どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~

その119 揺れる想い、揺らぐ心

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 あの日の翌日。私は学校を休んでいた。

「…………」

 あの日の翌日。私は学校を休んでいた。
 生徒会長たる私が体調不良で欠席するなど、普通ではありえないことなのだが……今回ばかりは勉学に集中できるような状態ではなかった。
 一夜からも、心配のメッセージがスマホに届いていたのだが、既読すらつけずに放置していた。
 それほどまでに私は、病に侵されていた。……心の病に。

「…………」

 今でもあの言葉が、私の頭を永遠に響いていた。
 望子先輩の廊下でのあの出来事、私に投げかけられたあの言葉……。

『どうして……? 助っ人の時は、あんなに楽しそうに叩いてたじゃん!』

「……さい」

『久しぶりに見たよ! あんなに楽しそうに太鼓を叩いている人! それなのに、太鼓を叩かないなんてもったいないよ!』

「…るさい」

『なにか、別に理由があるんでしょ? だったら、あの時の助っ人なんて引き受けていない! そうだよね!』

「うるさいって言ってるでしょう!!!」

 枕をそのまま部屋のドアにぶつける。
 私は別に叩くことを楽しんでなんかいない!
 助っ人なんて本当は受ける気なんてなかった!
 二度と太鼓なんて叩くつもりはなかった!
 なのに……
 なのに、どうして先輩の言葉がずっと頭の中に響いてくるの!!!??

「……はぁっ……はぁっ……」

 ……分からない。
 私の本当の気持ちが分からない。
 先輩の言っていることが分からない。
 私のやっていることが分からない。
 私はそもそも、あの日の出来事を境に叩くことをやめていた!
 それが唯一の一夜への償いになると信じていたから!
 なのに……それなのにっ……!
 今の私はその償いを捨て、もう一度太鼓を叩きたいという感情が芽生え始めているっ!!

「違う……、違うっ……!!」

 私のせいで、一夜があんなことになってしまったのに……私は……私はっ!!
 ……また、太鼓を叩きたいという想いが芽生え始めている……!
 一夜をあんな酷い目に合わせたってのに!

「……ふざけるな。私はもう叩かない。私はあの出来事を境に決めたんだ」

 私はもう叩かない。あの助っ人の時は特別だ。
 もうこれからは絶対に太鼓を叩かない。一夜への償いのためにも。
 そして……大好きな一夜を守るためにも……!
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