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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その138 合宿 その5
しおりを挟む次の日の朝は早かった。路世先輩に起こされ、時刻は午前六時半。
何事かと思い、重い瞼をこすって起きたはいいものの、早朝からのランニングとのことだった。
確かに、「早起きは三文の時」とはよく言うが……これだけのために起こされたとなると、あまり得をした気分ではなかった。
「ふぅ……」
ランニングの時間も終わり、部屋に戻ると、僕は外の景色を眺めていた。……これから二度寝しようか、なんて考えたけれど、これからまた練習となるのならば寝れるわけがなかった。
流石夏だ。すでに太陽は高いところに昇っており、気温も朝とは思えないほどの暑さだった。
「……お腹減ったな」
朝食をとる前にランニングだったからな。そりゃお腹が減るのも無理はなかった。
汗をシャワーで流し、僕は食堂(のような場所)へと向かう。
「おう、ケン。今からメシか?」
すでに路世先輩が朝食をとっている最中だった。
「えぇ。……そもそも、朝食なんて用意されてるんですか?」
「いや、今回は俺しか身内がいないからな。基本的セルフサービスでやってもらうカタチにはなるな」
「そうですか」
やはり、朝食も自分で用意するしかなさそうだった。……まぁ、薄々そんな感じはしていたが。
だだっ広いキッチンに立つと、僕は冷蔵庫の中身を確認する。……うん、食材が不足していることはないので、ある程度マシな朝食を用意することはできるみたいだ。
温めたフライパンに、ベーコンと卵を落とす。無難にベーコンエッグでも作ろうと考えていた。
と、朝食を済ませた路世先輩がキッチンに入ってくる。
「そういや、ケンは自分でメシを用意するタイプなのか? よければ俺が用意しようか?」
「大丈夫ですよ。ある程度は自分でなんでもできますし」
「そうか。米はそこの炊飯窯にすでに用意されているから、食う分だけ茶碗にとってもらっていいからな」
「分かりました。ありがとうございます」
と、使った食器を流しにおくと、路世先輩はキッチンを後にする。
それと入れ替わりで望子先輩が入ってきた。
「おう、望子。……って、まだ眠そうだな」
「うーん……まさか、あんなに早く起きるなんて思ってなかったからねー……」
望子先輩の瞼は完全に落ち切ってはいたが、それでも意識だけはなんとか目覚めているようだった。
「望子先輩。とりあえず顔洗ってきたらどうです? 朝食は僕が先輩の分も用意しておきますので」
「んー……そうするー……」
と、生半可な返事を返し、先輩はとぼとぼと洗面所へと向かっていった。
「……先輩、まだ眠そうですね」
「まぁな。アイツは特に朝に弱いって言ってたからな」
望子先輩の意外な一面を垣間見た、合宿二日目の朝のことだった。
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