上 下
11 / 58
出会い編

第10話

しおりを挟む

 フェルさんは色んなところに連れて行ってくれた。

 あんまり面白くなかった演劇もフェルさんと見れば楽しいと思えたし、自然豊かな場所で食べたサンドウィッチ(もちろん私が作った)も美味しかった。

 フェルさんも喜んでくれたのでまた次の時も作ろうと思う。

 服屋さんにも行った。
 別に行こうとは思っていなかったけれど、フェルさんが買ってくれると言うのでお言葉に甘えさせてもらった。

 お金目当てでフェルさんを好きになった訳ではない。
 誤解しないでほしい。

 好きな人からのプレゼントに、私は歓喜しすぎて禿げそうだった。

 フェルさんの選んでくれた可愛らしいピンク色のワンピース。 
 値段は···見たらすごい額だった。申し訳ない。

 私の宝物の一つになると思う。

 ふと、フェルさんが街の中を歩いたり店の中に出入りしていても、誰も嫌悪していないことに気づいた。

 どうやら姿をあやふやにする魔法をかけているらしい。

 フェルさんって魔法使えるんだ。すごい。

 何故か、ギルドに出入りする時はこの魔法は使っていないそうだ。

 でも、もしその魔法をフェルさんが使っていたら、私は恐らくフェルさんを見つけられなかった。
 使っていなくて良かったと心底思う。

 フェルさんの新しい一面を沢山知ることができたとても楽しい1日だった。


 *****


 今日のデートで私はもっとフェルさんが大好きになった。

 いや、もう愛してる。

 出会ってまだ3ヶ月しか経っていない。
 会ってるのはその中の10日に1回だ。

 だが、フェルさんに告白してしまおうか。そんな気持ちが芽生え始めてきてしまっていた。

 手が早いと思われるかもしれない。
 フェルさんにはビックリされるかもしれない。

 けれど私は、早くフェルさんと恋仲になってラブラブしたいのだ。

 自分の高まる欲求と戦いつつ、私はどうしようかと悩んだ。

 *****

 日が傾いてきた頃、私達は夕日が綺麗なフェルさんおすすめの場所に来ていた。

 フェルさんの魔法でひとっ飛びしただけで道はわからないけど、そこから見る夕日はすごく綺麗だった。

 そよそよと風が吹く。

 ゆらゆらと私のワンピースが揺れる。

 油断していたのか、緩やかな風によってフェルさんのフードがパサりと落ちた。

 突如現れる、赤い夕日に照らされるフェルさんの横顔。

 ───────なんて綺麗なんだろう。

 一枚絵のような彼のその姿に私はうっとりと魅入ってしまう。

 フェルさんが慌ててフードを深く被った。
 表情は見れないので読み取れないが、焦っているのがわかる。

 でも、
 そんなことどうだっていい。
 だって───

 「フェルさん···好き。」

 私は彼に、人生で初めての愛の告白をした。


 *****


 皆が苦戦して何度も討伐失敗させてきた魔物を瞬殺する。

 フェルディナント・スフォルツァ

 それが俺の名前だ。

 容姿は目も当てられないくらいに醜い。

 高すぎる身長に骨ばった手。
 どうやっても脂肪がつかない筋肉ばかりの体にシュッとした顔。
 肌は綺麗だが、二重の切れ長の目に薄い唇。
 堀は深く、鼻は高めですっと筋が通っている。

 こんな見た目だから色素の薄い髪の毛は伸ばしっぱなしだ。
 しかし、この醜さは髪の毛だけでは減らせない。

 先祖返りだという。

 小さい頃、母がごめんねえと俺にひたすら謝ってきていたことを思い出す。

 俺の兄弟は皆、美男だ。
 その中でたった1人、俺だけが醜く生まれた。

 小さい頃からこの容姿のせいで皆に嫌悪され、女の子には泣かれた。

 醜い

 汚い

 気持ち悪い

 俺にはそんなレッテルが貼られていた。

 嫌いだ。

 この容姿も、

 皆も、

 ごめんねと謝り続ける母も、

 全部

 全部

 俺はあっという間に兄弟や両親の身長を抜いた。

 恐ろしいほど高身長になった。

 これもまた、皆を怖がらせる一因となった。

 俺の顔を見る度に顔を真っ青にする女も子供も全てが嫌になった。

 しかし、恵まれた事に俺は潜在魔力が多かった。

 見返してやる。
 早く独り立ちしてやる。

 その意思と練習によって、俺は大抵の魔法は使いこなせるようになった。

 そして、今ではS級ランクの冒険者にまで上り詰めた。

 S級は簡単になれるものでは無い。
 しかし、S級になることで大きな依頼を受けることができる。

 だからお金には困らなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不憫な貴方を幸せにします

紅子
恋愛
絶世の美女と男からチヤホヤされるけど、全然嬉しくない。だって、私の好みは正反対なんだもん!ああ、前世なんて思い出さなければよかった。美醜逆転したこの世界で私のタイプは超醜男。競争率0のはずなのに、周りはみんな違う意味で敵ばっかり。もう!私にかまわないで!!! 毎日00:00に更新します。 完結済み R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮の片隅で、醜い王子と引きこもりライフ始めました(私にとってはイケメン)。

花野はる
恋愛
平凡で地味な暮らしをしている介護福祉士の鈴木美紅(20歳)は休日外出先で西洋風異世界へ転移した。 フィッティングルームから転移してしまったため、裸足だった美紅は、街中で親切そうなおばあさんに助けられる。しかしおばあさんの家でおじいさんに襲われそうになり、おばあさんに騙され王宮に売られてしまった。 王宮では乱暴な感じの宰相とゲスな王様にドン引き。 王妃様も優しそうなことを言っているが信用できない。 そんな中、奴隷同様な扱いで、誰もやりたがらない醜い第1王子の世話係をさせられる羽目に。 そして王宮の離れに連れて来られた。 そこにはコテージのような可愛らしい建物と専用の庭があり、美しい王子様がいた。 私はその専用スペースから出てはいけないと言われたが、元々仕事以外は引きこもりだったので、ゲスな人たちばかりの外よりここが断然良い! そうして醜い王子と異世界からきた乙女の楽しい引きこもりライフが始まった。 ふたりのタイプが違う引きこもりが、一緒に暮らして傷を癒し、外に出て行く話にするつもりです。

何を言われようとこの方々と結婚致します!

おいも
恋愛
私は、ヴォルク帝国のハッシュベルト侯爵家の娘、フィオーレ・ハッシュベルトです。 ハッシュベルト侯爵家はヴォルク帝国でも大きな権力を持っていて、その現当主であるお父様にはとても可愛がられています。 そんな私にはある秘密があります。 それは、他人がかっこいいと言う男性がとても不細工に見え、醜いと言われる男性がとてもかっこよく見えるということです。 まあ、それもそのはず、私には日本という国で暮らしていた前世の記憶を持っています。 前世の美的感覚は、男性に限定して、現世とはまるで逆! もちろん、私には前世での美的感覚が受け継がれました……。 そんな私は、特に問題もなく16年生きてきたのですが、ある問題が発生しました。 16歳の誕生日会で、おばあさまから、「そろそろ結婚相手を見つけなさい。エアリアル様なんてどう?今度、お茶会を開催するときエアリアル様をお呼びするから、あなたも参加しなさい。」 え?おばあさま?エアリアル様ってこの帝国の第二王子ですよね。 そして、帝国一美しいと言われている男性ですよね? ……うん!お断りします! でもこのまんまじゃ、エアリアル様と結婚させられてしまいそうだし……よし! 自分で結婚相手を見つけることにしましょう!

私、この人タイプです!!

key
恋愛
美醜逆転物です。 狼獣人ラナン×自分の容姿に自信のない子キィラ 完結しました。感想やリクエスト、誤字脱字の指摘お待ちしています。 ここのページまでたどり着いてくださりありがとうございます。読んで頂けたら嬉しいです!

穏やかな日々の中で。

らむ音
恋愛
異世界転移した先で愛を見つけていく話。

娼館から出てきた男に一目惚れしたので、一晩だけ娼婦になる。

sorato
恋愛
ある日、ミーナは鮮烈な一目惚れを経験した。 娼館から出てきたその男に抱いてもらうため、ミーナは娼館に駆け込み1日だけ働けないか娼館の店主へと交渉する。ミーナがその男に娼婦としてつくことになったのは、「仮面デー」と呼ばれるお互い素顔を隠して過ごす特殊な日で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 主人公のミーナは異世界転生していますが、美醜観だけ影響する程度でありそれ以外の大きな転生要素はありません。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 見なくても全く影響はありませんが、「気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。」と同じ世界観のお話です。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

処理中です...