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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その135 合宿 その2
しおりを挟む「ありがとーございましたー」
私たちはコンビニを出る。
じゃんけんで負けた私と一夜と路世先輩だった。仕方なく三人で買い出しに出ていた。
……あそこでチョキを出していなければ、こんなことにはならなかったのに。
「……紗琉ちゃんってば、また自分の好きなのばかり」
「いいでしょ、別に」
「ははっ、まぁいいじゃないか」
ぶつくさ文句言う一夜を横目に、路世先輩は笑っていた。
……私がコンビニで好きなものばかり買うのはいつものことだろうに。
「でも、路世先輩ってば、なんなんですかあのチョキ。珍しいですよ、小指と人差し指でチョキだなんて」
「だからヘンではないだろ! 逆にカッコイイだろう!?」
思えば路世先輩のチョキはなんだか変わっていた。……たぶん、鍵がツッコまなければ誰もが気付かなかっただろう。
「路世先輩ってば、ヘンなチョキ出して負けてるし」なぁんて笑いながら言ってたし。……よくもまぁ、気づけたものだ。
コンビニの袋を片手に、私たち三人はビーチに戻る。残りのメンバーはまだ恐らくビーチにいるハズだ。別荘に戻ってさえいなければ。
まさか、路世先輩の家があんな土地を持っていたなんて知らなかった。……確かに、路世先輩の家計がお金持ちだということは分かっていたが、ここまでとは知らなかったのだ。
そして、その先輩の家の別荘(正しくは、元ホテル)で合宿を行うなんて……予想外だ。大穴だ。
「あら?」
と、一夜が何かに気付く。一夜の見る先には自販機があった。
「一夜? 飲み物はさっき買ったでしょ?」
「そうね。でも、この自販機……」
と、一夜は自販機のラインナップに指を指す。……おしるこジュース、抹茶サイダー、赤マムシドリンク、いちごドリアンジュース。どれも微妙なラインナップだ。こんな自販機必要なのだろうか?
「……私、今すっごいコト考えちゃったんだけど」
「奇遇だな。俺も面白いことを考えついていたところだ」
二人とも不快な笑みを浮かべながら、意気投合している。
……路世先輩はともかく、一夜の考えていることは容易に理解できた。
「……せめて一本までですよ。じゃないと、死人が増えるのは処理に困りますから」
「はーい」「おう」
返事をしながら、二人で自販機の前でその微妙なナインナップの中から一つを選抜する。
……こりゃ、勝ち組の誰か一人にこれを飲ませようという魂胆なのだろう。一夜を買い出しに行かせたのが運のツキだったなと少し思う。
一夜は昔から、こういうイタズラ心を持つ人間だった。何度こいつに驚かされたか、私もあまり覚えていない。
それが高校になって落ち着いたかと思えば……まだ直ってすらいなかった。むしろ、その感情を隠していたのだ。
最近そういったことしないなーと思った矢先にこれだから……。
「これで行きましょうか」
「そうだな」
二人とも、買うジュースを決めたようだ。お金を投入し、ボタンを押す。
ガコン。出てきたのは……
「……お茶漬けコーラねぇ」
……なんなんだそれは。最早飲み物なのだろうか。
確かに、「カレーは飲み物」とは聞くことがあるが……お茶漬けは飲み物ではないだろう。
ましてや、それと交わることがないであろうコーラとミックスしたもの。……作った会社は、どう血迷ったらそういう商品を作れるのだろうか。
「それじゃ、誰に飲ませるか帰りながら考えるか」
「そうですね」
二人は帰路につく。
……まぁ、なんとなーく予想はできているが……まぁいいか。
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