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プロローグ ~で、結局何が始まるんですか?~
その9 太鼓部とは
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次の日の放課後。僕とちぃはその謎の部活である『太鼓部』の目の前に、またしても立っていた。
僕もネットで調べてみようと検索してみたのだが、特にヒットすることはなく、ただ『和太鼓部』しか出てこなかったのである。
しかし、この学校に和太鼓部なんてものは存在せず、これまで和太鼓で大会に出た経歴はない、と担任の先生から言われたのだ。
つまるところ、誰も知らない謎の部活だと言うのだ。
「……で、先輩。何か分かりました?」
問いかけてくるちぃに対して、僕は「さぁ…」と腕を水平に上げた。この学校にちぃよりも一年長くいるというのに、こんな部活があったこと自体知らなかったのだ。
「……とにかく、入ってみましょう」
「え…?」
ちぃは決死の覚悟で、そのぼろそうな扉に手をかける。まさか、そこまでしてこの部活の謎を解明したいと言うのだろうか?
「待て待て待て……。何もそこまでしなくていいでしょ?」
何もそこまでして、この謎の部活について詳しく知ろうとは思ってなかった。そもそも、この学校にそんな部活があることすら知らなかったし、今更知ってからと言って別に問題にするほどではないだろう。それでもちぃは、この太鼓部について詳しく知りたい様子だった。
「ですが、このままでは気になるじゃないですか」
「でもさ……」
「どうかしましたか?」
と、言い合いをしている僕らに掛けられる声。凛としたその声はまさしく女性のトーンだった。振り返るとそこには、明るい茶色の髪をした女の子が立っていた。
緑色をした胸元のリボンから察するに、彼女は三年生。僕らより年上の先輩だ。
「い…いえ、別に……」
「あのっ! ここの部員の方をご存じないですかっ!?」
下がるかのように僕は、何もなかったかのように振舞うが、ちぃはそれでも尚、太鼓部について詳しく知りたいようで、とうとう先輩にまで問いかけてしまっていた。
「ちょっ……! ちぃ……!」
「あれ? もしかして、入部希望者? それなら歓迎だよ。どうぞ、部室の中へ」
と、先輩はその謎の太鼓部の部室の扉の鍵を開け、中へと案内する。……このままでは、ちぃはおろか、僕までもがこの太鼓部に入部することになってしまうそうだった。
「い、いえ……僕らは別に」
「はい、失礼します」
そのまま何事もなかったかのように立ち去ろうとしたが、ちぃはそれに反するかのように先輩の誘いに乗ってしまっていた。そのまま、部室へと入っていく。
……こうなってしまっては、もう後には引けなかった。
「…………」
仕方なく、僕もそのまま部室の中へと入っていくのだった。
僕もネットで調べてみようと検索してみたのだが、特にヒットすることはなく、ただ『和太鼓部』しか出てこなかったのである。
しかし、この学校に和太鼓部なんてものは存在せず、これまで和太鼓で大会に出た経歴はない、と担任の先生から言われたのだ。
つまるところ、誰も知らない謎の部活だと言うのだ。
「……で、先輩。何か分かりました?」
問いかけてくるちぃに対して、僕は「さぁ…」と腕を水平に上げた。この学校にちぃよりも一年長くいるというのに、こんな部活があったこと自体知らなかったのだ。
「……とにかく、入ってみましょう」
「え…?」
ちぃは決死の覚悟で、そのぼろそうな扉に手をかける。まさか、そこまでしてこの部活の謎を解明したいと言うのだろうか?
「待て待て待て……。何もそこまでしなくていいでしょ?」
何もそこまでして、この謎の部活について詳しく知ろうとは思ってなかった。そもそも、この学校にそんな部活があることすら知らなかったし、今更知ってからと言って別に問題にするほどではないだろう。それでもちぃは、この太鼓部について詳しく知りたい様子だった。
「ですが、このままでは気になるじゃないですか」
「でもさ……」
「どうかしましたか?」
と、言い合いをしている僕らに掛けられる声。凛としたその声はまさしく女性のトーンだった。振り返るとそこには、明るい茶色の髪をした女の子が立っていた。
緑色をした胸元のリボンから察するに、彼女は三年生。僕らより年上の先輩だ。
「い…いえ、別に……」
「あのっ! ここの部員の方をご存じないですかっ!?」
下がるかのように僕は、何もなかったかのように振舞うが、ちぃはそれでも尚、太鼓部について詳しく知りたいようで、とうとう先輩にまで問いかけてしまっていた。
「ちょっ……! ちぃ……!」
「あれ? もしかして、入部希望者? それなら歓迎だよ。どうぞ、部室の中へ」
と、先輩はその謎の太鼓部の部室の扉の鍵を開け、中へと案内する。……このままでは、ちぃはおろか、僕までもがこの太鼓部に入部することになってしまうそうだった。
「い、いえ……僕らは別に」
「はい、失礼します」
そのまま何事もなかったかのように立ち去ろうとしたが、ちぃはそれに反するかのように先輩の誘いに乗ってしまっていた。そのまま、部室へと入っていく。
……こうなってしまっては、もう後には引けなかった。
「…………」
仕方なく、僕もそのまま部室の中へと入っていくのだった。
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