どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

文字の大きさ
上 下
7 / 142
プロローグ ~で、結局何が始まるんですか?~

その7 黄倉紗琉(こくら しゃる)

しおりを挟む
「ちょっと貴方! タイが曲がってますよ! ちゃんと正してください!」

 ぴぴー、と笛を鳴らしながら、生徒の服装を注意するのは、僕のクラスメート兼クラス委員長であり、同じ太鼓部の黄倉紗琉だ。
 彼女は二年でありながら、生徒会長であり、一夜とともに生徒会を率いているのだ。
 まったりした一夜とは違い、なんでもソツにこなす紗琉。性格は違えど、二人は幼い頃からの幼馴染らしく、とても仲が良くて有名だ。

「ちょっとちょっと! 貴女たち、スカートスカート! 短すぎないかしら!?」

 今日は紗琉による服装検査が、この廊下で特別に開催されているようだ。
 生徒会長でありながら、風紀委員のような厳しさ。そのおかげか、今まで入学者数が定員割れしたこともなく、教師がわざわざ生徒の服装について厳しく言うことはなかった。
 それどころか、周りからの支持は厚く、来年の生徒会長も紗琉で決定と言われるほどであった。
 それもそうだ。体育祭や文化祭の企画はおろか、校則を改正し、今までダメだったスマホの持込を許可させたり、食堂のメニューを増やしたり、各部活動の部費を少しばかりアップしたりと、彼女の活動は生徒たちの学校生活を良い方向へガラリと変えてくれるものだった。
 その上、教師からの信頼も厚く、そのおかげで校則改正が出来たといっても過言ではない。誰からも信頼されている、まさに理想の生徒会長なのだ。
 信頼が厚いせいか、今まで紗琉に注意されていく生徒の中で、イヤな顔をする生徒は誰一人としていなかった。みんな、生徒会長である紗琉の言うことだけには絶対服従のようだった。

「そう考えると、紗琉ってすごい生徒会長なんだな……」

 と、しみじみ思う。紗琉も僕の気配に気づいたらしく、こちらへ声をかけてくる。

「あら、ケンじゃない。どうしたの、こんなところで――――――」

 紗琉はこちらを見ながら硬直し、顔を真っ赤にしていた。

「……? どうしたんだ、紗琉?」
「あ、アンタ……そんなトコ全開でレディーに話しかけるだなんて……! 退学よ! 生徒会長権限で、即退学にするわよ!」

 びし、と指をさす紗琉。だが、顔だけは明後日の方向を向いていた。僕は疑問に思い、紗琉の指差す方へ、つー……と目線を下げていく。そこには……

「――――――、あ」

 しまった。ズボンのチャックが全開だったことに、今更ながら気づく僕だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

鮫島さんは否定形で全肯定。

河津田 眞紀
青春
鮫島雷華(さめじまらいか)は、学年一の美少女だ。 しかし、男子生徒から距離を置かれている。 何故なら彼女は、「異性からの言葉を問答無用で否定してしまう呪い」にかかっているから。 高校一年の春、早くも同級生から距離を置かれる雷華と唯一会話できる男子生徒が一人。 他者からの言葉を全て肯定で返してしまう究極のイエスマン・温森海斗(ぬくもりかいと)であった。 海斗と雷華は、とある活動行事で同じグループになる。 雷華の親友・未空(みく)や、不登校気味な女子生徒・翠(すい)と共に発表に向けた準備を進める中で、海斗と雷華は肯定と否定を繰り返しながら徐々に距離を縮めていく。 そして、海斗は知る。雷華の呪いに隠された、驚愕の真実を―― 全否定ヒロインと超絶イエスマン主人公が織りなす、不器用で切ない青春ラブストーリー。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

「天気予報は気まぐれガールズ」

トンカツうどん
青春
紹介文:ようこそ、天気が気まぐれな世界へ!この物語の舞台は、普通の日常と非日常が交錯するちょっと不思議な街。そこに住む主人公・白井隼人は、平凡な高校生…だったはず。しかし、ある日突然、彼のクラスにやってきた転校生たちは、なんと天気を擬人化した少女たちだった!台風を擬人化した颶風(サフウ)紗風は、まさに嵐を巻き起こすトラブルメーカー。彼女が現れると、まるで天気が彼女の気分に合わせて荒れ狂うようになる。天真爛漫でいつも元気な陽晴光(ひばり ひかり)は高気圧そのもの。彼女がいると周りが一瞬で明るくなるけれど、ちょっと暑すぎるかも?そして、冷徹で冷静な氷雨冷奈(ひさめ れいな)は寒冷前線の化身。彼女が現れると、瞬く間に周囲の空気が冷え込み、まるで冬が訪れたかのような静寂が広がる。さらに、軽口が得意な偏西風の青年・西風悠(にしかぜ ゆう)も登場し、隼人の平穏な日々は一気にカオスへと変貌する。彼女たちはそれぞれが持つ独特な能力で、隼人の生活に次々と波乱を巻き起こしていく。彼が求めるのは、ただの平凡な日常なのに…!笑いあり、ハラハラドキドキありの気まぐれガールズたちが織りなす異色の天気予報。天気を操る彼女たちとの出会いは、隼人にとって驚きと感動の日々となるのか、それともさらなるトラブルの幕開けなのか?風が吹き、雨が降り、太陽が輝く中で繰り広げられる、ちょっぴり不思議で愉快な学園生活が今、始まる!

「俺の学校が野鳥少女でいっぱいなんだが!」

トンカツうどん
青春
--- **俺の学校が野鳥少女でいっぱいなんだが!** 普通の高校生活を送りたい——そんな願いを持つ柊涼太(ひいらぎ りょうた)は、野鳥の擬人化少女たちが集う学園に通っている。涼太の平穏な日常は、彼女たちの登場によって激しく揺さぶられる。 涼太の学校生活は、一筋縄ではいかない。朝の教室には、いつも元気な雀の少女、千夏(ちか)が明るい声で挨拶してくる。彼女の元気な姿は、まるで実際の雀が飛び跳ねているかのようだ。千夏の他にも、知的でクールなカラスの少女、羽菜(はな)や、静かで神秘的なフクロウの少女、夜美(よみ)など、多彩な鳥少女たちが涼太の周りに集う。 彼女たちはそれぞれ独特の個性を持ち、涼太に助言をくれたり、時にはいたずらを仕掛けてきたりする。数学のテスト対策も、一筋縄ではいかない。羽菜の賢さと千夏の明るさが加わることで、涼太は何とか乗り越えていくが、常に波乱万丈だ。 「静かな日常なんてどこにあるんだ?」涼太はそう思いつつも、彼女たちとの賑やかな日々を送るうちに、その喧騒が少しずつ愛おしくなっていく。毎日が新しい発見と挑戦の連続。時にハチャメチャで、時に心温まる瞬間が彼を待っている。 涼太は、鳥少女たちと共に、普通とは言えない学園生活を通じて成長していく。果たして彼は、平穏を取り戻せるのか?それとも、この賑やかな日常を受け入れ、新たな一歩を踏み出すのか?彼の行く末は、まだ誰にもわからない。 そんな柊涼太と野鳥少女たちの学園生活に、あなたも一緒に飛び込んでみませんか?

🍞 ブレッド 🍞 ~ニューヨークとフィレンツェを舞台にした語学留学生と女性薬剤師の物語~

光り輝く未来
青春
人生とは不思議なことの連続です。ニューヨークに語学留学している日本人の青年がフィレンツェで美しい薬剤師に出会うなんて。しかも、それがパンの歴史につながっているなんて。本当に不思議としか言いようがありません。 でも、もしかしたら、二人を引き合わせたのは古のメソポタミアの若い女性かもしれません。彼女が野生の麦の穂を手に取らなければ、青年と薬剤師が出会うことはなかったかもしれないからです。 ✧  ✧ 古のメソポタミアとエジプト、 中世のフィレンツェ、 現代のフィレンツェとニューヨーク、 すべての糸が繋がりながらエピローグへと向かっていきます。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

愛犬との想い出

ムーワ
青春
筆者が子どもの頃、愛犬と出会い愛犬と過ごした想い出を思い出しながら綴った作品です。 まだ今のようにSNSが盛んな時代ではなかったので写真が数枚残っている程度ですが、表紙はまだ子犬の頃の写真です。 遥か昔のことですが、一番筆者が記憶に残っているのは、愛犬との出会いと別れのシーンです。 人は人生の中で必ず出会いと別れのシーンがあります。学校では入学式と卒業式、親子の間では子どもが誕生した日と死ぬ時です。 人間、出会いと別れのシーンはいつまでたっても心の中で鮮明に記憶しているものです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...