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10かぼ!ランとデート!

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「この世界に来てもうずいぶん経った気がするわ」

「まだ3日だ」

 かぼパンの落ち着いたツッコミが聞こえる。
 そうなのだ。まだ3日なんだけどもう3年は居るような気分。

「まだ3日なんて思えないほど居心地がいいのはかぼパンとランがいい人だからだよね!」

「本当に……3日でコレとは……恐ろしいやつだな」

 おはようスープを一口食べて顔を歪ませたかぼパンとは違い、ランはフフフっと笑った。

「この調子じゃ一年後には誰かと結婚しているかもしれませんね」

「あはは!あるかも~」

 冗談ぽく言ったランの言葉に私も声を上げて笑う。だが、かぼパンは違った。

「ゲホッ、だっ、誰が名ばかりと結婚すると?」

 スープをこぼし瞳を大きく開けてかなり驚愕したご様子。可愛いけど失礼過ぎない?

「ランとかマシューとか?今から出会う人と結婚するかもしれないし」

 さすがに私も口を尖らせ言うと、かぼパンは何度も首を横に振った。

「ない、ないだろう!名ばかりだぞ?」

 かぼパン……一体私を何だと思ってるの?

「あるかもしれないじゃない!ね、ラン」

「はい、ないとは言い切れませんね」

 ランの言葉にドヤ顔を見せる私。かぼパンはこれでもかと目をかっ開き、スプーンを落とした。

「やらん!名ばかりにランはやらんぞっ」

 正直、かっ開いた目がすっごく可愛い。わちゃわちゃしたい!
 でも、今は我慢。昨日のお嬢様にはランを勧めていたくせに。
 これは私のプライドがっ……

「昨日リーリンお嬢様にランをお勧めしてたのに私にはダメだと?」

「そう言えばそうでしたね。私はリーリン嬢より聖女様が良いです」

 そんなランの言葉にかぼパンはプルプルと震えた。

「ラン!正気か?名ばかりに脅されているのか?」

 かぼパン、本気で心配そうな顔で聞いてるけど、いつ私がランを脅す時間があったと言うのか。これはもう私のプライドの問題だ。デートくらいできるところを見せてやろう!

「ラン、私とデートしてみない?」

「はっ?!デート?!」

 驚いたかぼパンが口を挟んだが、そんな事はお構いなしと言わんばかりにランは微笑んだ。

「いいですよ」

 躊躇う事なく了承してくれた。さすが同志だ。

「いつ行く?」

「今日行きましょうか。午後はお休みですし」

「じゃあ決定!サクッと進んで良いね」

「楽しみです」

 私とランの和かなやり取りの間で言葉を失ってしまったご様子のかぼパン。

「大丈夫?驚きすぎじゃない?」

 声を掛けると「いや、ないだろう」と呟きボーゼンと執務室に入って行ったのだった。

 ボーゼンとしている所も可愛かったけど、失礼すぎる。かぼパンは私の事を人間じゃないと思っている可能性が高いな。
 

「では行きましょうか」
 
 午後になり、手慣れた仕草で馬車へとエスコートしてくれるラン。
乗り込むとかぼパンが当たり前のように座っていた。

「なぜかぼパンが?」

「僕も午後は休みだからな。街に用事がある」

「そう」

 かぼパンの向かいにランと並んで座ると、少し不機嫌そうな顔で私達を見つめて来る。

 相変わらず不機嫌そうな顔も……可愛い!

 ランに目でかぼパンが可愛いと訴えてみると、微笑み頷いてくれた。

 やはり同志、私たちは通じ合っている!

 ワンチャン本当に結婚するのもアリかもしれない。2人でかぼパンを一生からかい、愛でて生きるの。

「なんだその無言の微笑みは!?通じ合うな!やめてくれぇぇ」

 空気に耐えられなかったのか、私とランの間に割り込み座ったかぼパン。
 いちいち行動が可愛すぎる!

「私たちにもし子供が出来たらこんな感じなのね」

「そうですね」

「ややや、やーめーろー!」

 かぼパンは立ち上がり私とランの距離を離そうと両手を広げてくる。

 ああ、やっぱり可愛いっ!
 広げられたかぼパンの手をにぎにぎして悶えていると、ランが真面目な顔でかぼパンに聞いた。

「陛下、何故そんなに反対なさるのですか?リーリン嬢にはお勧めされたのに」

「そ、それが……なぜかよく分からないが……」

 歯切れの悪い返事にランはそうですかと呟き、何かを考え込むような表情で私の顔をじっと見つめたのだった。

「じゃ、かぼパンあとでね!」

 街に着き馬車から降りて手を振ると、口を曲げつまらなさそうな顔をした。

 デートはやめて一緒に遊んだ方が良いかな?

「ランを襲うなよ」

 前言撤回。

「私をなんだと思ってるのよ」

「ガサツで女らしさのカケラもない名ばかり聖女」

「はいはい、じゃあねー」

 まだ何か文句を言いた気なかぼパンを置いて私とランは歩き出す。

 実はランと2人でゆっくり話してみたかったんだよね。

「ランもかぼパンが可愛くて仕方ない同志だよね?」

「はい、聖女様が来られてから陛下の初めてみる表情や態度が多くてとても潤っております」

「潤ってるんだ?あはは!でも聖女様呼びはやめてくれる?奈那か名ばかりでいいよ」

「では奈那様と」

 2人でかぼパンが如何に可愛いか熱く語りながら街を歩き、かぼパンを愛でる会を結成。歩き疲れ噴水前のベンチで一休み。

 街並みを眺めてハッと気がついた。花屋さんの前に置かれた看板からはみ出している、赤く丸いシルエットに。

「ブハッ」

 思わず吹き出してしまった。後ろに護衛も立っているし、あれは間違いなくかぼパンのかぼちゃパンツの膨らみ部分。
 いやいや、真面目にやってるんだよね?可愛すぎて愛しくなってくる。

「急に笑ってどうかしましたか?」

 ランが不思議そうに聞いてくる。

「見て、お花屋さんの看板」

「ブハッ」

 ランも吹き出し、プルプルと震えた。

「私たちの世界に頭隠して尻隠さずって言う言葉があるんだけど」

「ピッタリですね」

「ね!」

 2人で声をあげて大爆笑。
 あまり見すぎると気づいた事がバレるだろうと立ち上がり移動する事に。

「面白いから手でも繋いでみる?」

「それはやめておきます。陛下が倒れるかもしれないので」

「さすがにそこまでないでしょ!」

「分かりませんよ」

 意味深な笑顔で案内されたのはスイーツで有名なお店。
 いちごのスイーツを注文したところで、かぼパンが偶然を装いご来店。

「ぐ、偶然だな。僕もここのいちごケーキを食べに来たんだ」

 あまりの演技の下手さにランも私もにやけ顔。でも、もしかしたらかぼパンは寂しかったのかも知れない。

「偶然だね!用事が終わったなら一緒に食べよっか。ここ座りなよ!」

「はあ、名ばかりは仕方ないな」

 隣に座らせるとチラチラ私とランを交互に見てくる。デートがどうだったのか気になるのだろう。見てたくせに、可愛いんだから。

「デート楽しかったよ!ずっとかぼパンの話をしてたの」

「僕の?」

「そうよ。かぼパンがどれだけ可愛いかを熱く語ってた」

 への字だった口角が上向きになり、瞳をキラキラさせたかぼパン。

「そうか、盛り上がっていたのは僕の話なんだな」

「あれ?なんで盛り上がってたって知ってるの?」

「そ、想像だ!」

 狼狽えている中運ばれて来たケーキのイチゴをフォークに刺して、口元に差し出すと反射的なのかパクっと食べた。

「おいちい……」

 もぐもぐしながらおいちいと呟いたかぼパン。これは尊い。

「見た?私の差し出したイチゴを食べてくれたよ?」

「これがさっき教えて頂いた尊いですね」

「そーそー!ランもやってみて!」

 ランが自分のケーキのイチゴをフォークに刺して差し出す

「ほらかぼパン。あーんして、あーん」

「僕は子供じゃない!だがっ、いちごがっ」

 なんだかんだと言いながらランの差し出したいちごに食いつき、あーん成功。

 ああ、可愛いが過ぎる!もっとあーんしたいっ!それにしてもいちご強っ!

「追加でいちごだけ下さーい」

 ランと2人で餌付けした。
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