海とともに〜海賊に拾われましたが優しいクマ共に頑張ります〜

猿山 龍

文字の大きさ
上 下
20 / 24
1.出会い

海賊船がやってくる

しおりを挟む
そんな平穏な日々がしばらく続いたある日。

カンカンカン!

「前方に敵の海賊船!!こちらに向かっているもののよう!!」

見張り台にいた檣楼員(しょうろういん 見張り番のこと)が大きな声でみんなに言う。

「このまま進む!迎え撃て!!」

ヴィルターの大きな声が聞こえる。
自分に気づいたヴィルターが

「部屋に隠れていろ。俺が呼びにくるまで何があっても出てくるな」

真剣な顔で言われる。

「わかりました」

自分は戦える。
けどまだここの仲間になる決心はついていない。
なら邪魔にならないように隠れるが正しい。
そう思い自分の部屋に行って隠れた。

上から銃の発砲音や叫び声、殴り合いの音や風や何かが燃えるような音も聞こえる。
身体強化を強めると五感が活性化され微かに血の匂いがした。

しばらくすると静かになった。
勝ったのだろうか…
呼びにくるまで部屋から出てはいけないと言われ何もできない。
すごいもどかしく感じる。

そうしているとこちらに向かって歩いてくる足音が聞こえた。
敵かと思い先程ヴィルターに貰った短剣を構える。
部屋の前で足音が止まり緊張感に包まれる。

コンコン

「日菜、終わった。出てきて大丈夫だ」

ヴィルターの声だ。
部屋を出ると少しだけ返り血のついたヴィルターが立っていた。

「怪我はありませんか?」

「俺は大丈夫だ。クルーの中には怪我をしたやつもあるが死人はいない」

「ならよかったです」

自然とそうでた。
この人達が死んでないとなると敵が死んだことを意味するはずだ。

散々妖を殺してきた。
けどまだ人は殺したことがない。

すぐそこで人が死んでいるのにヴィルター達が死ななくて安堵している自分がいる。

今まで関わりがなかったから全てを最小限にと思っていただけで自分は身内贔屓をするタイプと気づき驚くと同時にある1つの決意を固める。

「手当が必要なら自分お手伝いできます」

ヴァルターは少し考え

「なら少し見てやってくれ。
多くはないがそれなりにいる。
グレイと弟子の2人だけだと少し時間がかかる。
回復魔法もあるがあれも限りがある。頼む」

と言われ、頼られたことに嬉しく感じた。

甲板に向かうドアを開けようとするとヴィルターに手を掴まれる。

「その先は戦場だった場所だ」

一瞬意図がわからなかったが直ぐに理解した。
この人は戦場の悲惨な景色をみる覚悟はあるのかと言っているのだ。

「大丈夫です。今まで見てきましたから」

そういうと手を離される。
そのままドアを開けると10人ほどの怪我人とたくさんの死体、甲板は血に染まっていた。

怪我のないクルーは掃除や死体処理などをやっていた。
その真ん中にはオスカーが指示を飛ばしている。

ここにやってきた自分を見て周りが何つれてきている!と批難をしているがヴィルターが

「日菜は俺達の仲間に誘った。
返事は貰ってないが守るにしても海賊というものを理解せずに仲間にする訳にはいかない」

とハッキリ言う。
騒いでいた周りが一瞬で静まる。

「前にいた場所でも血まみれの世界を見てきました。
これぐらいは大丈夫です」

そういうとクルーは各々の仕事へと帰って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...