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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その118 鬼勧誘のその後
しおりを挟むあれからというもの、望子先輩は紗琉の勧誘をサボって練習に参加してくれていた。
「おい、望子! リズムが乱れているぞ! もっと楽曲に集中しろ!」
「う、うんっ!」
望子先輩と路世先輩のマンツーマンの練習を見ながら、僕は小休憩を取っていた。
「……望子先輩、紗琉の勧誘諦めたんだろうか」
「さぁ、どうなんでしょうね。望子先輩のことですし、またふらっとやりそうな気はしますが」
と、ちぃは目を合わすことなく答えた。
……確かに、望子先輩のことだ。やると決めたからには絶対に曲げることはないような感じだ。
なのに、ここ最近はずっと練習に参加している。
「……なにかあったのかなぁ? それこそ、紗琉に泣かされたとか、『これ以上私をお誘いするのであれば、即刻廃部にしますよ!』とか言われて脅されているとか……」
「先輩のなかの紗琉先輩のイメージってなんなんですか……?」
でも、そうまでしないと望子先輩が諦めるなんてこと、絶対にしないはずだ。
うーん……。
「おし、次だ! ケン後輩! 望子と模擬戦! 望子がいなかった間の練習の成果をここで出し切ってしまえ!」
「路世先輩、そんな長く練習してないじゃないですか……」
立ち上がり、僕は台の前に立つ。
「へへ……。鍵くんと模擬戦なんて久しぶりだね」
「そりゃ先輩が紗琉の勧誘に熱心になってるからですよ。負けても泣かないでくださいね」
「うえぇぇ……酷いよぉ……」
……なんだ、いつもの先輩じゃないか。
別に紗琉になにか言われたのかと思ったのだが……別にそんなことはなさそうで少し安心した。
「それじゃ、スタート!」
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