どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

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プロローグ ~で、結局何が始まるんですか?~

その3 赤間望子(あかま もこ)

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 いつもの放課後。特にすることもなく、生徒会役員である、一夜まや紗琉しゃる以外の部員の姿があった。本を読んでいたり、ゲームを嗜んでいたりと、各自がてんで好きなことをやっていた。
 その中で望子先輩だけ、妙なことをしていた。

「……んしょ」

 椅子の上に爪先で立ちながら、天井に手を伸ばしていた。

「何してるんですか、先輩?」
「部室の蛍光灯変えてるの。でも身長が低くて届かなくって……」

 よく見れば、部室の蛍光灯が一本切れかかっていた。それにテーブルには、新しい蛍光灯が。
 鍵はそれを見て、状況を理解した。

「危ないですよ、先輩。僕がやりますよ」
「いいよー。そもそもこーゆーの私、部長のお仕事だし」

 年長者のプライドとかいうヤツだろうか。先輩はこういう時は絶対に自分でやると決めたらやるのだ。
 ぴょん、ぴょんと蛍光灯を取ろうとするが、身長が足りず、手が届いていなかった。

「机とか使わないんですか?」
「それが、近くに机なくって……ここまで持ってくるのもねぇ…」

 なるほど。蛍光灯をわざわざ変えるためだけに机を持ってくるのも面倒だ。

「じゃ、僕が先輩をお手伝いすればいいですよね?」

 僕はそのまま先輩の体を持ち上げる。

「わっ…! ちょっと鍵くん!?」

 特に体を鍛えているワケでもないが、意外と先輩を持ち上げるのは容易いことだった。

「こうすれば届くんじゃないですか? 早く蛍光灯変えちゃってください」
「いや…でもこの体制、すっごく恥ずかしいんだけど……」

 ふと、僕も今の状況を振り返る。僕は先輩の体を「たかいたかい」のポーズで持ち上げている状況だった。

「…………、あ」

 思えば僕もだけど、一番この状況で恥ずかしいのは先輩だった。一応、僕より先輩だし、それにこの部室に最年少であるちぃもいるのだ。

「だ、大丈夫です……私は何も見てませんから。何も見てませんから……」
一応、蛍光灯を交換することはできたが、今日は誰も口を開くことはなかった。
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