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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その139 合宿 その6
しおりを挟む「……なんですか、これ」
全員が食堂に集められ、路世先輩からプリントを手渡された。
そこには今日の練習メニューがびっしり書き込まれており、運動部並みの特訓と思えるようなものばかりだった。
遠泳……山登り……果ては精神統一!?
「……なんでしょう、お寺か何かなんですかね」
「路世先輩の基準がよく分からないな……」
ちぃと顔を見合わせる。確かに「心・技・体」とは言うが、それを鵜呑みにしてる人がいるとはね……。
まぁそれでも、ちゃんと太鼓の練習を入れているとこはやっぱ太鼓部なんだな。
「路世ちゃん、ホントにこのメニューをこなしていくの!?」
「無論だ。昨日悔いなく遊んだからな。今日明日はきっちり練習する気だ」
「ヴェェ……」
望子先輩もやはり不満というか、なんだか納得いかない様子だった。……まぁこの人は基本的に体力を使うことすらしたくないんだろうけど。
「……すみません、路世」
と、メニューを見ながら何かずっと考えていた紗琉が手を挙げた。
「ん、どうした?」
「この練習メニューはあまりにも体力ばかり鍛えている気がするのですが」
「ん、まぁ、何事にもスタミナは必要だからな。これくらいこなして当然だろう」
「いえ。私たちはあくまで太鼓部なので、ここまで徹底的に体力づくりには専念しなくていいと思います」
おっと、紗琉!? ここでズバリと言ってしまうか!?
そのまま紗琉は言葉を続けた。
「そもそも私たちは野球部でもないですし、サッカー部でもありません。なので、あまり体力づくりに専念する意味がありません。そんなことに時間を割くのであれば、次の課題曲の練習や模擬戦、技術の向上に時間を使った方が有意義だと思います。ましてや、相手はUDYです。あの試合をこの目で見た以上、第一に重視することは技術の向上だと私は思っているのですが」
「ふむ……確かに紗琉の言う通りだな。じゃ、この練習メニューは作り直しだな。少し時間がかかるが、待っていてくれ。すぐに作り直してくる」
と、路世先輩はどこかへと去っていった。
「流石だな、紗琉。ちゃんと次の試合に向けてしっかり考え込んでいたんだな」
「まぁね。流石に次の相手が相手だし、ちゃんと太鼓部らしい練習を、と思っただけよ。それに……」
「それに?」
と、バツが悪そうに紗琉はこう言った。
「……私、遠泳とか山登りとか、そういう体力を使う練習ニガテなの」
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