上 下
4 / 142
プロローグ ~で、結局何が始まるんですか?~

その4 水巻智広(みずまき ちひろ)

しおりを挟む
「ちぃ、何読んでるの?」

 部室のソファーにちょこんと座りながら、本を読んでいるちぃに声をかける。
 ちなみにちぃと言うのは、僕の後輩である水巻 智広みずまき ちひろの愛称であり、僕は小学生の頃からずっとちぃと呼んでいた。

「はい、猫又先生の『花火』という作品です。なかなか面白いですよ」
「またそんな難しい本を……」

 ちぃはよく本を読んでいるが、大半はライトノベルを読んでいる。
 しかし、時折こうして少し難しい小説を読んだりしているので、本当に僕より年下なのか? と疑ってしまう。

「そんなに難しくないですよ。ライトノベルが読めれば、大抵こういう本を読めるようになります」

 ほへー…と、曖昧な返答を返す。
 僕もライトノベルは読めるが、流石にそういう小説は読めない。字がものすごく小さくて、時々どこを読んでいたのか分からなくなったり、目がチカチカしたりしてしまうからだ。

「やっほー、鍵くんにちぃちゃん! ってあれ? 何読んでるのー? みしてみーしてっ!」

 いきなり部室に入ってきた先輩は、ひょいとちぃが読んでいた本を取り上げ、ページをめくる。

「………………」

 そして、急にバタンと倒れてしまった。

「望子さん!?」「先輩!?」

 先輩はぐったりと床に倒れ、気を失っていた。目の焦点はずれ、口はぱっくりと開き、まるで「意識ここにあらず」という感じだった。
 と、そこへ路世先輩が部室へ入ってくる。

「おーっす…って! どうしたんだ、これは!?」
「そ、それが……望子さん、この本を読んで急に気を失ってしまって……!!」

 ちぃが本を見せると、路世先輩は「またか……」と、うんざりしたような表情を見せた。

「望子は小説を読むと、何故か急に気を失う持病を持ってるんだ。幸いにも、ライトノベルまでは大丈夫なんだが……。大丈夫。望子なら、五分を経たないうちに復活するよ」

 そんな変わった持病もあるんだなーと、ちぃと二人思ってしまうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...