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23かぼ!アレ
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唇が触れた瞬間、どこから現れたのか輝く霧がボン!と、かぼパンを包み込んだ。
「えええええええーっ!」
全員が思い切り叫ぶ。
この霧は間違いなくもう何度も目にしている魔力だろう。
でも私に魔力は全くないのにどう言う事?
まさかの展開過ぎて、目玉が落ちそうなぐらい目をかっ開き見つめていると、ゆっくりと霧が晴れていく。
「ハアッ」
ぼんやり見えてきた影に思わず息を飲んだ。
影がいつものミニサイズではない。
本当に大人に戻っているかもしれない。ラン達と目を合わせ、ドキドキで見つめる。
大人のかぼパンは一体どんな姿なんだろう。大人に戻るのは寂しいけど、見てみたい気もする。
絶対にイケメンなのは間違いない。心臓がトントンと跳ねる。
しかしそんな期待も虚しく、霧が晴れた先にいたのは足だけが長くなったかぼパンだった。
「うわー残念!」
期待が大きかった分、思わず口から出た言葉に慌てて口を押さえる。
異変に気付いたかぼパンの表情はクシャっと歪み、小さなおて手を見つめ涙顔。
「僕は一体どうなっているんだ!」
そうだよね、目線は高くなっているのに手が紅葉のまんまだもん。気付くよねー。
「陛下、こちらに鏡が」
リュストがすぐに全身鏡を指さすと、かぼパンは絶叫した。
「ぎゃぁぁぁあああああ!なんなんだこれはっ?!」
これは叫んでもおかしくない。
大人の下半身に子供の上半身が乗っているかなりアレな見た目。仮装大賞みたいな。
「あー、見た目はアレだけど歩くの楽になるんじゃない?」
とりあえず慰めるように言うと、ランとリュストも頷く。
「そうですね、見た目はアレですが大人に戻れて良かったです。下半身だけですが」
「あ、下半身は大人って事はアレも……」
リュストが何を言うか察した私は、軽いアイアンクローを繰り出し下ネタ禁止令を発動。
そんなバタバタな私達をよそに、ショックが大きすぎるのか、かぼパンはガクッと床に膝を突き項垂れた。
うーん、気持ちは分かるけど絵面がシュール過ぎてなんとも言えないこの気持ち。
「まぁ、元気出して。見た目はアレだけど一歩前進じゃない!」
「そうですね。見た目はアレですが……」
「さっきから人の事をアレって言うなぁぁつ!こんな見た目、これからどうすれば良いんだ……」
小さな手でしくしくしながら目を押さえる。
上半身だけ見たら可愛いいつものかぼパンだ。上半身だけね……
でも上唇が少し当たっただけで今まで何をしても変わらなかったのが下半身だけでも大人になるって凄くない?
「少し当たっただけでこの効き目って、本当にキスで呪いが解けるんじゃない?」
「はい、かなりの効き目ですしね。樽が届く前に大人に戻れそうですね」
ランの言葉にビクッとしてしまった。樽の事すっかり忘れてた。
「あー、そうそう!樽!樽があったねーあはは~……」
誤魔化すように笑ってみたが、かぼパンの苦々しい顔が怖い。
「その顔、樽の事を忘れていただろう」
「やだなぁ、忘れるわけないじゃない、私、こう見えても聖女ですから……」
「はあ、聖女としての自覚はあるのか?」
かぼパンはブチブチ文句を言い始めたけど、私なりに努力はしている。飴も液体も鏡も試したし。残るはキス!
「樽の事はちょっと忘れてたけど、頑張ってるつもり!それに足が大人になったのだって聖女の唇が触れたからじゃない?もう一回キスしたら今度は上半身が大人になるかも!」
軽いキスくらい、この上半身だけ超絶可愛いかぼパンになら出来るっ!
「だっ、だがしかし、名ばかりとキスなど……」
頬を桜色に染め、チラチラ見ながら言ってくる。可愛い奴だ。
「照れんなよ?」
あまりの可愛さについ、いつもの調子でからかうとかぼパンは頬をぷくぅと膨らませた。
「この、名ばかりっ!僕が照れているわけがないだろう!他の人とキスをしてもきっと大人になるだろう。よって僕は名ばかりとキスなんかしないぞ!」
ギャーギャー叫びだした様子を見ていたランが呆れたように横に首を振り笑う。
「陛下、そんなに奈那様とキスするのが嫌なら私がキスしてみますね」
「いや……しかし……うぅ、大人に戻れるならば……だがっ」
葛藤しているご様子だが、ランはお構い無しにかぼパンの右の頬に顔を近づける。
ラン、少し唇を突き出してもイケメンなだけあってカッコいい。そう思った時だった。
「やっぱり無理だぁぁぁあ!」
叫んだかぼパンは思い切り顔を左に向けた。
だが、そこには冗談で唇をタコのように突き出していたリュストがいたのである。
完全に伏兵だ。リュストの唇はしっかりと振り向いたかぼパンの唇と重なった。
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!」
空気が割れそうな叫び声と共に再び霧に包まれたかぼパン。
皆でどうなるのかと目を丸くして待ち構えていると、キラキラ輝く霧が晴れた先にいたのは口元を一生懸命拭っている元の小さいサイズのかぼパンだった。
「えー!戻った!」
ゴシゴシしてるところも可愛すぎる!
必死なかぼパンを抱き上げてこのサイズが1番だとホッとする。
スンスンと可愛い香りを摂取し落ち着いていると、ランが顎に手を置いて真剣な表情を見せた。
「やはり奈那様のキスじゃないとダメなようですね」
まだ聖女の力を得てないのにキスで大人に戻るって事は……
「かぼパン、もしかして私の事好きなの?」
「はっ!いつの間に抱っこを……」
私の問いかけと言葉が被ったかぼパンは固まり、真夏のビーチに干されたみたいに全身が真っ赤に染まった。
あれ?これマジっぽい?
ツンツンと頬をつつくとワタワタ慌て始める。
「そんなわけないっ……」
否定しようとした時、ランがいつも見せないような厳しい瞳で見つめ首を横に振った。
「陛下!本当に大人に戻りたいなら本音を話して下さい」
ランの迫力に言葉を飲み込むように口を閉ざしたかぼパン。
しんとした室内に沈黙が流れる。
え、これまさかかぼパンが私の事を?
皆がかぼパンに注目していると、俯き口を開いた。
「そうだ……僕は……本当は名ばかりの事が……気になって気になって仕方ないんだぁぁぁ!」
ん?気になる?好きになりそうって事?
中途半端でよく分からないけど、真っ赤な顔が可愛いし、嬉しくてキスしたい気分。
さっきよりもちゃんとしたキスを頬にして、もし大人に戻ったら——私もかぼパンに恋をするかも。
なんて思いながらしたのだが。
再び足だけ大人になったかぼパンはしくしくと泣き、元のミニサイズに戻して貰ったのだった。
「えええええええーっ!」
全員が思い切り叫ぶ。
この霧は間違いなくもう何度も目にしている魔力だろう。
でも私に魔力は全くないのにどう言う事?
まさかの展開過ぎて、目玉が落ちそうなぐらい目をかっ開き見つめていると、ゆっくりと霧が晴れていく。
「ハアッ」
ぼんやり見えてきた影に思わず息を飲んだ。
影がいつものミニサイズではない。
本当に大人に戻っているかもしれない。ラン達と目を合わせ、ドキドキで見つめる。
大人のかぼパンは一体どんな姿なんだろう。大人に戻るのは寂しいけど、見てみたい気もする。
絶対にイケメンなのは間違いない。心臓がトントンと跳ねる。
しかしそんな期待も虚しく、霧が晴れた先にいたのは足だけが長くなったかぼパンだった。
「うわー残念!」
期待が大きかった分、思わず口から出た言葉に慌てて口を押さえる。
異変に気付いたかぼパンの表情はクシャっと歪み、小さなおて手を見つめ涙顔。
「僕は一体どうなっているんだ!」
そうだよね、目線は高くなっているのに手が紅葉のまんまだもん。気付くよねー。
「陛下、こちらに鏡が」
リュストがすぐに全身鏡を指さすと、かぼパンは絶叫した。
「ぎゃぁぁぁあああああ!なんなんだこれはっ?!」
これは叫んでもおかしくない。
大人の下半身に子供の上半身が乗っているかなりアレな見た目。仮装大賞みたいな。
「あー、見た目はアレだけど歩くの楽になるんじゃない?」
とりあえず慰めるように言うと、ランとリュストも頷く。
「そうですね、見た目はアレですが大人に戻れて良かったです。下半身だけですが」
「あ、下半身は大人って事はアレも……」
リュストが何を言うか察した私は、軽いアイアンクローを繰り出し下ネタ禁止令を発動。
そんなバタバタな私達をよそに、ショックが大きすぎるのか、かぼパンはガクッと床に膝を突き項垂れた。
うーん、気持ちは分かるけど絵面がシュール過ぎてなんとも言えないこの気持ち。
「まぁ、元気出して。見た目はアレだけど一歩前進じゃない!」
「そうですね。見た目はアレですが……」
「さっきから人の事をアレって言うなぁぁつ!こんな見た目、これからどうすれば良いんだ……」
小さな手でしくしくしながら目を押さえる。
上半身だけ見たら可愛いいつものかぼパンだ。上半身だけね……
でも上唇が少し当たっただけで今まで何をしても変わらなかったのが下半身だけでも大人になるって凄くない?
「少し当たっただけでこの効き目って、本当にキスで呪いが解けるんじゃない?」
「はい、かなりの効き目ですしね。樽が届く前に大人に戻れそうですね」
ランの言葉にビクッとしてしまった。樽の事すっかり忘れてた。
「あー、そうそう!樽!樽があったねーあはは~……」
誤魔化すように笑ってみたが、かぼパンの苦々しい顔が怖い。
「その顔、樽の事を忘れていただろう」
「やだなぁ、忘れるわけないじゃない、私、こう見えても聖女ですから……」
「はあ、聖女としての自覚はあるのか?」
かぼパンはブチブチ文句を言い始めたけど、私なりに努力はしている。飴も液体も鏡も試したし。残るはキス!
「樽の事はちょっと忘れてたけど、頑張ってるつもり!それに足が大人になったのだって聖女の唇が触れたからじゃない?もう一回キスしたら今度は上半身が大人になるかも!」
軽いキスくらい、この上半身だけ超絶可愛いかぼパンになら出来るっ!
「だっ、だがしかし、名ばかりとキスなど……」
頬を桜色に染め、チラチラ見ながら言ってくる。可愛い奴だ。
「照れんなよ?」
あまりの可愛さについ、いつもの調子でからかうとかぼパンは頬をぷくぅと膨らませた。
「この、名ばかりっ!僕が照れているわけがないだろう!他の人とキスをしてもきっと大人になるだろう。よって僕は名ばかりとキスなんかしないぞ!」
ギャーギャー叫びだした様子を見ていたランが呆れたように横に首を振り笑う。
「陛下、そんなに奈那様とキスするのが嫌なら私がキスしてみますね」
「いや……しかし……うぅ、大人に戻れるならば……だがっ」
葛藤しているご様子だが、ランはお構い無しにかぼパンの右の頬に顔を近づける。
ラン、少し唇を突き出してもイケメンなだけあってカッコいい。そう思った時だった。
「やっぱり無理だぁぁぁあ!」
叫んだかぼパンは思い切り顔を左に向けた。
だが、そこには冗談で唇をタコのように突き出していたリュストがいたのである。
完全に伏兵だ。リュストの唇はしっかりと振り向いたかぼパンの唇と重なった。
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!」
空気が割れそうな叫び声と共に再び霧に包まれたかぼパン。
皆でどうなるのかと目を丸くして待ち構えていると、キラキラ輝く霧が晴れた先にいたのは口元を一生懸命拭っている元の小さいサイズのかぼパンだった。
「えー!戻った!」
ゴシゴシしてるところも可愛すぎる!
必死なかぼパンを抱き上げてこのサイズが1番だとホッとする。
スンスンと可愛い香りを摂取し落ち着いていると、ランが顎に手を置いて真剣な表情を見せた。
「やはり奈那様のキスじゃないとダメなようですね」
まだ聖女の力を得てないのにキスで大人に戻るって事は……
「かぼパン、もしかして私の事好きなの?」
「はっ!いつの間に抱っこを……」
私の問いかけと言葉が被ったかぼパンは固まり、真夏のビーチに干されたみたいに全身が真っ赤に染まった。
あれ?これマジっぽい?
ツンツンと頬をつつくとワタワタ慌て始める。
「そんなわけないっ……」
否定しようとした時、ランがいつも見せないような厳しい瞳で見つめ首を横に振った。
「陛下!本当に大人に戻りたいなら本音を話して下さい」
ランの迫力に言葉を飲み込むように口を閉ざしたかぼパン。
しんとした室内に沈黙が流れる。
え、これまさかかぼパンが私の事を?
皆がかぼパンに注目していると、俯き口を開いた。
「そうだ……僕は……本当は名ばかりの事が……気になって気になって仕方ないんだぁぁぁ!」
ん?気になる?好きになりそうって事?
中途半端でよく分からないけど、真っ赤な顔が可愛いし、嬉しくてキスしたい気分。
さっきよりもちゃんとしたキスを頬にして、もし大人に戻ったら——私もかぼパンに恋をするかも。
なんて思いながらしたのだが。
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