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出会い編
第9話
しおりを挟む彼は10日に1回程度でギルドに来た。
その度に、私は彼と食事をした。
おばちゃんは私の好きな人が分かっているので、彼が来た時は休憩行ってきていいよと言ってくれる。ありがたい。
彼との食事は会話はあまりないけど楽しい。
最初は無言だった彼も最近では私の話に相槌を打ってくれるようになった。
嬉しい。
彼との関係が少しだけ近づいて来ていることが嬉しい。
私は今日も彼の元へ行く。
「フェルさん!」
周りから見れば、醜男に駆け寄る変な女だと認識されているのだろう。
でも、それは私に関係ない。
彼がいい。
彼しか見えない。
今日も、彼と食事をする。
それが私に仕事をもっと頑張らせてくれる糧にもなる。
恋の力は本当にすごいと思う。
彼の名前はフェルディナントと言う。
私はその名を教えて貰った後、すぐにフェルさんと愛称で呼ばせてもらった。もちろん強制なのだが。
彼は私が愛称で呼んでも何も言わなかったのでたぶん許してくれたのだと思う。
そう信じたい。
今更拒絶とかされたら鬱になってしまうかもしれない。
私は今日もフェルさんを落とそうと奮闘する。
*****
人は幸せを知ってしまうともっともっととだんだん欲張りになる。
私も、その1人だった。
フェルさんと一緒にギルドだけでなくもっと他の場所に行ってみたい。
最近そう感じるようになってきたのだ。
「フェルさん。私とデートしませんか?」
10日に1度くらいのフェルさんとの食事中、私は開口一番そう言った。
行動は早い方がいい。
「ーーッゲホッゴホッ」
私の言葉にフェルさんはむせたようだ。
苦しそうにしているフェルさんに、すぐにお水を差し出す。
動揺してるフェルさんも可愛いなと思う。
私はニコニコとしながらフェルさんの答えを待った。
嫌と断られても、もちろん強制的に連れ回すだけなのだが。
「俺は、その···」
モゴモゴと何かを言っているフェルさん。
小さい声なので上手く聞き取れない。
自分のいいように解釈することにしよう。
そう決めた私は自分の両手を握りながら顔の前に待っていき、笑顔で言った。
「わあ。嬉しいなあ。どこに行きます?私あまりこの街について知らないので案内して貰えたら嬉しいんですけど···。」
フェルさんのモゴモゴを私は肯定と受け止めた。
だって嫌なら嫌だというでしょう?
ローブにその顔が隠れていてもフェルさんがすごく動揺しているのがわかる。
いきなりデートをすることが決まったのだから無理もない。
私は彼とのデートに心踊らせながら、また一方的に彼に話し掛け続けた。
*****
「フェルさんここです!」
私は、集合時間ピッタリに来たフェルさんに手を振る。
楽しみすぎて集合の20分前にここにいた自分に内心苦笑しながらフェルさんを見る。
ローブで顔を隠しているのはいつもの事だ。
でも、相変わらずかっこいい。
フェルさんとデートができる。
そのことにもテンションMAX。
今日の私の格好を説明しようと思う。
まず、真っ白の可愛らしいワンピース。
それと、黒のリボンがついた歩きやすい靴を履いている。
髪の毛はお団子にして薄いピンクのリボンで結んだ。
このコーディネートの全ては、食堂で働いて稼いだ私の給金から出したものだ。
我ながら可愛らしいと思う。
18歳には見えないが。
フェルさんの横に立って歩く。
フェルさんは最初、私が隣に立つことに少し抵抗を感じていたようだったがそんなこと無視だ無視。
私の頑固さを理解したのか、フェルさんはすぐに何も言わなくなった。
ごめんねフェルさん。
少しも反省してないが一応心の中で謝っておこうと思う。
*****
隣に並べばわかる。
フェルさんは本当に背が高い。
背が高すぎることはこの世界ではあまり良くないらしいが、私は全然アリだ。
むしろ高い方が好き。
チビデブとか好きじゃないし。
まあ、フェルさんはデブになっても好きだけど。
がっしりとした体を横目でちらりと見る。
はあ。抱かれたい。
謎に欲求不満にもなってきてるようだ。
今は一緒にいられるだけで十分でしょうと私は自分を叱責した。
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