名ばかり聖女はかぼちゃパンツ陛下をからかいたい!

ハラペコWASABI

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9かぼ!服屋さんでもからかいたい

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「この女性に似合いそうな服を全部くれ」

 かぼパンは服屋さんのソファに座るなり言い切った。太っ腹で有難いけど。

「ちょっと待って!」

「なんだ?」

「有難いけど私はズボンが欲しいから」

「ああ、そう言っていたな……」

 返事をしている途中で、はっと何かに気づいたように言葉を止めたかぼパン。

「そうかあれだ……あれを着せればいい。ふふふ」

 1人呟き笑いを溢し、女性従業員に何やらコソコソと指示を出した。
 女性従業員は慌ただしく奥の部屋へ。

 かぼパンが何かを企んでいるのは間違いない。
 一体何が来るのか待ち構えていると、女性従業員が服を抱えて私の目の前に立った。

「陛下ご指定の品でございます」

 目の前で広げられた、大きく丸みを帯びたシルエットのパンツ。

 これだったか……

 広げられたはかぼちゃパンツの丈が長いバージョンと言っても過言ではない。

 かぼパンは小さなおて手で口元を押さえウキウキ顔。
 まさか私もかぼちゃパンツを履いているじゃないか!とか言いたくてこんなにウキウキワクワクしているの?

 可愛い過ぎるうぅぅ!

「試着します!」

 私は笑顔でパンツを受け取り試着室へ。

 長い丈のかぼちゃパンツを履き部屋へ戻ると、してやったり顔で私を見たかぼパン。
 堪えきれないニヤニヤ口元を両手で押さえ隠した。

 ああ、もう、してやったり顔が可愛すぎるうぅぅ!

「一応女性だから長い丈にしてもらったが、それはアレだろ?いつも僕に言ってくる……か・ぼ……ぷぷぷ」

 私にかぼちゃパンツと言わせたいかぼパンは目を細め、シシシシと聞こえそうなとびきりの笑顔を見せている。

 はーっ、可愛い!心臓に悪いくらい可愛すぎるっ。

 その顔に、私が言おうとしているこの一言を放ったらどう歪むのか……見たい!

 きっと可愛いに違いないっ。

「これはバルーンパンツよ」

「あっ?」

「バルーンパンツ」

 狐につままれたようにポカンと口を開けたかぼパン。

「え?だって僕のパンツは……?」

「かぼちゃパンツ」

「名ばかりのパンツは……」

「バルーンパンツよ」

「え……?」

 信じられないと言う表情で、従業員のお姉さんとランに目を向けた。助けを求めているんだろう。
 察したランが優しい瞳で微笑んだ。

「バルーンパンツですね」

「えっ……」

 言葉を失い固まったかぼパン。

 はあ、可愛い、可愛すぎる!心から慰めてあげたくなるその表情、母性本能マックス!

 ショックを受けているかぼパンを抱っこして慰めようとした時、ドアの向こうが突然騒々しくなった。

「許可を得ませんと入ってはいけません!」

「ただの護衛がカナル公爵家に歯向かう気?今すぐここを通しなさいっ!命令よ」

 護衛と女の怒鳴り声が聞こえてきて室内は一気に不穏な空気に。

 ランは盛大に溜息を吐き、かぼパンは嫌そうに眉根を寄せた。

「厄介な方に見つかってしまいましたね。私が対処いたします」

 ランがドアに手を掛け開けた瞬間、乗り込んで来た1人の少女。

「陛下!お会いしたかったですわ!」

 ピンク色のドレスを着たピンクヘアのご令嬢。私より歳下だろう。
 とても可愛いらしい顔だけど、いきなり飛び込んでくるのは失礼すぎる。

 もやった瞬間、ご令嬢からキッと厳しい瞳で見つめられた。

「あなた何者ですの?陛下とはどう言うご関係?」

 あ、これめんどくさいパターンだ。

「あなたには言えない関係……」

「どどどどどう言う関係ですのっ?」

 めんどくさそうなので適当に言った言葉だけど、想像より動揺してちょっと可愛い。

「勝手に入って来てうるさいな。挨拶が済んだら出て行ってくれないか」

 かぼパンが私とご令嬢の会話を遮り、目も合わさず心底嫌そうな表情で言った。

 こんな表情をさせるなんて、このご令嬢はどれだけかぼパンの心に深く存在しているのか。

 叱られたご令嬢は不服そうに私を指さした。

「この女が何者なのか教えて頂きませんと帰るに帰れませんわ」

 教えたら帰ると言う事ね。かぼパンが嫌そうだからさっさとお帰り頂こう。

「新しいベビーシッターの斉藤奈那です」

「まぁ!そうでしたの、私はカナル公爵家の長女、カナル・デ・リーリンよ!陛下のお祖母様から婚約者に指名されましたの……」

 ああ、彼女がお婆様に無理矢理婚約させられそうになったお相手なのね。

 余計な事は話させないとばかりに、すかさずかぼパンが割り込んでくる。

「お祖母様が勝手に言っただけで婚約は結んでいない。いつ大人に戻れるかもわからないし、僕が大人に戻っても君と結婚するつもりはないから他に婚約者を決めてくれ」

 淡々と言ったかぼパン。冷たいようだが正論だ。大人に戻れる保証はない。

「頭では分かっているのですが、あの見目麗しいお姿を思い出すと諦めきれず……」

「まあ、僕は世界一のだからな。しかし僕までとは言わないが他にも顔のいい奴はいるだろう。ランなどどうだ?」

 自分に振られると思っていなかったランは慌てた。

「さぁ、もうお引き取り頂けますか?わたくしたちも忙しい合間を縫って来ておりますので。一分一秒無駄にできません。さあさあ」

 ランが無理矢理リーリンを追い出すと、かぼパンが私を呆れた様な瞳で見て笑った。

「名ばかりみたいなベビーシッターがいてたまるか」

 第一声がそれか。

「あはは!でもなにも言わなかったって事は早く出て行って欲しかったからでしょう?」

「そうだ。まぁ、ありがとう」

 ツンとしながらお礼を言ったかぼパンは、私が普段着られる服を片っ端から購入してくれた。正直助かる。

「ありがとう」

「僕が呼び出したのだから当然だ」

 はあっ、今すぐかぼパンを抱きあげたい気分。

「抱っこしていい?」

「ダメに決まってるだろう!人前だぞ」

 横目で女性従業員を確かめたかぼパン。

「人前じゃなかったらいいのね!」

「ちがっ」

 真っ赤な顔で否定したけどもう遅い。
 馬車の中でサッと抱き上げ膝に乗せた。

「うぐぐ……僕はぬいぐるみじゃないぞ!」

「あ、かぼパンのぬいぐるみ欲しい!」

 私の言葉にランが瞳を輝かせる。

「作りましょう!」

「やったー!」

「ラン?!なぜそうなるんだ!このっ、名ばかりめー!余計な事ばかり……」

 かぼパンは私の膝の上でブツブツ文句を言っているけど、後頭部すらも可愛くてたまらない。

「あーっ!後頭部すら可愛い!」

「可愛い言うなぁぁあ」

 小さな手で慌てて頭を隠したかぼパンだった。ああ、可愛い!
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