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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その17 あだ名
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「やっぱり必要だよねー」
「そうですね。私はともかく、先輩たちはまだまだ他人行儀な感じがしますし」
「まぁ俺はどうでもいいが……」
と、太鼓部員女子生徒が何やら話し合いをしていた。流石の僕も、この時だけは男として認められ、望子先輩から「鍵くんはダメだよー、華のあるガールズトークに参戦しちゃ」なんて言われてしまった。
……まぁ、入部当初からずっと男の娘として見られてきた僕だから、この時初めて先輩から「男」だと認められ、少し浮かれていたのだろう。先輩たちが何を話しているのかなんて気にもならなかった。
と、話し合いは終わったようで、先輩たちはすっくと立ち上がる。そして何やら、三人とも僕の方へ近づいてくるではないか。
「ど、どうしたんですか……?」
恐怖のあまり、僕は震え声で訴えた。
三人がどんな話をしていたのか分からないが、とにかく僕は今の三人を見て、自分の身の危険を感じてしまったのだ。
何だかいつもと様子が違うような……そんな感じがしたのだ。
「何を身構えてるんだ? 俺たちはただ、お前の呼び名を話し合っていただけだぞ?」
「呼び名……ですか?」
路世先輩は身構える僕に説明してくれた。
呼び名か……。確かに、こうして二人もの先輩が増えたんだ、そりゃ気軽に呼べるような呼び名は必要……だろうか?
「それって必要なんですか? 別に先輩たちは普通に鍵と呼べばいいじゃないですか」
「えー……それじゃ何か面白みがないじゃん! いいじゃん、それぞれに呼び名があってもさー」
と、駄々をこねる先輩。こうなってしまっては、僕ももうお手上げだ。
「分かりました分かりました。いいんじゃないですか、それぞれ僕の呼び名があっても。僕は構いませんよ。どうぞ、先輩たちの呼びやすいあだ名で呼んで下さい」
「……ヤケになってねぇか?」
「なってませんよ」
路世先輩に指摘されたが、特にヤケにはなってなくもなかった。あだ名で呼ばれる事が早々なかったので、これはこれで少し恥ずかしい事だと思った。
こほん、と咳払いをすると、まずは路世先輩からだった。
「えっと……じゃあ、ケン後輩」
「え、あ、はい」
路世先輩に呼ばれたので、ついつい返事を返してしまった。
しかし、ケン後輩とは…………これまた路世先輩らしい呼び名ではあった。
「仕方ないだろ! 俺だって、後輩を持つのは初めてなんだからよ!」
「そうなんですね……。そりゃ呼び名にも困りますね」
だったら最初から呼び名を決めなくてもいいだろ、と思ったが、そこはあえてツッコまないようにと思った。
次は望子先輩だった。が、先輩は僕の呼び名を口にせずに堂々と路世先輩の隣に立っているだけだった。
「あれ? 先輩は、僕に呼び名をつけないんですか?」
「うん? あぁ。私は別にいいよ。いつも通り、鍵くんって呼ばせてもらうつもりだし。それとも、呼び名で呼んでもらいたい?」
「い、いえ! 今のままで結構ですっ!」
慌てて僕は、両手を前に出してぶんぶんと手を振る。
流石に望子先輩に呼び名をつけさせると、すっごくぶっ飛んだ呼び名になるのではないだろうか……?
こうして僕の呼び名が、それぞれ決まったのだった。
「そうですね。私はともかく、先輩たちはまだまだ他人行儀な感じがしますし」
「まぁ俺はどうでもいいが……」
と、太鼓部員女子生徒が何やら話し合いをしていた。流石の僕も、この時だけは男として認められ、望子先輩から「鍵くんはダメだよー、華のあるガールズトークに参戦しちゃ」なんて言われてしまった。
……まぁ、入部当初からずっと男の娘として見られてきた僕だから、この時初めて先輩から「男」だと認められ、少し浮かれていたのだろう。先輩たちが何を話しているのかなんて気にもならなかった。
と、話し合いは終わったようで、先輩たちはすっくと立ち上がる。そして何やら、三人とも僕の方へ近づいてくるではないか。
「ど、どうしたんですか……?」
恐怖のあまり、僕は震え声で訴えた。
三人がどんな話をしていたのか分からないが、とにかく僕は今の三人を見て、自分の身の危険を感じてしまったのだ。
何だかいつもと様子が違うような……そんな感じがしたのだ。
「何を身構えてるんだ? 俺たちはただ、お前の呼び名を話し合っていただけだぞ?」
「呼び名……ですか?」
路世先輩は身構える僕に説明してくれた。
呼び名か……。確かに、こうして二人もの先輩が増えたんだ、そりゃ気軽に呼べるような呼び名は必要……だろうか?
「それって必要なんですか? 別に先輩たちは普通に鍵と呼べばいいじゃないですか」
「えー……それじゃ何か面白みがないじゃん! いいじゃん、それぞれに呼び名があってもさー」
と、駄々をこねる先輩。こうなってしまっては、僕ももうお手上げだ。
「分かりました分かりました。いいんじゃないですか、それぞれ僕の呼び名があっても。僕は構いませんよ。どうぞ、先輩たちの呼びやすいあだ名で呼んで下さい」
「……ヤケになってねぇか?」
「なってませんよ」
路世先輩に指摘されたが、特にヤケにはなってなくもなかった。あだ名で呼ばれる事が早々なかったので、これはこれで少し恥ずかしい事だと思った。
こほん、と咳払いをすると、まずは路世先輩からだった。
「えっと……じゃあ、ケン後輩」
「え、あ、はい」
路世先輩に呼ばれたので、ついつい返事を返してしまった。
しかし、ケン後輩とは…………これまた路世先輩らしい呼び名ではあった。
「仕方ないだろ! 俺だって、後輩を持つのは初めてなんだからよ!」
「そうなんですね……。そりゃ呼び名にも困りますね」
だったら最初から呼び名を決めなくてもいいだろ、と思ったが、そこはあえてツッコまないようにと思った。
次は望子先輩だった。が、先輩は僕の呼び名を口にせずに堂々と路世先輩の隣に立っているだけだった。
「あれ? 先輩は、僕に呼び名をつけないんですか?」
「うん? あぁ。私は別にいいよ。いつも通り、鍵くんって呼ばせてもらうつもりだし。それとも、呼び名で呼んでもらいたい?」
「い、いえ! 今のままで結構ですっ!」
慌てて僕は、両手を前に出してぶんぶんと手を振る。
流石に望子先輩に呼び名をつけさせると、すっごくぶっ飛んだ呼び名になるのではないだろうか……?
こうして僕の呼び名が、それぞれ決まったのだった。
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