どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

文字の大きさ
上 下
134 / 142
第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~

その134 合宿 その1

しおりを挟む

「……路世先輩、本気にしちゃってますね」
「レクリエーションなんだけどなぁ……」

 僕とちぃは二人でそんなことを話しながら、他のメンバー四人が遊んでいるのを見ていた。
 望子先輩の提案でビーチバレーをやることになり、三年生チームと生徒会チームで対戦真っ最中だったのだ。

「なかなか、どうしてッ!」
「力みすぎなんだよ路世ちゃん。もっと力抜いてさぁ」
「ぬぅ……」
「大事なのは、自分らしく打つことだからね。上からサーブ打つより、下からサーブ打つとかなり安定するよ」
「なるほどな……下からか。それは考えてなかったな」

 と、路世先輩は望子先輩の提案通りにしたからサーブを打つ。ボールは放物線を描いて、紗琉たちのコートに落ちていく。

「えいっ」

 と、紗琉がボールを捌く。……なんだかんだ、普通にビーチバレーを楽しんでいるようだった。
 得点差もあんまり変わりないのも無理はない。ついさっき始めたばっかりだから。

「……なんだかんだ、普通に遊んでるね、僕ら」
「そうですね。合宿に来たとは到底思えないですよ」

 皮肉そうにちぃは笑みを浮かべながら言葉を漏らした。
 ……確かに、この光景を傍から見れば合宿だなんて、誰が思うだろうか。
 まぁそれでも、ちゃんと親睦を深めるという路世先輩の計画には合っているし、これでいいんだろうな。

***

 ある程度遊び尽くし、みんな完全に疲れている様子だった。
 ぐったりとそれぞれベンチに横たわる。

「誰ですか……ただのビーチバレーをあんなハードなものにしたのは……」
「ただのレクリエーションだったのに……どうして……」

 後から完全に遊びとは言えないくらいのハードなビーチバレーになっていた。
 特に路世先輩のせいだろう。あそこまで本気になるとは思ってなかった。それに負けず嫌いだし……一体何回の泣きの一回を僕らは受けたのだろうか。望子先輩も途中から完全に死んだ魚のような目をしていた。

「ところで皆さん、そろそろお腹が空きません?」

 と、僕が提案する。すでに陽は一番高いところまで昇っている。もうお昼の時刻になっているだろう。そろそろみんな、お腹が空く時間になっているだろうと僕はふと思った。

「ならば、あれしかないか」
「そうだね……」

 起き上がってみんなで輪になる。

「「「コーンビニじゃーんけん、じゃーんけん!」」」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!

M・K
青春
久我山颯空。十六歳。  市販の安いブリーチで染め上げた片側ツーブロックの髪型。これ見よがしに耳につけられた銀のピアス。腰まで下ろしたズボン、踵が潰れた上履き。誰もが認めるヤンキー男。  学力は下の下。喧嘩の強さは上の上。目つきも態度も立ち振る舞いまでもが悪い彼が通うのは、言わずと知れた名門・清新学園高等学校。  品行方正、博学卓識な者達ばかりが集まる学校には似つかわしくない存在。それは自他ともに持っている共通認識だった。  ならば、彼はなぜこの学校を選んだのか? それには理由……いや、秘密があった。  渚美琴。十六歳。  颯空と同じ清新学園に通い、クラスまでもが一緒の少女。ただ、その在り方は真逆のものだった。  成績はトップクラス。超が付くほどの美少女。その上、生徒会にまで所属しているという絵にかいたような優等生。  彼女の目標は清新学園の生徒会長になる事。そのため"取り締まり"という名の点数稼ぎに日々勤しんでいた。  交わる事などありえなかった陰と陽の二人。  ひょんな事から、美琴が颯空の秘密を知ってしまった時、物語が動き出す。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

へたくそ

MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。 チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。 後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。 3人の視点から物語は進行していきます。 チームメイトたちとの友情と衝突。 それぞれの想い。 主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。 この作品は https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています) 小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS にも掲載しています。

おてんばプロレスの女神たち ~プレジデント日奈子のサバイバル~

ちひろ
青春
 バンコクおてんばプロレスを創設し、自らも前座レスラーとして出しゃばるプレジデント日奈子(本名:佐藤日奈子)。本業は編集プロダクションの社長として、経営の二文字と格闘を続ける毎日だったが、そんな日奈子に倒産の危機が襲いかかった。青春派プロレスノベル『おてんばプロレスの女神たち』の番外編として、プレジデント日奈子の生きざまを追う。

処理中です...