どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

文字の大きさ
上 下
15 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~

その15 嫌悪?

しおりを挟む
「じゃ、これでかいさーん!!」

 望子先輩のその一声で今日の部活はお開きとなった。今日もいつもと同じく本を読んで時間を潰していただけだが、それがこの太鼓部らしい。
 一体この部活の部費はどこに回しているのだろうかと、不安に思った事もあったが、細かいことを気にしてはいけない気がしたので先輩に聞こうとは思わなかった。
 ガラガラ、と部室の扉を開け、そのまま先輩たちが出て行くのを見送り、最後に僕が部室から出ると、そこには

「……あら、ケンくん?」
「一夜? それに紗琉まで?」

 三階の文化部棟の廊下に、一夜と紗琉がいたのだ。きっと生徒会の活動中なのだろう。

「もしかして、ケンくん。太鼓部に入ったの? あんなに部活に入ろうとしなかったのに……」
「まぁ、何もやらないよりかはマシかなって……それで二人は? 生徒会?」
「えぇ、文化部棟の見回りをしていたの。ほら、部活の備品の欠品とかあったりするじゃない? それの見回りをしていたの」
「そうだったんだ。そっちも忙しそうだね」

 と、一夜と他愛もない話をしていく。と、望子先輩は、放している僕に向かって、まるで置いていくかのように言い放った。

「鍵くん、帰るよー?」
「あ、はーい。じゃ、生徒会の仕事、頑張ってね」

 と、僕はその場を立ち去ろうとしたその時だった。

「鍵」

 不意に紗琉に声をかけられる。一体何なのだろうかと、僕は紗琉の方を振り返る。紗琉はこれまで見たこともないような不機嫌そうな顔をしながら、とんでもないことを言ったのだ。

「……あまり、太鼓部に関わらないほうがいいわよ」
「…………」

 それは何かの忠告なのだろうか? それともただの嫌味だろうか。よく分からないが、紗琉は不機嫌そうな顔でそう僕に言い放ったのだ。

「紗琉、それって……」
「せんぱぁーい!」

 と、今度はちぃの急かすような声。僕は紗琉にその言葉の真相を聞くことは出来ず、その場を立ち去るかのようにちぃ達の元へと駆けていく。
 その時の僕は、紗琉のその言葉の意味が分からないのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ネットの彼女がヤンデレで僕のリアルを破壊してくるんですが?!

そるそーそ
青春
ネットとリアルは別だ。ネットの彼女とリアルでの関係は持たない。そのはずだったのだけど・・・

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

燦歌を乗せて

河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。 久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。 第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。

桃色DK×4

山本記代 (元:青瀬 理央)
青春
のんびり、時々騒がしい仲良し四人組の男子高校生は、遊びに部活、恋にバイトと大忙し。 大人から見れば正にゆるゆるライフ。 でも、それを送る彼らは必死で真剣。 楽しければそれで良し! 面白ければ尚最高! 足りないものは、笑いとあの子とテストの点数。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【ショートショート】雨のおはなし

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

坊主女子:青春恋愛短編集【短編集】

S.H.L
青春
女性が坊主にする恋愛小説を短篇集としてまとめました。

処理中です...