盲導犬

--- 盲導犬 ---


 混んでいる電車の中で、ふわっと、空間が出来た。
 見ると盲導犬を連れている盲目の女性がホームから入って来たからだった。


「あ、どうぞ」


 と若い女性が席を譲る。


「ありがとうございます」


 その女性は素直に好意を受け入れ座ると、連れている大きい真っ白な盲導犬は、彼女の足の間に入り、伏せて気持ちよさそうに目を閉じた。そのまま盲目の彼女と一体の様に寄り添っていた。
 周囲はみなそれを暖かい目で見ていた。


 近くにいたギャルっぽい二人組でさえも、


「えーっ、マジ、あのドウモウ犬カワイクない?」


 と言っていた。





 ドウモウ犬じゃない。


(了)
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