140 / 142
第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その140 合宿 その7
しおりを挟む「よし、いい感じだな」
「そりゃーね! いつまでも後輩に負けてばかりの私じゃないよ!」
午前中の練習は、それぞれグループに分かれての練習だった。
片方が模擬戦をやり、もう片方は譜面に慣れる練習。勿論、ある程度練習したら交代するというシステムだ。
……午後から紅白戦をやるらしいので、今のうちにある程度練習しておかないといけない。
「凄いな、望子先輩……。いつまでものんきしてたわけじゃないんだな」
「ですね。どこかで隠れて練習してたんじゃないんですか?」
「説あるな、それ」
ちぃと二人で模擬戦の様子を見ながら、そんなことを話していた。
……確かに、いつもの望子先輩とは違うのが分かった。この人は、練習中と試合中のギャップが凄い違うのに、今回の練習中は試合中の望子先輩みたいだ。
「ほら二人とも。休憩は終わったわよ。練習再開するわよ」
「はい」「へーい」
紗琉にせかされながら、僕らも僕らの練習を再開する。
「とりあえず、私たちは譜面を覚えることね。何度かやっているし、ある程度は覚えれてると思うから、後は細かなタイミングの調整ね」
「そうだね」
僕らは次の試合の課題曲の譜面での練習を再開する。
部室とは違って、ここには筐体が三つあるのが一番の凄いところだろう。そのため、こうしてグループに分かれて練習できたのだ。
「……まぁ、ケンはよく譜面を覚えれているわね」
「そりゃ紗琉たちよりも早めに練習に参加していたしね」
「言ってもそんなに変わらないでしょ。私だってもうある程度は覚えれているわ」
なぁんて他愛もない話をしながら、ちぃの練習風景を眺めていた。
……ちぃもいい感じに仕上がっている。次の試合、誰が出場するのかまだ決まっていないので、こうして全員で練習しなくてはならないが、まぁそればかりは仕方がない。
UDYが三人チームのため、僕らも合わせて三人で試合をしなくてはならないのが「どん・だー」のルールである。
「……今回、蒼崎先生は誰を出場させるんだろうね」
「さぁ。あの人ってば、どこか掴めない部分があるから……」
それもそうだ。あの人の考えていることはあの人以外分からないくらい掴めない人だ。そのため、周りからは「不思議な先生」と称されている。
だが、その掴めない部分が一部の生徒に人気であるのが謎だ。確かに、個人的には面白い先生だと思うのだが……
「まぁ、ごちゃごちゃ言ってても仕方ないし、僕らは僕らのやれることをやっていこう……ぐぇっ!」
「ケン!?」
「ごめん、鍵くん! 私のバチがそっちに飛んで行っちゃった!」
「……どうしたらバチがすっぽ抜けていくのか、俺には理解できかねるぜ……望子」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに自分の恋も叶えちゃいます!
MEIKO
恋愛
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!
笑って泣けるラブコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。
四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜
八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」
「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」
「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」
「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」
「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」
「だって、貴方を愛しているのですから」
四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。
華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。
一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。
彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。
しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。
だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。
「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」
「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」
一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。
彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
透明な僕たちが色づいていく
川奈あさ
青春
誰かの一番になれない僕は、今日も感情を下書き保存する
空気を読むのが得意で、周りの人の為に動いているはずなのに。どうして誰の一番にもなれないんだろう。
家族にも友達にも特別に必要とされていないと感じる雫。
そんな雫の一番大切な居場所は、”150文字”の感情を投稿するSNS「Letter」
苦手に感じていたクラスメイトの駆に「俺と一緒に物語を作って欲しい」と頼まれる。
ある秘密を抱える駆は「letter」で開催されるコンテストに作品を応募したいのだと言う。
二人は”150文字”の種になる季節や色を探しに出かけ始める。
誰かになりたくて、なれなかった。
透明な二人が150文字の物語を紡いでいく。
表紙イラスト aki様


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる