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プロローグ ~で、結局何が始まるんですか?~
その5 紫々撫路世(ししぶ ろぜ)
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「こんちはー」
放課後になり、僕は真っ直ぐに部室に到着したが、部室には路世先輩の姿しかなかった。
路世先輩は、部室のパソコンで何やらゲームをしている様子だった。コントローラーを両手で持ち、画面を凝視していた。
「あれ? 路世先輩だけですか?」
「そうみたいだな。望子は先生に呼ばれてるみたいだし、一夜と紗琉は生徒会じゃないのか?」
一夜たちはともかく、大抵一番乗りで部室に来ている望子先輩がいないのは何だか珍しい光景だった。
と、僕は路世先輩が凝視している画面に目を向ける。
3Dグラフィックで作られたキャラクターがなめらかに動きながら、マップ上にいる他の人間を銃で狙撃して倒していくFPSと呼ばれる類のゲームだった。
「先輩、またFPSですか?」
と、呆れながら僕はそう尋ねた。
路世先輩は、こうして特にやることがなければ、部室のパソコンを使ってFPSゲームをしているのだ。
確かに、この部活は特にルールもないし、基本的個人の自由な活動をしてもいいが……。
「あぁ。今回はマルチプレイでな、前回、このゲームで全国大会で優勝ヤツと戦ってるんだ」
「そ、そんな人と!?」
意外だった。一体全体どうして路世先輩みたいな人が、そんな大物とこうしてネットワーク越しにFPSで対戦なんかしているのだろうか。
「誘ってきたのは向こうさ。俺はただ、その挑戦に乗っただけ」
「え…えぇ……」
更に驚きの発言だった。まさか、挑戦状を叩きつけてきたのは全国チャンピオンの方からだというのだ。
やがて激闘の末、勝利したのは路世先輩だった。相手とのチャット欄には、「降参」と短くメッセージが飛んできていた。
「ふぅ……、いい汗かいた……。そうだ、ケン後輩。良ければキミもやってみねぇか?」
「そんな! 僕みたいな下手くそが、全国チャンピオンに勝てるわけないじゃないですか!」
と、手を前に出して断る。そんな操作性がモノを語るゲームは、僕の大の苦手の部類なのだ。勝てるわけがない。
「まぁ、やってみなくてはわからねぇぞ。とにかく座ってみな」
先輩に勧められるままに、僕は路世先輩が座っていたイスに腰を下ろす。
と、僕は画面をよく見ると、画面左上に「PRACTICE」と書かれていた。それはまさしく、練習という意味の英単語で……。
「……まさか僕、先輩に騙されてました?」
先輩はくすり、と微笑みながら、
「面白いヤツだな、キミは」
放課後になり、僕は真っ直ぐに部室に到着したが、部室には路世先輩の姿しかなかった。
路世先輩は、部室のパソコンで何やらゲームをしている様子だった。コントローラーを両手で持ち、画面を凝視していた。
「あれ? 路世先輩だけですか?」
「そうみたいだな。望子は先生に呼ばれてるみたいだし、一夜と紗琉は生徒会じゃないのか?」
一夜たちはともかく、大抵一番乗りで部室に来ている望子先輩がいないのは何だか珍しい光景だった。
と、僕は路世先輩が凝視している画面に目を向ける。
3Dグラフィックで作られたキャラクターがなめらかに動きながら、マップ上にいる他の人間を銃で狙撃して倒していくFPSと呼ばれる類のゲームだった。
「先輩、またFPSですか?」
と、呆れながら僕はそう尋ねた。
路世先輩は、こうして特にやることがなければ、部室のパソコンを使ってFPSゲームをしているのだ。
確かに、この部活は特にルールもないし、基本的個人の自由な活動をしてもいいが……。
「あぁ。今回はマルチプレイでな、前回、このゲームで全国大会で優勝ヤツと戦ってるんだ」
「そ、そんな人と!?」
意外だった。一体全体どうして路世先輩みたいな人が、そんな大物とこうしてネットワーク越しにFPSで対戦なんかしているのだろうか。
「誘ってきたのは向こうさ。俺はただ、その挑戦に乗っただけ」
「え…えぇ……」
更に驚きの発言だった。まさか、挑戦状を叩きつけてきたのは全国チャンピオンの方からだというのだ。
やがて激闘の末、勝利したのは路世先輩だった。相手とのチャット欄には、「降参」と短くメッセージが飛んできていた。
「ふぅ……、いい汗かいた……。そうだ、ケン後輩。良ければキミもやってみねぇか?」
「そんな! 僕みたいな下手くそが、全国チャンピオンに勝てるわけないじゃないですか!」
と、手を前に出して断る。そんな操作性がモノを語るゲームは、僕の大の苦手の部類なのだ。勝てるわけがない。
「まぁ、やってみなくてはわからねぇぞ。とにかく座ってみな」
先輩に勧められるままに、僕は路世先輩が座っていたイスに腰を下ろす。
と、僕は画面をよく見ると、画面左上に「PRACTICE」と書かれていた。それはまさしく、練習という意味の英単語で……。
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先輩はくすり、と微笑みながら、
「面白いヤツだな、キミは」
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