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21かぼ!伝説の魔法

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 私とリュスト、かぼパンとラン、そしてマシューの5人はテーブルに置かれた魔法のステッキを囲んでいる。

「これが先日、魔法が使えないリュスト様が魔法が使えてしまったと言うステッキ……」

 マシューがもの珍しそうにステッキを持ち上げてじっくりと観察する。

 魔法を使えないリュストがかなり高度な魔法――大人になる魔法を使えたという事は、元々魔法が使えるマシューが使えば魔法がより強力になり、もしかしたらかぼパンを元にもどせるのではないか?
 と言う説が出て、試してみるべく日を改めて応接室に集まったのだ。

 ちなみにリュストもかぼパンの可愛さに目覚め、愛で会に加入し毎日お城にやって来るようになった。

「ではやってみますか……」

 緊張の漂う室内で皆が息を飲む。
 マシューがステッキを振り魔法を放つと、かぼパンと共に隣に座っていたランも魔力の霧に包まれる。

「あー!またランまで!」

「皆おじさんになったランを見たんだろう?僕も見てみたいと思ってね」

「わざとかーい!」

 イタズラっぽく笑ったマシュー。
 ぼやぼやした霧が晴れ、そこいたのはやっぱり子供のままのかぼパンと、シワシワのヨボヨボのおじいちゃんになったランだった。

 一目見て分かる。これはダメだ。

「ねぇ、下手したら死んでたんじゃない?」

「それは大丈夫!変わるのは見た目だけだから!でも想像より行っちやったな!200歳くらいは行ってそうだな!あはははは!」

「早く戻りょしておくりぇ~」

 ランがシワシワの自分の手を見てゴニョゴニョと言った。
 歯がないらしい。200歳はキツイ。

「でもせっかくヨボ爺だから、鏡見てからにしなよ」

「僕が鏡持ってくるよ」

「ヨボ爺?」

「ランよ、宰相の歳を越えたな……」

 鏡を見たランが笑いながら怒りだしたけど、これは怖い。
 マシューも怖かったらしい。ランをすぐに元に戻してふりだしに戻る。

「結局、かぼパンは大人に戻らなかったね」

「そうだな……」

 シュンと落ち込んだかぼパンを皆で慰める。
 そろそろ戻してあげたいとは思うけど、結婚は拒否してるし他に何かいい方法がないだろうか?

 考えているとマシューがステッキを見つめて唸った。

「んー、これだけ強力なら、もしかしたら僕でもあの伝説の魔法が使えるかも知れない」

「伝説の魔法って?」

「それはね……変身魔法!」

「伝説の変身魔法っ!?」

 変身魔法は膨大な魔力が必要となるので使える人自体まれだが、もし使用する場合は何の目的で何に変身するのか国に届けないといけないくらいの扱いらしい。

「変身魔法掛けてみたいなぁ」

 マシューがかぼパンを見ながら言う。

「良いだろう。僕も伝説の変身魔法をこの目で見てみたい」

 目の前に届け先のかぼパンがいるの強いなぁ。
 私も変身見てみたい……あ!

「はい!大人に戻れないんだったらかぼパンを違う大人に変身させてみたらどう?」

「試してみる価値はありますね。陛下、私に変身してみては?歩くのも楽になりますよ」

 ランが言うとかぼパンは暫し悩み頷いた。

「別人になっても仕方がないが、大人になれるなら確かに生活が楽になる。変身してみるぞ」

 かぼパンの一声で使用決定。
 マシューが張り切って呪文を唱えてステッキを振った。
 もくもくと霧がかぼパンを包み込む。

 全員が息を飲み期待の目で見つめたが、霧が晴れた先にいたのは身長はそのままでランの姿になったかぼパンだった。

「ぎゃはははは!」

 全員の笑い声が重なり響く。

 かぼパンは小さな紅葉のような手を見つめ、ボーゼン。

「どうなっているんだ?変身出来なかったのか?」

 笑いすぎて返事が出来ない状況の中、リュストが全身鏡を指差した。

「陛下、鏡はこちらです!」

 全身鏡を見たかぼパンは口を開けて固まった。
 これはショックだろう。

 ランを無理矢理3頭身キャラにしたみたいな感じだもの。

「ブハァ!」

 たまらずまた吹き出すと、かぼパンは悲壮な顔で叫んだ。

「笑うなぁぁぁあ!今すぐ戻せぇえ!」

 マシューはすぐに戻そうと呪文を唱えてステッキを振ったが、ポンと霧が消えた。

「あはは、魔力切れみたいですね!さすが伝説の魔法です。まさか一回で空っぽになるとは~……」

 マシューが笑って誤魔化そうとするが、かぼパンは……嫌、かぼパンの身体に付いているランの顔は最高に機嫌が悪そう。

「何だと?!今すぐ回復薬を取って来いっ」

「はい、ただいまっ!」

 逃げるように出て行ったマシュー。
 癖なのか、ぷうっと頬を膨らませ、怒っているアピールをしているランの顔のかぼパン。

 可愛いんだけど笑っちゃいけない。
 でもっ……笑っちゃダメなんだけど耐えきれない。

「ブハァッ!」

 一度吹き出すともう笑いが止まらなかった。

「あはははははははははは!」

 私の笑いにつられたかのようにリュストとランも笑い出す。

 止まらない笑い。
 かぼパンの身体に付いているランの顔はたちまち眉を下げ目を潤ませた。

 その表情に罪悪感が一気に湧いて来る。

「笑ってごめんかぼパン。ランの顔なのに仕草や表情が可愛すぎて……」

 頬を膨らまずランなんて想像したことも無かったよ……
 慰めたつもりだったのだが、かぼパンは泣きそうな顔で私を見上げた。

「名ばかりの、名ばかりのっ……バカァ!」

 瞳いっぱいに涙を溜め、震える声で叫び、私に背を向け走り去るラン顔のかぼパン。

 どうしよう。可愛すぎてかぼパンがヒロインに見えてきた。
 やっぱり顔が違っても中身が可愛いかぼパンだっ!

 すぐにかぼパンを追いかける。いくら走って逃げようが子供の歩幅で逃げ切れるわけがないのです。

 私は予想通りすぐに追いつき、後ろからかぼパンを抱き上げる。

「かぼパン捕まえたっ」

「離せ名ばかり!どうせまた僕の事を笑うんだろっ!」

うなだれた後頭部から悲しみが伝わってくる。

「笑いすぎてごめんね」

「ううっ」

 抱っこして頭を撫でるとスンスンと鼻をすする音が聞こえてくる。

「ごめんね」

 あまりの落ち込みようにたまらずもう一度謝罪する。私まで切なくなってきて。

 スンスンと落ち込んでいるかぼパン。
このままじゃダメだ。なにか元気になる方法はないだろうか?

「……ねぇ、かぼパン。私達は笑っちゃったけどさ、逆に皆を笑わせてみたらどう?」

「笑わせる?」

「そうよ。人を笑顔にできるって凄い事だと思うの。せっかく変身したんだから皆をびっくりさせてみない?こんな事ってもうないだろうし、逆に楽しいと思うよ!」

 ダメ元で言った言葉だったが、しばらく黙っていたかぼパンはふいにコクリと頷いた。

 そして、ランがかぼパンを小脇に抱えて執務室に突撃。

「ラン様っ?え?陛下っ?あははははは!」

 驚いた皆が笑顔になる。

「今度はワシに変身してくれ~」

孫を見る目の宰相がデレ顔で言うと、かぼパンはフンっとそっぽを向いた。

「嫌だっ!もう2度と変身魔法は使わないぞっ」

 確かに。かぼパンサイズで宰相の顔だったら可愛いとか言ってられない。

執務室は驚きと笑い声で溢れた——


「今日は楽しかったぞ」

 元に戻ったかぼパンが屈託のない笑顔を見せた。

 ああ、やっぱり普通のかぼパンが1番可愛い!この笑顔構え安心すると言うか。

 かぼパンが泣いていると私まで本気で悲しくなって元気にしてあげたくなる。毎日かぼパンの笑顔が見たい。

 ああ、私って本当かぼパンの事大好きだなぁー!



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