名ばかり聖女はかぼちゃパンツ陛下をからかいたい!

ハラペコWASABI

文字の大きさ
上 下
5 / 27

5かぼ!おはようスープ

しおりを挟む
「かぼパンおっはよー」

 朝食の時間、朝から上機嫌でかぼパンの隣に座り頬を軽くつついた。今日も朝から可愛すぎる。

「なんでいちいち僕の頬を触るんだ!」

「そんなの可愛いからに決まってるじゃない!」

「うぐぐ……よくも堂々と……ラン、僕の事を可愛いと言った人を罰する法律を作ってはどうだ?」

 ツンとした顔で言ったが、隣に立っているランは困ったように笑った。

「そうしますと私含め、城で働く者や国民の大多数を罰する事になるかと」

「そ、そんなに僕は可愛いと言われているのか?」

「陛下はご存知ないかもしれませんが、子供の姿になってから更新された王室案内が飛ぶように売れ、記録を塗り替えました。まぁ、今までの王室案内売上歴代一位も、大人のお姿の陛下でしたが」

 ランの言葉にかぼパンはゴン、とテーブルにおでこを置いて動かなくなった。本気で自分の可愛さに気付いていないのか、相当ショックだったようだ。

 暫くそっとしておいてあげよう。

「ラン、その王室案内はかぼパンの写真が掲載されているの?」

「はい。代々マンドローレ王室の歴史と現王のお姿を載せた物を販売しているのですが、子供の姿になったので写真を変更したところ可愛いと大評判で人気商品になりました」

「そうなんだ!私も欲しい。きっと写真も可愛いんだろうなぁ」

 私の一言にかぼパンがむくっと起き上がる。

「ダメだ!」

「えー、そこまで命令される理由はない!」

「はぁ、分かっている。名ばかりが僕の言う事を聞いてくれるなんて一個も期待していない」

 まだ出会って丸一日も経っていないのに、私の何が分かるのかと言いたかったが言葉を飲んだ。

 かぼパンが可愛い顔に似合わない諦め混じりの溜息を吐いたから。

 その溜息すら可愛いくて。
 何故なの?溜息が具現化してグッズになりそうな可愛さと表現したらいいだろうか。とにかく可愛い。

 可愛さに当てられていると、朝食を運んで来た執事がおはようスープでございます。と、テーブルにスープを置いてくれた。

 おはようスープって、名称が可愛すぎない?

「かぼパン、このスープの名前は?」

 一応確認をね。

「聞こえなかったのか?おはようスープだ」

 普通に答えてくれたけど、新たな発見をしてしまった。
 可愛い子が可愛いワードを言うだけで超可愛いになるって事に!

「もう一回」

「おはようスープ」

「優しい感じでもういっか……」

「わざとだろう!もう言わないぞ!」

 かぼパンはぷうっと頬を膨らませた。
 まさか、怒っているアピールをしているの?
 こんな25歳反則すぎる。ああ、可愛い。もっと構いたい!

「スープ食べさせてあげようか?」

「自分で食べられるから不要だ」

「照れんなよ?」

「照れてないっ!どうして、どうしてだ!どうしてこんなのが聖女なんだー!」

 スプーンを握りしめ叫んだかぼパン。
 その姿も可愛らしいが、喉にスープを引っ掛けるかもしれないから食べ始めたら黙っておこう。

 それに、目の前に置かれた白くてクリーミーなおはようスープの美味しそうな事。
 スプーンにすくい口に入れると、想像通りクリーミーなジャガイモの味わいが満ちてゆく。

「うっ……」

 美味い!あまりの美味しさに言葉に詰まると、かぼパンが瞳を大きく開け、驚いたように私を見た。

 おや、もしかして心配してる?

「うぅ……」

 更に声を漏らしてみると、かぼパンはガタン!と、とても心配そうな顔で椅子に勢いよく立ち上がった。

「どうした?!まさか口に合わなかったのか?」

 はあっ、かぼパンなんだかんだ言って優しい!

「ううん、美味しすぎて言葉に詰まったの」

「はぁ、心配して損した」

 ツンとした顔で椅子に腰掛けたけど、優しさにきゅんきゅんした私はすかさずかぼパンの頬をつつく。

「心配してくれて優しいね」

「目の前で倒れられたら気分が悪いからだっ」

「そっか~、やっぱり心配してくれたんだぁ~」

「ニ、ニヤニヤするなぁっ!」

 かぼパンの照れくさそうな表情があまりにも可愛くて、ニヤニヤ顔でおはようスープを味わう。

 すると、かぼパンの隣でランもずっとニヤついている事に気がついてしまった。

 ランと目が合い親指を立てると、伝わったのかランも親指を立て返してくれた。

 きっとランも私と同じ、かぼパンが可愛くて仕方がないんだろう。

 スープ皿が下げられると、パンとスクランブルエッグが出された。執事が言った名称はおはようパンとおはようたまごだ。

 いちいち名称が可愛いのはかぼパンに言わせたい言葉100から選んだとかじゃないよね?

「ねえかぼパン」

「1人で食べられるから手伝いはいらないぞ」

「まだ何も言ってないのに」

「どうせろくな事を言わないと分かっている!」 

 フンッと勢いよく言い切ったかぼパン。
 構いたかったけど、完璧に警戒されてしまったみたいだ。
 ここは諦めて素直に雑談でもしよう。

「ここの料理、名前が子供向けって言うか、全部おはようが付いてるの可愛い。きっと可愛い人が付けたんだろうね」

「…………そ、そうだな……」

 かぼパンの気まずそうな返事に、絶妙な間。
 首を傾げ見ると、立っているランのニヤニヤがさっきよりも大きくなっている。瞳が輝き、私に何かを伝えたいような……

 ま、まさか!
 私が目を見開くと、ランがコクリと頷いた。やはり、可愛い人が付けていたかっ!

「この料理の名前、誰が付けたの?」

「あうっ」

 変な声を漏らし、ビクッと体を揺らしたかぼパン。
 なんて素直な反応。そんなんじゃすぐにバレますよ?

「絶対世界一可愛い人が付けたと思うの。誰が付けたのか聞きたいなぁ」

「……し、しらな」

 すっとぼけようとしたかぼパンの言葉に、堪えきれなかったのかランが大口を開けて笑った。

「アハハハハ!」

「ラ、ラン!ヤメロ!そんなに笑うと……」

 バレるのではとドキドキした表情で私を見るかぼパン。とりあえず笑顔で頷いた。

「バレてますぞ?」

「どうしてだぁ!」

「かぼパンは世界一可愛いから」

「ああああ、もう可愛いって言うなぁぁ!」

 顔を真っ赤にし、必死な叫びが響き渡ったところで朝の愛あるからかいは終了。

 執事さんがシメのおはようプリンを持って来た時に解説してくれた。
 かぼパンは子供の頃、運ばれてくる料理全てに毎日おはようと挨拶をしていたらしい。

「おはよ、シュープ!」
「おはよ、たまご」
「おはよ、パン!」

 と。かぼパンのその究極の可愛さに、朝食に出される料理全てにおはよう~が付くようになったそうな。

 私も究極可愛い、食べ物に向かって挨拶する純粋なかぼパンを見たかったな。中身25歳の今もこんなに可愛いんだもん。

 ……あ、見ようと思えば見れるじゃない!
 
「かぼパン、今挨拶してみて!ほら、プリン来たよ」

「するかっ!」

 ダメだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

夫が大変和やかに俺の事嫌い?と聞いてきた件について〜成金一族の娘が公爵家に嫁いで愛される話

はくまいキャベツ
恋愛
父親の事業が成功し、一気に貴族の仲間入りとなったローズマリー。 父親は地位を更に確固たるものにするため、長女のローズマリーを歴史ある貴族と政略結婚させようとしていた。 成金一族と揶揄されながらも社交界に出向き、公爵家の次男、マイケルと出会ったが、本物の貴族の血というものを見せつけられ、ローズマリーは怯んでしまう。 しかも相手も値踏みする様な目で見てきて苦手意識を持ったが、ローズマリーの思いも虚しくその家に嫁ぐ事となった。 それでも妻としての役目は果たそうと無難な日々を過ごしていたある日、「君、もしかして俺の事嫌い?」と、まるで食べ物の好き嫌いを聞く様に夫に尋ねられた。 (……なぜ、分かったの) 格差婚に悩む、素直になれない妻と、何を考えているのか掴みにくい不思議な夫が育む恋愛ストーリー。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...