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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その16 ボランティア
しおりを挟む「まったく……どうして僕が」
ぶつぶつと独り言のように呟きながら、中庭を通過していく。まさか、こんな事になるとは思ってもみらず、僕はただ、海よりも深いため息を吐くばかりだった。
僕の向かう先は、食堂の前に設置されている自動販売機だった。そして僕の制服のポケットには小銭がチャリン、と音を立てている。
まさか買出しをじゃんけんで決めることになり、僕が負けてしまうとは……。
「というか、あの自販機にメロンソーダなんてあったかなぁ……?」
望子先輩のオーダーであるメロンソーダがあったか回想しながら自販機の方へと向かっていくと、そこには紗琉がいた。
「……あれ? 紗琉じゃん。何してるのさ?」
「あら、鍵。見て分からないの? 自販機のゴミの分別よ。ペットボトルとパックの分別をしてるの」
と、紗琉はゴミ袋の中からパックとペットボトルを分けながら、こちらを振り返らずにそう説明してきた。
大体ならば、その仕事は他の委員会がやるべきのハズだが……これも生徒会の仕事なのだろうか?
「違うわよ。これは単にボランティアよ」
「ボランティアって……別に生徒会の仕事じゃないなら、紗琉がやる必要ないだろ」
「別にいいじゃないの。もうゴミはいっぱいになってたんだし、このまま放っておいても誰かが迷惑するだけよ? だったら、もう私がやっておくべきでしょ」
と、紗琉は黙々と分別作業をし始めた。………何だか、その姿を見ながら僕は、紗琉の事を放っておくことができなかった。
僕は紗琉の方に寄ると、ゴミ袋からパックのゴミを別の袋に入れていく。
「け、鍵!? どうして貴方が?」
「別にいいだろ。これは僕がやりたいからやるだけさ」
と、僕も黙々と作業をし始める。何だか一人で黙々と作業していく紗琉を見ていたら、紗琉の事を放っておくことができなくなっていた。
そのまま二人で黙々と作業していくこと数分。分別作業は終わり、そのまま分別したゴミを焼却炉へと運んでいくのだった。
「鍵」
「なんだい?」
「その……ありがとね。貴方が手伝わなかったら、こんなに早く終わってなかったわ」
と、紗琉は頬を赤く染めながらそう呟いた。……何だかそう言われると照れくさいが、僕は別に紗琉のためにやってたワケじゃない。頬を掻きながら、僕は少しかこつけたようにこう返した。
「別に僕は紗琉に感謝されるようなことはしてないよ。僕は僕の意思でやっただけなんだからさ」
なんていいながら、僕はもう一度自販機へと戻り、先輩たちのジュースを買って部室へと帰るのだった。
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