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第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その11 初めての部活動
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そんなこんなで、この謎の部活である『太鼓部』に入って、早一週間が過ぎた。
この部活は運動部のように、毎日のように熱心に部室にある「太鼓の鉄人」を叩く部活かと思いきや、意外にも違っていた。
「ねー、鍵くん」
「なんですか、先輩……」
「たいくつだよー、なんかしてあそぼーよー」
「……今いいところなんで、後にしてくださいよ」
ライトノベルを読みながら、先輩を軽く受け流す。
この部活は「太鼓部」とはいいつつも、特に太鼓を毎日叩くような部活ではなく、ただ個人の自由に活動をして終了というかなりルーズな部活動だったのだ。
先輩曰く、「今はオフシーズンだから別にいいんだよー」と言っていたが……ここまで完全にオフとなると、何だかホントにこんな活動でいいのか? と疑問に思ってしまう。
そりゃ、部員となって最初に部室に入ったときに、「あぁ、別に自分のしたいことをやってればいいよー」なんていわれちゃ、逆にこっちが困る。その日だけ僕は、家に帰って偏頭痛を起こしたものだ。こんなゆるゆるな部活があっていいものか、と思いながら……。
「ねー、鍵くぅーんー」
「分かりました分かりました。だからそうやって制服の袖を引っ張らないでくださいよ!」
この部活に入って分かったことだが、意外にも望子先輩は年上にも関わらず、甘えん坊だったのだ。この部に入るまでの先輩のイメージが、音を立てて壊れていくほどだ。
「まったく……。望子、あんまりケン後輩を困らせるんじゃねぇぞ」
「困らせてなんかないよー。ただ一緒に遊んでほしいなーって思っただけだよー」
「……お前の行動で、ケン後輩が困ってるのを分かっていってるのか?」
深いため息を吐きながら、もう一人の先輩である路世先輩は言った。彼女は望子先輩と同じ三年生であり、僕らよりも早くこの部活に巻き込まれていたらしい。恐らくは望子先輩のせいで、入部せざるを得なくなったのだろう。
「じゃあ、何しますか、先輩」
「そうだねー。じゃ、バドミントンでもしよっか!」
「……せめて室内で出来ることをお願いします」
流石にグラウンドを使ってバドミントンをやる気にはなれなかった。そもそも、グラウンドは他の運動部が使っているし、邪魔になるようなことをすれば、さしずめ僕が締め上げられることになるだろう。
「えー……。グラウンドがダメなら、中庭でやろうよー……」
「そんなにバドミントンやりたいんですか!? 他にやりたいことないんですか!?」
「ない」
「えぇー……」
どうやら、今の望子先輩のマイブームはバドミントンのようで、今はバドミントンしか頭にない様子だった。それを見かねた路世先輩は、パソコンの画面から目を離し、ため息交じりに言った。
「ケン後輩。そうなった以上、望子は何を言っても聞かなくなるからな。……仕方なく、望子のわがままを聞いてやってくれ」
「……分かりました」
長年望子先輩を見てきた路世先輩がそういうのだから、そうなんだろう。僕は仕方なく、今日は先輩と中庭でバドミントンをして過ごすのだった。それを見かねたちぃには、帰りに、
「先輩、……強く生きてください」
と、憐れむような目で言われるのだった。
この部活は運動部のように、毎日のように熱心に部室にある「太鼓の鉄人」を叩く部活かと思いきや、意外にも違っていた。
「ねー、鍵くん」
「なんですか、先輩……」
「たいくつだよー、なんかしてあそぼーよー」
「……今いいところなんで、後にしてくださいよ」
ライトノベルを読みながら、先輩を軽く受け流す。
この部活は「太鼓部」とはいいつつも、特に太鼓を毎日叩くような部活ではなく、ただ個人の自由に活動をして終了というかなりルーズな部活動だったのだ。
先輩曰く、「今はオフシーズンだから別にいいんだよー」と言っていたが……ここまで完全にオフとなると、何だかホントにこんな活動でいいのか? と疑問に思ってしまう。
そりゃ、部員となって最初に部室に入ったときに、「あぁ、別に自分のしたいことをやってればいいよー」なんていわれちゃ、逆にこっちが困る。その日だけ僕は、家に帰って偏頭痛を起こしたものだ。こんなゆるゆるな部活があっていいものか、と思いながら……。
「ねー、鍵くぅーんー」
「分かりました分かりました。だからそうやって制服の袖を引っ張らないでくださいよ!」
この部活に入って分かったことだが、意外にも望子先輩は年上にも関わらず、甘えん坊だったのだ。この部に入るまでの先輩のイメージが、音を立てて壊れていくほどだ。
「まったく……。望子、あんまりケン後輩を困らせるんじゃねぇぞ」
「困らせてなんかないよー。ただ一緒に遊んでほしいなーって思っただけだよー」
「……お前の行動で、ケン後輩が困ってるのを分かっていってるのか?」
深いため息を吐きながら、もう一人の先輩である路世先輩は言った。彼女は望子先輩と同じ三年生であり、僕らよりも早くこの部活に巻き込まれていたらしい。恐らくは望子先輩のせいで、入部せざるを得なくなったのだろう。
「じゃあ、何しますか、先輩」
「そうだねー。じゃ、バドミントンでもしよっか!」
「……せめて室内で出来ることをお願いします」
流石にグラウンドを使ってバドミントンをやる気にはなれなかった。そもそも、グラウンドは他の運動部が使っているし、邪魔になるようなことをすれば、さしずめ僕が締め上げられることになるだろう。
「えー……。グラウンドがダメなら、中庭でやろうよー……」
「そんなにバドミントンやりたいんですか!? 他にやりたいことないんですか!?」
「ない」
「えぇー……」
どうやら、今の望子先輩のマイブームはバドミントンのようで、今はバドミントンしか頭にない様子だった。それを見かねた路世先輩は、パソコンの画面から目を離し、ため息交じりに言った。
「ケン後輩。そうなった以上、望子は何を言っても聞かなくなるからな。……仕方なく、望子のわがままを聞いてやってくれ」
「……分かりました」
長年望子先輩を見てきた路世先輩がそういうのだから、そうなんだろう。僕は仕方なく、今日は先輩と中庭でバドミントンをして過ごすのだった。それを見かねたちぃには、帰りに、
「先輩、……強く生きてください」
と、憐れむような目で言われるのだった。
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