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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その129 眼鏡
しおりを挟む夏休みももう目の前まで来ている僕らは、次の本戦一回戦に向けて切磋琢磨と練習に励んでいた。
「一夜、もう少しスピードあげて! リズムは取れてるから後はしっかりスコア取ることだけに集中して!」
「分かったわ」
やっぱり経験者である紗琉と一夜が練習に参加してくれるだけでここまで心強いとは……。
それにブランクが空いていたとはいえ、僕らと同等かそれ以上のポテンシャルを秘めている。
「……凄いですね、紗琉さんたち」
「ホントだね。二人とも、やっぱり経験者だからだね」
ちぃとともに、二人の実力には驚かされていた。……流石中学生の時に本戦まで勝ち上がったまでの実力はあるな。
「……そういえば、望子先輩と路世先輩遅いですね」
「そうだね」
先輩二人はまだ部室に顔を出していなかった。
……まぁ今年受験だし、それで色々と進路について忙しいのだろう。来年は僕の番だし、進路についてもしっかり考えておかないと、と思った。
「すまない、遅くなった」
「ごめんね~」
と、噂をすればなんとやら。先輩二人が部室に現れる。
……ふと、僕は望子先輩の異変に気付いた。
「先輩……。眼鏡なんてかけるんですね」
「ふぇ? あー……そういえば見せたことなかったね」
そう。望子先輩はいつもと違う、眼鏡をかけた状態で部室に入ってきたのだ。
……先輩が眼鏡をかけてたなんて、まったく想像できなかった。だって先輩って、そんな風に見えないし。
「……なんか失礼なこと考えてない?」
「気のせいですよ、気のせい」
まるで僕の心を見透かしたかのように望子先輩は聞いてきた。
……なんなんだ、この先輩は。眼鏡をかけたら途端にエスパーになるとかそういう機能がついてるのか?
「でも確かに。私が眼鏡をかけたところ、路世ちゃん以外に見せたとこなかったね。どおー? 似合うー?」
その場でくるり、と回ってみる望子先輩。
「……いつもの望子先輩のイメージがありますからあんまり」
「紗琉ちゃんに同じくです」
「……もう少しおしとやかであれば、ですね」
紗琉、一夜、ちぃの三人はきっぱりと、「似合っていない」と言い張った。
「そ、そっかぁ……」
しょげる先輩。慰めようとなんとか言葉を探した。
「ぼ、僕は別にいいと思いますよ! いつもと違う先輩のイメージがあって、メリハリがあるというかなんというか……」
「鍵くん……」
まぁ確かに、いつものわんぱくな先輩とはちがって、ザ・上級生って感じがあっていいと思う。
知的かどうかは別として……それでも、別のギャップがあるというか……とにかく普通に似合っていると思う。
「あら……。鍵くんも同じ考えだと思っていたのだけれど……もしかして望子先輩みたいな人の方がタイプなのかしら?」
「そうなの?」
「タイプって……はぁっ!?」
いきなり何の話だよ!? どうしてそういう考えに至るかなぁ!!?
「そうだったの? 鍵くん?」
「先輩まで鵜呑みにしないでくださいよ! 別にそういう意味で言ったわけじゃないですから!」
どうしてそんな考えになるのだろう……? 弁解するのにかなり時間がかかったのはその後のことだった。
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