135 / 142
第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その135 合宿 その2
しおりを挟む「ありがとーございましたー」
私たちはコンビニを出る。
じゃんけんで負けた私と一夜と路世先輩だった。仕方なく三人で買い出しに出ていた。
……あそこでチョキを出していなければ、こんなことにはならなかったのに。
「……紗琉ちゃんってば、また自分の好きなのばかり」
「いいでしょ、別に」
「ははっ、まぁいいじゃないか」
ぶつくさ文句言う一夜を横目に、路世先輩は笑っていた。
……私がコンビニで好きなものばかり買うのはいつものことだろうに。
「でも、路世先輩ってば、なんなんですかあのチョキ。珍しいですよ、小指と人差し指でチョキだなんて」
「だからヘンではないだろ! 逆にカッコイイだろう!?」
思えば路世先輩のチョキはなんだか変わっていた。……たぶん、鍵がツッコまなければ誰もが気付かなかっただろう。
「路世先輩ってば、ヘンなチョキ出して負けてるし」なぁんて笑いながら言ってたし。……よくもまぁ、気づけたものだ。
コンビニの袋を片手に、私たち三人はビーチに戻る。残りのメンバーはまだ恐らくビーチにいるハズだ。別荘に戻ってさえいなければ。
まさか、路世先輩の家があんな土地を持っていたなんて知らなかった。……確かに、路世先輩の家計がお金持ちだということは分かっていたが、ここまでとは知らなかったのだ。
そして、その先輩の家の別荘(正しくは、元ホテル)で合宿を行うなんて……予想外だ。大穴だ。
「あら?」
と、一夜が何かに気付く。一夜の見る先には自販機があった。
「一夜? 飲み物はさっき買ったでしょ?」
「そうね。でも、この自販機……」
と、一夜は自販機のラインナップに指を指す。……おしるこジュース、抹茶サイダー、赤マムシドリンク、いちごドリアンジュース。どれも微妙なラインナップだ。こんな自販機必要なのだろうか?
「……私、今すっごいコト考えちゃったんだけど」
「奇遇だな。俺も面白いことを考えついていたところだ」
二人とも不快な笑みを浮かべながら、意気投合している。
……路世先輩はともかく、一夜の考えていることは容易に理解できた。
「……せめて一本までですよ。じゃないと、死人が増えるのは処理に困りますから」
「はーい」「おう」
返事をしながら、二人で自販機の前でその微妙なナインナップの中から一つを選抜する。
……こりゃ、勝ち組の誰か一人にこれを飲ませようという魂胆なのだろう。一夜を買い出しに行かせたのが運のツキだったなと少し思う。
一夜は昔から、こういうイタズラ心を持つ人間だった。何度こいつに驚かされたか、私もあまり覚えていない。
それが高校になって落ち着いたかと思えば……まだ直ってすらいなかった。むしろ、その感情を隠していたのだ。
最近そういったことしないなーと思った矢先にこれだから……。
「これで行きましょうか」
「そうだな」
二人とも、買うジュースを決めたようだ。お金を投入し、ボタンを押す。
ガコン。出てきたのは……
「……お茶漬けコーラねぇ」
……なんなんだそれは。最早飲み物なのだろうか。
確かに、「カレーは飲み物」とは聞くことがあるが……お茶漬けは飲み物ではないだろう。
ましてや、それと交わることがないであろうコーラとミックスしたもの。……作った会社は、どう血迷ったらそういう商品を作れるのだろうか。
「それじゃ、誰に飲ませるか帰りながら考えるか」
「そうですね」
二人は帰路につく。
……まぁ、なんとなーく予想はできているが……まぁいいか。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
曖昧なカノジョのメテオロロジー
ゆきんこ
青春
晴人は『ある能力』のせいで友達と踏み込んだコミュニケーションが取れない高校生。
夏休みの最終日にいつもの釣りスポットでおひとりさまを楽しんでいた晴人。
ガツンとくる強い引きは大物の予感! ところが自分の釣り糸が隣の釣り糸に絡まってしまい、心雨と名乗る少女と思わぬ交流をすることに。
17年間友だちナシ彼女ナシのボッチ高校生男子が、突然恋に落ちるのはアリですか?
訳アリな二人のちょっと不思議なボーイ・ミーツ・ガール!
°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°【それはカフェラテとカフェオレの違いくらいのこと】°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°


可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる