どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~

その133 強さを求め、僕らはここに来た!

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 迎えた夏休み。
 そう。僕らは強さを求め……この地に舞い降りた!

「すまない、待たせたなケン後輩」
「おっまたせー!」
「すみません先輩。望子先輩がなかなか着替えるのに遅くなっちゃって」

 女子メンバー全員が水着に着替え終わり、それぞれビーチに向かってくる。
 ……まさか、路世先輩の家がリゾートビーチを持っているとは思ってもみなかった。
 路世先輩曰く、海の近くの土地を買い取ってホテルを経営したかったみたいだ。しかし、そこまで向かう船やらバスやらがあまりにも便が少なく、あまり利益を取れなかったこと。そのため、もう自分たちの私有地にするしかないとのことらしい。
 んで、その元リゾート地に僕らは合宿として到着していたのだ。

「しかし、どうして到着してすぐに海で泳ごうってことになったんですか」
「そりゃ、遠泳や砂浜走り込みで体力をつけるためだ。望子の提案ではあるがな」
「……それ、絶対遊びたいだけでしょ」
「そうなのか!?」
「普通気づくでしょ……。なんならもうすでにあの人遊んでますし……」

 ほら、と望子先輩の方を指さす。
 すでに先輩は海の中に入っては、海水と戯れていた。

「……俺は、アイツに騙されていたのか」
「そうですね」

 がっくりとうなだれる路世先輩。
 ……僕より一緒にいた時間は長いくせに、どうしてこういうところだけは気づかないのだろうか?

「まぁいいじゃないですか。まだ時間はたくさんありますし、今日一日くらい遊んでも大丈夫ですよ」
「そ、そうか……いや、しかし……」
「遊ぶことだって体力使いますし、遊びながらトレーニングしていくって方向で行けばいいんじゃないですか? それに路世先輩言いましたよね。親睦会も兼ねてって」
「そ、そういえばそうだったな……だったら今日一日くらい遊んでも問題ないよな」
「ですね」
「すまんなケン後輩。俺も行ってくる!」

 と、路世先輩も海に向かっていった。
 さて、僕はなにをしようか。
 みんなそれぞれに遊んでいるのだが……これといって僕はすることがなかった。
 何たってしばらく海に来たことすらなかったし、昔どうやって過ごしていたか覚えていなかったのだ。
 とりあえず辺りを見回すと、ビーチパラソルが置いてあったのでそこに入って、みんなが遊んでいる光景でも眺めていようと思った。

「……ふぅ」

 パラソルに入り一息つく。
 望子先輩と路世先輩は相変わらず、海水のかけっこしているし、ちぃは砂場で遊んでいるし、紗琉と一夜は僕と同じく別のパラソルの中で事前に設置されていたベンチに横たわっていた。
 ……日差しはとても強い。

「……海、か」

 なぁんて一人ぼそりと呟きながら、僕は雲一つない青空を眺めていた。
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