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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その141 合宿 その8
しおりを挟む「あー……それじゃ、紅白戦を始めようか」
練習もある程度終わり、別れたチームでの紅白戦をやる時間となった。
模擬戦もいい結果になっていたし、僕らのチームのコンディションは完璧だ。
「なんだか自信満々だな、ケン」
「えぇ。こっちのコンディションは万全ですから。いい感じの模擬戦になると思うと、なんだか楽しくって……」
「そうだな。同じチームメイトとこうして戦うのは初めてだからな。お互いにメンバーのいい点や悪い点を見つけるのが目的だが……それを抜いたっていい練習になりそうだ」
何度か模擬戦をやってはきているが、今までが完全に個人でのものだったので、こうしてチームでの模擬戦はこれが初めてである。
「それじゃ、始めるか。それじゃそれぞれ一番手から勝負してくれ」
僕らのチームからはちぃが、向こうのチームからは一夜が、それぞれ一番手として対決することに。
「ちぃちゃん、お手柔らかに」
「はい。お互いにいい勝負にしましょう」
「準備はいいか? それじゃ始めてくれ」
路世先輩の合図で模擬戦が始まる。
……やはり、一夜も経験者とだけあって、その腕はなかなかのものだ。本当にしばらくやっていないとは思えない。
しかし、ちぃも負けてはいない。一番下とはいえども、遠慮なんて無用。一夜に負けずとちゃくちゃくとスコアを稼いでいく。
「……ちぃ、上手くなったな」
なんて、独り言をつぶやく。
最初の方なんて全然ダメで、バチを打つタイミングもかなり酷かったのに……今じゃしっかりとリズムを刻みながらしっかりと打てている。
難しい譜面を初期の頃にやらせれば、「早すぎます、無理です」なぁんて言ってたのに……今じゃサクサクと難なくクリアできるようになったからなぁ。
「……一夜、いい感じに仕上がってるわね。一番手としてはかなり厄介な相手だったわ。……やはり、アタシが一番手になるべきだったかしら」
「いや、ちぃでよかったと思うよ。……ちぃもしっかり成長してるし、経験者の一夜にしっかり追いついていってる」
しかし、それでも一夜の技術がちぃには備わっておらず、本当に少しの差……いやもう誤差とも言っていいくらいの差でちぃが負けてしまった。
「すみません……」
「いや、大丈夫。ちぃはちゃんとベストを尽くしてくれたし、よくやってくれたよ」
「そうね。一夜にしっかりついていけていたし。ナイスファイト」
「それじゃ、二番手。準備をしてくれ」
と、路世先輩。その声を聞いて準備し始める紗琉。
「それじゃ、次はアタシね。ここである程度差をつけておこうかしら。……どっかの誰かさんが大差つけられて負けないようにね」
「え? 僕、負ける前提なの?」
「ウソよ、ウソ。まぁ、アタシもしっかりとベストを尽くしてくるわ」
と、置き土産のように告げると、筐体の前に立つ紗琉。その相手は望子先輩だった。
「先輩、どうぞお手柔らかに」
「私だって負けないからね」
「よし、それじゃ始めてくれ」
模擬戦二回戦目の火蓋が切って落とされた!
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