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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その130 UDY学園との接触
しおりを挟む「……凄い人数だな」
「そうですね……」
路世先輩と二人で会場に着くなり、ふと思ったことを口にしていた。
今日はメンバー全員と、次の対戦校である「UDY学園」の練習試合の会場へと足を運んでいた。
紗琉でさえも、あんなに警戒してるくらいの学校だ。どんな凄い実力を持っているのだろうか……?
「そろそろ始まるわよ。……って、あれ?」
「どうしたのさ、紗琉?」
「……二人? 確かメンバーは全員で三人のハズなんだけれど」
会場には、出場メンバーとして二人しか壇上に登場していなかった。
紗琉の言う通りであれば、もう一人いるハズなのに……。
「……みたいですね。『どんマガ』にも、インタビューも三人で受けてたみたいですし」
「じゃ、残りのもう一人は……?」
「そこに行ったんだろうな」
と、ふと聞いたことのない声。
振り返るとそこには、見たことであるようなないような……。
「市松和也さん!?」
紗琉はふと、僕らとは違う人の名を呼んだ。
そうだ、思い出した。この人、この顔……『どんマガ』で見たその姿。
そう。僕らの背後にいた人物は、あの「UDY学園」のメンバーの一人だった。
「ようこそ、恵比寿学園太鼓部の皆様。私たちUDY学園の練習試合へ」
と、彼はそう一言告げた。
「あ、あなたは……?」
「これは自己紹介が遅れたね。俺は市松和也。UDY学園太鼓部のリーダーを務めている」
「リーダー……しゃん?」
これが……UDY学園のリーダー。
「でも、どうしてリーダーである貴方がこの客席に?」
「あぁ。あくまで今回は練習試合だからね、他のメンバーから俺の出る幕ではないと言われてこの様さ」
「なるほど……。そういえば、僕らも名乗るのがまだだったね。改めて、僕らは海老津学園太鼓部、『b's』。僕はメンバーの一人である黒崎鍵です」
「私がリーダーの赤間望子です。こっちが水巻智広、紫々撫路世、小森江一夜、黄倉紗琉です」
「ほぅ。前回のメンバーから二人増えていると思えば……中学生の部で猛威を振るっていた彼女たちだったとはね」
僕らのことはおろか、紗琉たちの過去も知っているようだった。
「あまり敵とは言いたくはないが……それでも、そのくらいは調べておかないとね。そちらもある程度は俺たちのことを知っているようだしね」
と、和也くんは紗琉の方を見る。……確かに、紗琉は僕ら以上にUDY学園について調べ上げている。それも向こうには筒抜けだったうようだ。
「さて、そろそろ試合のようだね……。俺たちUDYの実力、その目に焼き付けてもらいたいものだ」
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