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出会い編
第10話
しおりを挟むフェルさんは色んなところに連れて行ってくれた。
あんまり面白くなかった演劇もフェルさんと見れば楽しいと思えたし、自然豊かな場所で食べたサンドウィッチ(もちろん私が作った)も美味しかった。
フェルさんも喜んでくれたのでまた次の時も作ろうと思う。
服屋さんにも行った。
別に行こうとは思っていなかったけれど、フェルさんが買ってくれると言うのでお言葉に甘えさせてもらった。
お金目当てでフェルさんを好きになった訳ではない。
誤解しないでほしい。
好きな人からのプレゼントに、私は歓喜しすぎて禿げそうだった。
フェルさんの選んでくれた可愛らしいピンク色のワンピース。
値段は···見たらすごい額だった。申し訳ない。
私の宝物の一つになると思う。
ふと、フェルさんが街の中を歩いたり店の中に出入りしていても、誰も嫌悪していないことに気づいた。
どうやら姿をあやふやにする魔法をかけているらしい。
フェルさんって魔法使えるんだ。すごい。
何故か、ギルドに出入りする時はこの魔法は使っていないそうだ。
でも、もしその魔法をフェルさんが使っていたら、私は恐らくフェルさんを見つけられなかった。
使っていなくて良かったと心底思う。
フェルさんの新しい一面を沢山知ることができたとても楽しい1日だった。
*****
今日のデートで私はもっとフェルさんが大好きになった。
いや、もう愛してる。
出会ってまだ3ヶ月しか経っていない。
会ってるのはその中の10日に1回だ。
だが、フェルさんに告白してしまおうか。そんな気持ちが芽生え始めてきてしまっていた。
手が早いと思われるかもしれない。
フェルさんにはビックリされるかもしれない。
けれど私は、早くフェルさんと恋仲になってラブラブしたいのだ。
自分の高まる欲求と戦いつつ、私はどうしようかと悩んだ。
*****
日が傾いてきた頃、私達は夕日が綺麗なフェルさんおすすめの場所に来ていた。
フェルさんの魔法でひとっ飛びしただけで道はわからないけど、そこから見る夕日はすごく綺麗だった。
そよそよと風が吹く。
ゆらゆらと私のワンピースが揺れる。
油断していたのか、緩やかな風によってフェルさんのフードがパサりと落ちた。
突如現れる、赤い夕日に照らされるフェルさんの横顔。
───────なんて綺麗なんだろう。
一枚絵のような彼のその姿に私はうっとりと魅入ってしまう。
フェルさんが慌ててフードを深く被った。
表情は見れないので読み取れないが、焦っているのがわかる。
でも、
そんなことどうだっていい。
だって───
「フェルさん···好き。」
私は彼に、人生で初めての愛の告白をした。
*****
皆が苦戦して何度も討伐失敗させてきた魔物を瞬殺する。
フェルディナント・スフォルツァ
それが俺の名前だ。
容姿は目も当てられないくらいに醜い。
高すぎる身長に骨ばった手。
どうやっても脂肪がつかない筋肉ばかりの体にシュッとした顔。
肌は綺麗だが、二重の切れ長の目に薄い唇。
堀は深く、鼻は高めですっと筋が通っている。
こんな見た目だから色素の薄い髪の毛は伸ばしっぱなしだ。
しかし、この醜さは髪の毛だけでは減らせない。
先祖返りだという。
小さい頃、母がごめんねえと俺にひたすら謝ってきていたことを思い出す。
俺の兄弟は皆、美男だ。
その中でたった1人、俺だけが醜く生まれた。
小さい頃からこの容姿のせいで皆に嫌悪され、女の子には泣かれた。
醜い
汚い
気持ち悪い
俺にはそんなレッテルが貼られていた。
嫌いだ。
この容姿も、
皆も、
ごめんねと謝り続ける母も、
全部
全部
俺はあっという間に兄弟や両親の身長を抜いた。
恐ろしいほど高身長になった。
これもまた、皆を怖がらせる一因となった。
俺の顔を見る度に顔を真っ青にする女も子供も全てが嫌になった。
しかし、恵まれた事に俺は潜在魔力が多かった。
見返してやる。
早く独り立ちしてやる。
その意思と練習によって、俺は大抵の魔法は使いこなせるようになった。
そして、今ではS級ランクの冒険者にまで上り詰めた。
S級は簡単になれるものでは無い。
しかし、S級になることで大きな依頼を受けることができる。
だからお金には困らなかった。
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