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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その125 創作ダンス
しおりを挟む「お疲れ様でーす……って、先輩なにしてるんですか?」
とある日の放課後。部室に入ると、望子先輩が飛んだり跳ねたり、奇妙な動きをしていた。よく見ると、望子先輩の前にはスマホが立てかけられており、そこから音楽が流れていた。
「あ、おつかれ~……おっとっと」
「さっきからなにしてるんですか、その奇妙な動きは……」
「なにって……ダンスだよダンス。次の愛育の授業で創作ダンスのテストがあるからさー。それにむけてのっ……練習っ……!」
あぁなるほど。その練習か……ってまだ納得できない僕がいた。
そもそも、ダンスならもう少し器用な感じで踊るものだ。しかし、先輩のやっているのはなんかこう……ホントに奇妙な動きとしか言いようがない。他に言い換えるなら……あ、そうだ。動画サイトにある「ゲッダン☆」ってヤツをもう少し大人しめにしたものだ。
「ここを……こう! いや違うか……。こうかな? これでもない……こう!」
先輩が関節を無視したかのようにヘンなポーズを取り始める。……どこをどうしたら、そんなとこが曲がるのだろうか?
そしてこれはダンスと呼べるのだろうか……? 周りから見たら、ただ先輩が奇怪なポーズをとりながら、スマホを眺めているとしか見えないのだが……。
「おーっす……って、望子。オマエまだあの創作ダンスの練習してんのか……」
「路世先輩、よくあれがダンスの練習だってわかりましたね……」
路世先輩が部室に入ってくるなり、望子先輩のあの奇怪な動きがダンスだとわかるなんて……。まぁ、長年一緒にいりゃそりゃ分かってしまうか。
「だって……。これで合格しなかったら、また居残りなんて……。私運動神経ないのに、こんなのって……こんなのって残酷だよぉ……」
「まぁ……オマエには無理難題だろうな。運動音痴だし」
と、路世先輩はカバンをソファーの上に置くと、望子先輩に近づいていく。
「……で、今度はどんなダンスなんだ」
「これなんだけど……動きが全っ然わかんないの!」
望子先輩は画面はそのままで、スマホを路世先輩に手渡す。
ちょっと洒落た洋楽とともに画面が動き出し、動画が再生される。
「……ふんふん、なるほどな」
「……これ、本当に望子先輩ができるんですか?」
それはあまりにも天と地ほどの差があった。画面の向こうの人はキレイに、かつ大胆にリズムにのって踊っている。ダンスがあまり分からない人でも動きがキレイなのは一目瞭然だった。
そんなダンスを、この運動音痴な望子先輩はやろうとしているのだ。流石の僕もこれは無理だろうとしか言いようがなかった。
「まずはこのポーズからだな」
と、路世先輩は動画を一旦止めると、望子先輩を立たせ、まるでデッサン人形のように体のパーツを動かしていく。
「ここをこうだ」
「こう……?」
「違う違う。こう!」
ぐいっ、とムリヤリ腕を動かす路世先輩。そして徐々に整っていき、しまいには画面と瓜二つのポーズを望子先輩はとっていた。
「おお~っ……」
「いいか。このポーズを体に覚えておけよ」
「分かった~」
「んじゃ、次だな。ここをこうして……」
なんだかんだこうして路世先輩のレクチャーが続き、今日の練習はほぼ自主練のようになっていった。
なお、望子先輩の創作ダンスは合格となり、路世先輩の指導が物凄くいいことを僕は知ることになった。
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