どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

文字の大きさ
上 下
133 / 142
第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~

その133 強さを求め、僕らはここに来た!

しおりを挟む
 迎えた夏休み。
 そう。僕らは強さを求め……この地に舞い降りた!

「すまない、待たせたなケン後輩」
「おっまたせー!」
「すみません先輩。望子先輩がなかなか着替えるのに遅くなっちゃって」

 女子メンバー全員が水着に着替え終わり、それぞれビーチに向かってくる。
 ……まさか、路世先輩の家がリゾートビーチを持っているとは思ってもみなかった。
 路世先輩曰く、海の近くの土地を買い取ってホテルを経営したかったみたいだ。しかし、そこまで向かう船やらバスやらがあまりにも便が少なく、あまり利益を取れなかったこと。そのため、もう自分たちの私有地にするしかないとのことらしい。
 んで、その元リゾート地に僕らは合宿として到着していたのだ。

「しかし、どうして到着してすぐに海で泳ごうってことになったんですか」
「そりゃ、遠泳や砂浜走り込みで体力をつけるためだ。望子の提案ではあるがな」
「……それ、絶対遊びたいだけでしょ」
「そうなのか!?」
「普通気づくでしょ……。なんならもうすでにあの人遊んでますし……」

 ほら、と望子先輩の方を指さす。
 すでに先輩は海の中に入っては、海水と戯れていた。

「……俺は、アイツに騙されていたのか」
「そうですね」

 がっくりとうなだれる路世先輩。
 ……僕より一緒にいた時間は長いくせに、どうしてこういうところだけは気づかないのだろうか?

「まぁいいじゃないですか。まだ時間はたくさんありますし、今日一日くらい遊んでも大丈夫ですよ」
「そ、そうか……いや、しかし……」
「遊ぶことだって体力使いますし、遊びながらトレーニングしていくって方向で行けばいいんじゃないですか? それに路世先輩言いましたよね。親睦会も兼ねてって」
「そ、そういえばそうだったな……だったら今日一日くらい遊んでも問題ないよな」
「ですね」
「すまんなケン後輩。俺も行ってくる!」

 と、路世先輩も海に向かっていった。
 さて、僕はなにをしようか。
 みんなそれぞれに遊んでいるのだが……これといって僕はすることがなかった。
 何たってしばらく海に来たことすらなかったし、昔どうやって過ごしていたか覚えていなかったのだ。
 とりあえず辺りを見回すと、ビーチパラソルが置いてあったのでそこに入って、みんなが遊んでいる光景でも眺めていようと思った。

「……ふぅ」

 パラソルに入り一息つく。
 望子先輩と路世先輩は相変わらず、海水のかけっこしているし、ちぃは砂場で遊んでいるし、紗琉と一夜は僕と同じく別のパラソルの中で事前に設置されていたベンチに横たわっていた。
 ……日差しはとても強い。

「……海、か」

 なぁんて一人ぼそりと呟きながら、僕は雲一つない青空を眺めていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

へたくそ

MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。 チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。 後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。 3人の視点から物語は進行していきます。 チームメイトたちとの友情と衝突。 それぞれの想い。 主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。 この作品は https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています) 小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS にも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!

M・K
青春
久我山颯空。十六歳。  市販の安いブリーチで染め上げた片側ツーブロックの髪型。これ見よがしに耳につけられた銀のピアス。腰まで下ろしたズボン、踵が潰れた上履き。誰もが認めるヤンキー男。  学力は下の下。喧嘩の強さは上の上。目つきも態度も立ち振る舞いまでもが悪い彼が通うのは、言わずと知れた名門・清新学園高等学校。  品行方正、博学卓識な者達ばかりが集まる学校には似つかわしくない存在。それは自他ともに持っている共通認識だった。  ならば、彼はなぜこの学校を選んだのか? それには理由……いや、秘密があった。  渚美琴。十六歳。  颯空と同じ清新学園に通い、クラスまでもが一緒の少女。ただ、その在り方は真逆のものだった。  成績はトップクラス。超が付くほどの美少女。その上、生徒会にまで所属しているという絵にかいたような優等生。  彼女の目標は清新学園の生徒会長になる事。そのため"取り締まり"という名の点数稼ぎに日々勤しんでいた。  交わる事などありえなかった陰と陽の二人。  ひょんな事から、美琴が颯空の秘密を知ってしまった時、物語が動き出す。

あの音になりたい! 北浜高校吹奏楽部へようこそ!

コウ
青春
またダメ金か、、。 中学で吹奏楽部に挫折した雨宮洸。 もうこれっきりにしようと進学した先は北浜高校。 [絶対に入らない]そう心に誓ったのに そんな時、屋上から音が聞こえてくる。 吹奏楽部で青春and恋愛ドタバタストーリー。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸
青春
 特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。 しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?  さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?  主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!  小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。  カクヨムにて、月間3位

クルーエル・ワールドの軌跡

木風 麦
青春
 とある女子生徒と出会ったことによって、偶然か必然か、開かなかった記憶の扉が、身近な人物たちによって開けられていく。  人間の情が絡み合う、複雑で悲しい因縁を紐解いていく。記憶を閉じ込めた者と、記憶を糧に生きた者が織り成す物語。

処理中です...