上 下
13 / 13

熱と弱さ

しおりを挟む
目を覚めると体が熱い。

熱があるのか…
そりゃ長年の栄養失調、睡眠不足、過労働、そして今三条家がいない状況で気が抜けた所為なのか熱が出るのは当然のように感じる。

移るものではないだろうがあまり他の人と関わらないほうがいいな。

取り敢えず起きて熱あるから部屋に困る主旨を言った方がいいと判断して立ちあがろうとするとドアがノックされた。

「日菜。起きてるか?」

ヴィルターの声だ。
いつもは部屋に来ないのにどうしたんだろう。

ベットが下りて、ふらふらしながらドアに近づく。

「はい。起きてます。
申し訳ないのですが熱が出てしまい今日は部屋で大人しくしたいのですがいいでしょうか?」

ガタ
何かにぶつかる音がする。

「大丈夫か?熱はどのくらいある?いるものはあるか?」

声が心配ですと言わんばかりの声でなぜが少し泣きたくなるような感じがする。
熱のせいで弱っているのかもしれない。

「大丈夫です。熱はそこまで高くないのですぐ治ります」

嘘をついた。熱はそこまでと言ったがこれは38.5はある。
けど1人で寝ていればバレないだろう。
それに弱ったところを見せれば殴られる。
あれ?ヴィルター達は殴らない。なんかふわふわする。
なんか目の前が床?目が開けられないや…




目を覚ますと自分の部屋のベットの上で寝かされていた。

「日菜!」

怠くて目だけそちらに向けるとヴィルターが泣きそうな顔でいた。いや、泣きそうだけどコワモテの所為か眉間に皺を寄せていて怖い顔をしているが目が泣きそうだ。この人は顔というより目によく感情が出る。
ぼーとそんなことを思ったいると

「日菜、水はいるか?」

「じゃあ棚の中にある水をお願いします」

ヴィルターは頷き、棚から水を取ってくれた。
それをゆっくり飲む。

「ゆっくり休んで早く良くなれ」

そう言って頭を撫でてくれる。
心地良くなりそのまま寝入ってしまった。



次に目を覚ますと熱が下がっていることがわかった。
隣を見るとヴィルターが椅子に座って寝ている。

ガチャ

ドアの方を見るとザックが静かに入ってきた。

「あっ、起こしてしまったっすか?
すまないっす。」

「いえ、それより前に起きていました。
熱も下がったようですし、また仕事をさせてもらいたいのですが…」

「何言ってるんっすか!日菜ちゃんは4日寝込んでいたんすよ。」

そんなに寝ていたのか。
正直びっくりした。向こうにいた時は熱なんて引いたら隠さないと面白がって酷いことをされる。
4日も何もしないなんて許されない。

「頭が心配してずっと側でタオルとかを取り合えていたんすよ。そのせいか今は寝てますけど」

「そうなんですか…
ご迷惑をかけて申し訳ありません」

「こういう時はお互い様だから謝ることはないっすよ。それじゃあ水を変えにきただけなので失礼するっす。あとで船医のグレイが様子を見にくると思うので安静にしてるっす」

そういうとザックは水を変えて静かに出ていった。

「起きてますよね。ヴィルター」

椅子に座って寝ていたヴィルターに言うと肩を跳ねて目を開けた。

「気づいていたか…」

「ご迷惑を「前に言ったことを覚えてるか?」

なんのことかわからず悩む。

「こっちがお前のためにやったことだから止めたり、謝るよりありがとうが欲しい」

服屋のことだとわかった。服屋で買いすぎるのを止めたら言われたことだ。

「ありがとうございます」

ヴィルターが頷いていると船医がやってきた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

お幸せに、婚約者様。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

処理中です...