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6かぼ!公園作って愛でたい
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「奈那様が来てまだ1日も経っていないと言うのに、もう数年経っている気分です」
朝食後、廊下を移動しながらランが言う。
ちなみに私に抱っこされるよりはマシだ。と、かぼパンは自らランに抱っこされている。ああ、ランが羨まし過ぎる。
「どう言う意味?」
「図々しいって事だろう」
「かぼパンには聞いてない」
「くうっ……」
ランはふふふと笑う。
「そう言うところです。陛下相手に臆する事もなく、媚を売るでもなく、素で打ち解けているじゃないですか。それにこんなに楽しそうな陛下は初めて見た気がします」
「おい、名ばかりが誤解するような事を言うな。別に楽しんでなどいない!」
「あ、言い方を間違えましたね。陛下が素で接する事の出来る女性がいたんだなと……」
「ラン、また誤解されるような事を言うな!名ばかりがその気になったらどうする」
チロっと横目で私を見たかぼパン。その気とはまさか恋心とかの話だろうか?お子様相手に絶対ないない!
「あはは!安心してかぼパン、私大人の男が好きだから」
「うっ」
瞬時にへの字口になったかぼパン。へこむならどうしてわざわざ自ら突っ込まれるような事を言うかなぁ。
「もしかしてかぼパン、自分の事を大人だと思ってるの?」
「当たり前だ!」
「まぁ年齢はそうかもしれないけど……」
「だから、元に戻るために名ばかりを召喚したんじゃないか」
そういえばそうだった。かぼパンが可愛すぎて私が呼ばれた理由を忘れていたわ。
「樽が届くまでに大人に戻れる方法を探してみよっか」
「しかし、出来る事はやった……本当に沢山試したんだ」
「じゃ、怪しい液体は飲んだの?」
「そんなもの飲むわけないだろう」
「ほら、まだ試してない事があるじゃない」
私の言葉にかぼパンは唇を尖らせ頷いた。
飴がダメと来たら、次に思い当たるのは怪しい液体。
私からみると常識的なものでも、この世界から見ると怪しい液体とかないだろうか?
「あ、みそ汁……?」
私はハッとした。
何故気付かなかったのか、飴に続き私の鞄にはたまたまフリーズドライのみそ汁が入っている。
会社に置いてある昼食用みそ汁が切れ、召喚される前に購入していたのだ。
あのタイミングは今思えば私が聖女だったからこそ。
まさかみそ汁がとは思うが、みそ汁は不老長寿の薬とか、医者いらずだの毒消しだとか言われている。
可能性は……ある!
「なんだ?」
「なめこみそ汁って知ってる?」
「なんだそれは?」
「キノコが入った怪しい液体!お昼にご馳走するね」
不思議そうに首を傾げているかぼパンの頬をプニプニと触るが、慣れたのか諦めたのか、抵抗せず眉間に皺を寄せた。
「嫌な予感しかしないんだが」
「でも、もし元に戻れたらラッキーでしょ?」
「それはそうだが……」
かぼパンは思い切り不安そうな表情のまま執務室に消えていった。
私、信用なさそ。
それよりランとかぼパンが仕事に行ってしまったので1人で時間を潰さないといけない。
ブラブラとマシューの所へ行き、話が尽きると回廊から見えていた中庭を探索。
綺麗に手入れされているけど、正直見るもん見たら別に何も楽しくはない。
「うん、暇だわ。異世界で無職ヤバイ」
この中庭もこんなに広大な敷地があるんだから公園とか作れば良いのに。
ブランコに乗るかぼパン、可愛いだろうなぁ。名前分かんないけどバネでバインバイン動く動物的なアレとかも。かぼパンが乗っていたら最高に可愛いだろうなぁ……
はしゃぐかぼパンを想像すると、どんどん見たくてたまらなくなって来る。
もしかしたら、魔法があるこの世界で遊具を作るのは難しい事ではないかもしれない。と気付いてしまった。
私は早足で執事長の元へ向かい、遊具を絵に起こし、かぼパンが遊んでいる想像図を描いた。
「いかがでしょうか?」
「さすが聖女様、素晴らしいご提案でございます」
「ありがとう。遊具で遊んでる陛下、見たいですよね?魔法でチョチョイと作る事って出来るかしら?」
「ええ、材料さえあれば、勿論魔法でチョチョイでございますとも!」
私と執事長は腹黒い笑いをこぼしながら固い握手を交わした。ラン以外にも同志はいるのだ。
手際良く魔法使いにお願いし、あっという間に出来上がった遊具達。
ブランコに乗り安全確認。
隣で力一杯立ち漕ぎしている執事長も笑顔を見せて楽しそう。
バインバインも執事長と2人で確認を済ませ、早速執務室前で待機。
出て来たかぼパンをすかさず確保。右手に抱えて走り出す。
「な、何をするっ?」
「大丈夫大丈夫、楽しい所に連れていってあげる!」
「名ばかりの大丈夫ほど恐怖を感じる言葉はないんだが?」
「あはは!失礼すぎ」
抵抗するのを諦めたのか、それとも何をされるのかと冷や汗をかいているのか。意外と大人しいままのかぼパンを中庭の遊具ゾーンへと運んだ。
「どうぞ、こちらかぼパンの為に作った遊具でございます!」
「ゆう……ぐ?」
この世界には公園はあるがブランコなどの遊具は無かったらしい。
私はかぼパンをブランコに座らせる。
「いい?この釣り具の鎖をしっかり握っておくのよ?」
「な、何が起きるんだ?」
軽く後ろから押すと前へ後ろへとブランコが揺れる。
始めこそ恐る恐るだったが、楽しいのか頬を桜色に染め口元を緩ませ、足をブラブラとさせた。どうやら気に入ってくれたらしい。
「ふむ、これは楽しいな」
「か~わ~い~!」
私と執事長の声が重なった。
カメラがあるこの世界、シャッターチャンスを逃すまいと執事長が呼んでいた写真家が連写。
私もスマホで動画撮影を始める。
「子供じゃないぞ。写真ヤメロ」
口を尖らせ写真家を下がらせたかぼパンはスマホの存在など知るわけもなく。
無防備に、そして実に楽しそうに遊具で遊んだのだった。
「ブランコもバインバインとやらも中々に楽しかったぞ。名ばかりも良い事を思いつくんだな」
ディナーのステーキを食べながらご満悦なかぼパン。
遊ぶ様子を見られなかったランは不服そうに私を見ている。
大丈夫、後で見せてあげるから!
デザートを食べ終えたところで私はスマホを取り出した。食事中喉に詰まらせたら困るから食べ終わるのを待っていたのよ!
「ラン、これが遊具で遊ぶかぼパンだよ!」
動画を見せるとランは瞬時に瞳を輝かせ笑顔になった。
「わぁ!とても楽しそうで良い顔をしていますね」
「でしょー!生で見たらもっと可愛いかったよー」
「なんだこの動く写真はぁ!やめろおおぉ!」
かぼパンが恥ずかしそうに叫んだところで今日の愛あるからかいは終了。
部屋でゆっくり見よう。
あ、そういえばみそ汁忘れてた。
朝食後、廊下を移動しながらランが言う。
ちなみに私に抱っこされるよりはマシだ。と、かぼパンは自らランに抱っこされている。ああ、ランが羨まし過ぎる。
「どう言う意味?」
「図々しいって事だろう」
「かぼパンには聞いてない」
「くうっ……」
ランはふふふと笑う。
「そう言うところです。陛下相手に臆する事もなく、媚を売るでもなく、素で打ち解けているじゃないですか。それにこんなに楽しそうな陛下は初めて見た気がします」
「おい、名ばかりが誤解するような事を言うな。別に楽しんでなどいない!」
「あ、言い方を間違えましたね。陛下が素で接する事の出来る女性がいたんだなと……」
「ラン、また誤解されるような事を言うな!名ばかりがその気になったらどうする」
チロっと横目で私を見たかぼパン。その気とはまさか恋心とかの話だろうか?お子様相手に絶対ないない!
「あはは!安心してかぼパン、私大人の男が好きだから」
「うっ」
瞬時にへの字口になったかぼパン。へこむならどうしてわざわざ自ら突っ込まれるような事を言うかなぁ。
「もしかしてかぼパン、自分の事を大人だと思ってるの?」
「当たり前だ!」
「まぁ年齢はそうかもしれないけど……」
「だから、元に戻るために名ばかりを召喚したんじゃないか」
そういえばそうだった。かぼパンが可愛すぎて私が呼ばれた理由を忘れていたわ。
「樽が届くまでに大人に戻れる方法を探してみよっか」
「しかし、出来る事はやった……本当に沢山試したんだ」
「じゃ、怪しい液体は飲んだの?」
「そんなもの飲むわけないだろう」
「ほら、まだ試してない事があるじゃない」
私の言葉にかぼパンは唇を尖らせ頷いた。
飴がダメと来たら、次に思い当たるのは怪しい液体。
私からみると常識的なものでも、この世界から見ると怪しい液体とかないだろうか?
「あ、みそ汁……?」
私はハッとした。
何故気付かなかったのか、飴に続き私の鞄にはたまたまフリーズドライのみそ汁が入っている。
会社に置いてある昼食用みそ汁が切れ、召喚される前に購入していたのだ。
あのタイミングは今思えば私が聖女だったからこそ。
まさかみそ汁がとは思うが、みそ汁は不老長寿の薬とか、医者いらずだの毒消しだとか言われている。
可能性は……ある!
「なんだ?」
「なめこみそ汁って知ってる?」
「なんだそれは?」
「キノコが入った怪しい液体!お昼にご馳走するね」
不思議そうに首を傾げているかぼパンの頬をプニプニと触るが、慣れたのか諦めたのか、抵抗せず眉間に皺を寄せた。
「嫌な予感しかしないんだが」
「でも、もし元に戻れたらラッキーでしょ?」
「それはそうだが……」
かぼパンは思い切り不安そうな表情のまま執務室に消えていった。
私、信用なさそ。
それよりランとかぼパンが仕事に行ってしまったので1人で時間を潰さないといけない。
ブラブラとマシューの所へ行き、話が尽きると回廊から見えていた中庭を探索。
綺麗に手入れされているけど、正直見るもん見たら別に何も楽しくはない。
「うん、暇だわ。異世界で無職ヤバイ」
この中庭もこんなに広大な敷地があるんだから公園とか作れば良いのに。
ブランコに乗るかぼパン、可愛いだろうなぁ。名前分かんないけどバネでバインバイン動く動物的なアレとかも。かぼパンが乗っていたら最高に可愛いだろうなぁ……
はしゃぐかぼパンを想像すると、どんどん見たくてたまらなくなって来る。
もしかしたら、魔法があるこの世界で遊具を作るのは難しい事ではないかもしれない。と気付いてしまった。
私は早足で執事長の元へ向かい、遊具を絵に起こし、かぼパンが遊んでいる想像図を描いた。
「いかがでしょうか?」
「さすが聖女様、素晴らしいご提案でございます」
「ありがとう。遊具で遊んでる陛下、見たいですよね?魔法でチョチョイと作る事って出来るかしら?」
「ええ、材料さえあれば、勿論魔法でチョチョイでございますとも!」
私と執事長は腹黒い笑いをこぼしながら固い握手を交わした。ラン以外にも同志はいるのだ。
手際良く魔法使いにお願いし、あっという間に出来上がった遊具達。
ブランコに乗り安全確認。
隣で力一杯立ち漕ぎしている執事長も笑顔を見せて楽しそう。
バインバインも執事長と2人で確認を済ませ、早速執務室前で待機。
出て来たかぼパンをすかさず確保。右手に抱えて走り出す。
「な、何をするっ?」
「大丈夫大丈夫、楽しい所に連れていってあげる!」
「名ばかりの大丈夫ほど恐怖を感じる言葉はないんだが?」
「あはは!失礼すぎ」
抵抗するのを諦めたのか、それとも何をされるのかと冷や汗をかいているのか。意外と大人しいままのかぼパンを中庭の遊具ゾーンへと運んだ。
「どうぞ、こちらかぼパンの為に作った遊具でございます!」
「ゆう……ぐ?」
この世界には公園はあるがブランコなどの遊具は無かったらしい。
私はかぼパンをブランコに座らせる。
「いい?この釣り具の鎖をしっかり握っておくのよ?」
「な、何が起きるんだ?」
軽く後ろから押すと前へ後ろへとブランコが揺れる。
始めこそ恐る恐るだったが、楽しいのか頬を桜色に染め口元を緩ませ、足をブラブラとさせた。どうやら気に入ってくれたらしい。
「ふむ、これは楽しいな」
「か~わ~い~!」
私と執事長の声が重なった。
カメラがあるこの世界、シャッターチャンスを逃すまいと執事長が呼んでいた写真家が連写。
私もスマホで動画撮影を始める。
「子供じゃないぞ。写真ヤメロ」
口を尖らせ写真家を下がらせたかぼパンはスマホの存在など知るわけもなく。
無防備に、そして実に楽しそうに遊具で遊んだのだった。
「ブランコもバインバインとやらも中々に楽しかったぞ。名ばかりも良い事を思いつくんだな」
ディナーのステーキを食べながらご満悦なかぼパン。
遊ぶ様子を見られなかったランは不服そうに私を見ている。
大丈夫、後で見せてあげるから!
デザートを食べ終えたところで私はスマホを取り出した。食事中喉に詰まらせたら困るから食べ終わるのを待っていたのよ!
「ラン、これが遊具で遊ぶかぼパンだよ!」
動画を見せるとランは瞬時に瞳を輝かせ笑顔になった。
「わぁ!とても楽しそうで良い顔をしていますね」
「でしょー!生で見たらもっと可愛いかったよー」
「なんだこの動く写真はぁ!やめろおおぉ!」
かぼパンが恥ずかしそうに叫んだところで今日の愛あるからかいは終了。
部屋でゆっくり見よう。
あ、そういえばみそ汁忘れてた。
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