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プロローグ ~で、結局何が始まるんですか?~
その10 入部届
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昨日、先輩に部室の中へと案内され、色々と話を訊いたところ……
太鼓部とは、全国のゲームセンターで稼動しているリズムゲーム『太鼓の鉄人』を使って、全国の太鼓部と競い合い、その大会である『どん・だー』に出場し、優勝を目指している部活とのことだ。
未だ部員は二人しかいないが、部室にはすでに『太鼓の鉄人』の筐体が置いてあり、本格的な部活動のようだった。
その先輩……望子先輩と言うらしいが、先輩は話を進めていくうちに、僕らに入部届を手渡してきたのだ。
「…………」
僕は昨日渡された入部届を見つめながら、大きなため息を漏らした。まさか、こうして僕が部活の入部届をこの手に握ることがあるとは思ってなかったので、少々面食らっていた。部活とは何かと無縁な僕だったのに、今はこうしてあの謎の太鼓部の入部届が手元にあるのだ。
勿論、入るかどうかは自由だと言われたが……今こうして考えると、入らざるを得ない状況になっているような気がしてならない。
ちぃも僕と同じく、入部届を手渡されていたが……先輩の話を真剣に訊いているあの状態を思い返せば、入部するに違いないだろうと思った。
ちぃも僕と同じくして、中学の時は部活に入っておらず、何かと彼女も部活とは無縁だったのだ。そんなちぃが、あの太鼓部に入ると言い出すとなると、何だか明日にでも天変地異が起こるような気がしてならなかった。
「どうしたものか……」
「あ、先輩。ここにいたんですね」
と、窓の外に目を向けた矢先、ちぃに声をかけられた。
「うわっ!? ち、ちぃ!? どうしてここに? ここ二年生の教室だぞ!?」
「知ってますよ。あの優しそうな先輩が、教えてくれたんです」
と、ちぃが指差す方向には、黒い長い髪をなびかせたクラスメートが。
「あぁ……なんだ、一夜か」
彼女は一夜と言って、僕のクラスの委員長をしているのだ。面倒見もよく、それでいて生徒会副会長なのだから、学年関係なく優しく接している。
「それで、先輩はどうするんですか? 太鼓部」
「…………」
ちぃに迫られるが、僕は視線を逸らしてしまった。僕も一体、どうすればいいのかなんて分からない。別に入りたくない理由はないし、かといって入りたいとも思わない。
そもそも僕は、部活には興味もないし、この一年間入ろうとも思ったことがない。だけども、このままぼーっと高校生活を過ごしていくのも、何だか味気ない。一体、どうしていいのかなんて僕には分からなかった。
「……そうですか。それじゃ、仕方ありませんね」
と、ちぃは何を血迷ったのか、僕が机の上に置いていた太鼓部の入部届を取り上げたのだ。
「ちょっ……ちぃ!?」
「そんなに悩むんでしたら、私がこうしてあげますよっ」
と、ちぃは白紙だった僕の入部届に、僕の名前を書き始めたのだ。
「ちょっ……! まだ僕は入るなんて言ってないって……!」
ちぃからその入部届を取り上げようとしたが、時すでに遅し。ちぃは書き上げ、そのまま二年生の教室を後にしていったのだ。恐らくはあの望子先輩の元へと持っていったのだろう。
「……はぁ」
これで何度目かのため息を吐きながら、僕の太鼓部員としての部活動生活が今まさに始まろうとしていたのである。
太鼓部とは、全国のゲームセンターで稼動しているリズムゲーム『太鼓の鉄人』を使って、全国の太鼓部と競い合い、その大会である『どん・だー』に出場し、優勝を目指している部活とのことだ。
未だ部員は二人しかいないが、部室にはすでに『太鼓の鉄人』の筐体が置いてあり、本格的な部活動のようだった。
その先輩……望子先輩と言うらしいが、先輩は話を進めていくうちに、僕らに入部届を手渡してきたのだ。
「…………」
僕は昨日渡された入部届を見つめながら、大きなため息を漏らした。まさか、こうして僕が部活の入部届をこの手に握ることがあるとは思ってなかったので、少々面食らっていた。部活とは何かと無縁な僕だったのに、今はこうしてあの謎の太鼓部の入部届が手元にあるのだ。
勿論、入るかどうかは自由だと言われたが……今こうして考えると、入らざるを得ない状況になっているような気がしてならない。
ちぃも僕と同じく、入部届を手渡されていたが……先輩の話を真剣に訊いているあの状態を思い返せば、入部するに違いないだろうと思った。
ちぃも僕と同じくして、中学の時は部活に入っておらず、何かと彼女も部活とは無縁だったのだ。そんなちぃが、あの太鼓部に入ると言い出すとなると、何だか明日にでも天変地異が起こるような気がしてならなかった。
「どうしたものか……」
「あ、先輩。ここにいたんですね」
と、窓の外に目を向けた矢先、ちぃに声をかけられた。
「うわっ!? ち、ちぃ!? どうしてここに? ここ二年生の教室だぞ!?」
「知ってますよ。あの優しそうな先輩が、教えてくれたんです」
と、ちぃが指差す方向には、黒い長い髪をなびかせたクラスメートが。
「あぁ……なんだ、一夜か」
彼女は一夜と言って、僕のクラスの委員長をしているのだ。面倒見もよく、それでいて生徒会副会長なのだから、学年関係なく優しく接している。
「それで、先輩はどうするんですか? 太鼓部」
「…………」
ちぃに迫られるが、僕は視線を逸らしてしまった。僕も一体、どうすればいいのかなんて分からない。別に入りたくない理由はないし、かといって入りたいとも思わない。
そもそも僕は、部活には興味もないし、この一年間入ろうとも思ったことがない。だけども、このままぼーっと高校生活を過ごしていくのも、何だか味気ない。一体、どうしていいのかなんて僕には分からなかった。
「……そうですか。それじゃ、仕方ありませんね」
と、ちぃは何を血迷ったのか、僕が机の上に置いていた太鼓部の入部届を取り上げたのだ。
「ちょっ……ちぃ!?」
「そんなに悩むんでしたら、私がこうしてあげますよっ」
と、ちぃは白紙だった僕の入部届に、僕の名前を書き始めたのだ。
「ちょっ……! まだ僕は入るなんて言ってないって……!」
ちぃからその入部届を取り上げようとしたが、時すでに遅し。ちぃは書き上げ、そのまま二年生の教室を後にしていったのだ。恐らくはあの望子先輩の元へと持っていったのだろう。
「……はぁ」
これで何度目かのため息を吐きながら、僕の太鼓部員としての部活動生活が今まさに始まろうとしていたのである。
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