、顔が真っ赤になった。柄にもなく恥ずかしさに悶えてしまう。きゃーと身体を縮こませようとすれば、またも襲ってくる身体の激痛に泣きそうになった。痛すぎる。反動でもぞりと身体が動けば、隣に寝ている裸のフェルさんと向かい合わせになった。
それによって目の前に現れる彼の裸体に、私の目は惹き付けられる。
綺麗な筋肉···。
身長が高いフェルさんは華奢ではないとは思っていたが着痩せするタイプなのか、やはり冒険者だからなのか、バランスのいい美しい筋肉が程よくついていた。
その輝きといったら言葉で表しきれない。
その神々しいものを見たことで、フェルさんのことなら全部好きな私が、この筋肉に触れたいと思うのも仕方ないだろう。
昨日はやることだけやって、彼の上半身を堪能することだってできなかったのだ。
下心丸出しでそっと、フェルさんの胸板に手を這わせる。
彼のそこは想像以上にすべすべでしっとりしていて···ほんとに素敵だ。
こんなに素敵な彼と昨日···。
嬉しさが込み上げてきた私は、その恥ずかしさを誤魔化そうとそっと擦り寄るようにフェルさんの胸元に近づいた。
ほんのり汗の匂いと花のような匂いがする。
うっとりとその感触と匂いを楽しんでいれば、フェルさんが擽ったそうに「ん···。」と唸った。
どうやら意識が覚醒してきたらしい。
寝ぼけた顔でこちらをボーッと見つめる彼もとてもかっこいい。キスしたい。
自分の胸辺りに張り付くようにいる私を、頭が働かないのかじっと凝視した後、彼は慌ててベッドから飛び降りた。
行動がはやいよ、もう。
もっと堪能していたかった気持ちを抑え、私は意地悪く彼に言葉を発する。
「あれ?フェルさん起きちゃいましたか?」
痛すぎる所為で動かずにベッドの上からそう言えば、フェルさんはわなわなと唇を震わせて何か言いたげな表情をした。
「まさか、夢だと思ったりしました?」
ニヤリと笑えば、彼は真っ赤になりながら自分の下半身を見た。
そして、またも顔を真っ赤にする。
そう。彼は今、情事の後ということで全裸なのである。
ベッドから飛び降り、尻もちをついている状態のフェルさんの裸は、私にはバッチリと見えているわけで···。
慌てて床に落ちていたローブを纏い、彼は口を開いた。
「ほ、本当に夢じゃないのか···?」
まだ疑っているらしい彼に私はニコニコと返す。
「はい。沢山あんなことしといて捨てるとは言わせませんよ。」
彼は私の言葉に目を閉じ、安堵の息を吐いた。
「そうか、夢じゃ···なかったんだな。」
嬉しそうに、安心するように、自分に言い聞かせるようにそう言うフェルさんに私はまたもやムラっときてしまう。
彼の気持ちがダイレクトに伝わってくるのも堪らない。
鼻血が出そうだなあと呑気に思いながら、彼から視線を外し天井を見上げる。
このムラムラを止めなければという意図があるのをちゃんとわかって欲しい。身体が痛すぎてもう襲うこともできないんです。
悶々とこの気を沈めていると突然、隣からガサリと衣の擦れる音がした。
顔をそちらに向ければ、彼が正座をしていた。
何をしているんだと眉をひそめてフェルさんを見れば、バチりと目が合う。
そこには醜い容姿に悩むフェルさんはおらず、不安を押し殺し何かを決心した一人の男がいた。
「セレーナ。本当に···良かったのか?」
フェルさんが揺らぐ瞳でにそう聞く。
恐らく彼の言ったことは最終確認だろうか。
それなら、何を今更。
この時を私がどれほど待ち望んでいたことか。
どれほど夢にまで見てきたことか。
「当たり前じゃないですか。フェルさん。愛してます。ずっとフェルさんだけを愛してます。」
ふわりと笑ってそう言えば、フェルさんは泣きそうなでも嬉しそうな顔して笑った。
彼が笑った顔を初めて見たかもしれない。
またひとつ、彼を好きになる。
彼が私に抱きつき、耳元に口を近づける。
本当にこの人は──────
「俺もあいしてるよセレーナ。」
私を夢中にさせる天才だ。
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お読みいただきありがとうございます。
なんだか書いてる自分が興奮してきました。
今日はあと1話です。
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