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出会い編
第15話
しおりを挟むフェルさんがギルドに来た。
いつもの様に席に案内をする。
変わらない。
変えれない。
10日に1度の食事も
振られたことをウジウジ引きずっていたら進展がないから。
私が攻めないと、臆病な獲物を掴まえることは出来ない。
「分かりますか?」
ニコニコと頬杖をつきながらフェルさんを見つめる。
相変わらずローブで顔を隠しているけれど、かっこよさは隠せていない。
イメチェンしてから初めて会うフェルさん。
自分からフェルさんに似合ってる?と聞かなければ彼からの感想は聞くことはできない。
少しの期待と少しの不安を感じながらフェルさんを見つめれば、私の無言の圧に耐えきれなくなったのか、フェルさんはゆっくりと口を開いた。
「怒って···いないのか?」
第一声はそれだった。
怒る?
怒るとは、誰を?
フェルさんの···こと?
まさか、
ありえない、
ありえるわけがない。
怒るわけがない。
逆に─────
「フェルさんの方こそ怒ってないんですか。」
私は苦しくなる胸をぎゅっと抑えた。
これまで無理やりフェルさんを振り回してきた。
自分勝手な行動ばかり取ってきた。
それに───
「私の事、嫌い···ですか?」
聞きたかったこと。
聞けなかったこと。
拒絶されるのが怖くて怖くて聞けなかったこと。
あの日、振られた日、
無理とかきもいとか言われていたら私はどうなっていたんだろう。
『わからない。』
彼は確かにそう言った。
よかったと思った。
彼が私を心の底から拒絶はしていないということが分かったから。
フェルさんフェルさん。
私はあなたのことをこんなにも愛しているのに。
「俺が、君を?そんなわけが無い!」
フェルさんはいつもより大きな声で私の言葉を否定する。
嬉しい。
フェルさんが私の事で声を荒らげてくれたことが嬉しい。
フェルさんは私を嫌いではなかった。
「それに···。」
フェルさんが手を擦り合わせて口篭る。
「それに?」
「ーーーすごく、可愛いと思う。」
彼の言葉に私はぶわっと熱くなった。
ぎゅーんと赤面メーターが上がるのがわかる。
彼も照れているのかこちらを見ようとはしない。
なんなの今日。
私もう、幸せすぎて死んじゃいそう。
フェルさんと会ってから涙脆くなってきたのかもしれない。
目の奥が熱くなってきた。
鼻がツーンとする。
そんな私を見てフェルさんが慌てはじめた。
「す、すまない。俺みたいな醜い男に言われたら嫌だった「嫌なわけないです。」
きっぱりと彼の言葉を否定する。
嫌なわけがない。
私の心は彼の言葉でこれ程までに歓喜しているのだから。
「嬉しいんです。フェルさんに嫌われてなかったことも、可愛いって言ってくれたことも···」
椅子の背にもたれて、顔を手で覆いながら上をむく。
こうでもしなければ、涙や鼻水が滝のように流れ出てしまいそうだった。
それに、化粧まで崩れてしまう。
「フェルさんの言葉で、一喜一憂してしまうんです。」
ああ、また告白みたいなことを言ってしまった。
迷惑···だったかな。
また自分勝手なことしてしまった。
どう思ってくれたかな。
フェルさんと会う度に、フェルさんへの好きが増える度に、私の想いは強くなる。
「フェルさん好きです。」
ポロリと出てしまった言葉に、
フェルさんがまた、ほら。
困った顔をしたような気がした。
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