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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その116 諦めない理由
しおりを挟む相変わらず、望子先輩は紗琉の勧誘を諦めてはなかった。
「さーて、今日も声をかけに行こっかなー」
かれこれもう二週間近くは勧誘に行っている気がする。
その都度、「今日もダメだったー」なんてヘトヘトになりながら帰ってきているが。
「望子先輩、そろそろ紗琉の勧誘諦めたらどうですか? 紗琉も紗琉で忙しいんですし、今は僕らもそれどころじゃないんですから……」
「いいや、紗琉ちゃんは絶対に太鼓部に必要な存在だよ! あれこそ、私たちが求めていた原石! 絶対に引き込んでやるんだから!」
うおー! と威勢のいい声をあげながら、先輩はまた勧誘に行ってしまった。
僕は呆れながら、仕方なく見送ると練習に取り掛かる。
「……どうしてそこまで頑張れるんかなぁ」
「そりゃ、望子の夢は『どん・だーでの優勝』だからな」
と、路世先輩は口をはさんだ。
「あいつの姉貴は、一度『どん・だー』で部員たちを決勝まで連れて行ったんだ。でも、決勝であと少しの差で負けてしまってな……。あいつは姉貴の夢だった『優勝』を自分の手で叶えたいと心に誓っているんだ」
「…………」
その言葉に、僕は言葉を失った。
あんなにぼさっとしている先輩だけど、そんな夢のために……。
「かなり悔しかったんだろうな、姉貴以上に。まだ一年だったのに、その日からあいつはひたすらに自主練ばっかりして、当時二年だった先輩たちを置いて、かなりの実力を持っていたからな」
「そんなことが……」
「少し力んでいるかもしれんが、アイツはアイツなりに叶えたい夢に欲望なんだ。だからあんなに無視されても諦めないんだろうな……」
自分だけじゃない、叶えられなかったお姉さんのためにも……先輩は、今必死に努力しているんだ。
尚更諦められないんだろうな……。
「さ、俺たちも練習だ。アイツが練習していない間にも、アイツよりも上達するように俺たちも頑張るぞ」
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