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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その115 鬼勧誘
しおりを挟むそれからというもの、望子先輩の勧誘は徐々にエスカレートしていった。
下駄箱を開ければ一日一回は手紙で『来たれ! 太鼓部!』とだけ書かれたものが入っていたり、ヤバイ時は生徒会室の扉にまでも刺さっていたり……。
……だから私はあの大会に助っ人として参加したくなかったのに。
私はもう二度と叩こうなんて思ってなかった。
……あの忌まわしき過去もあるし、今は何より一夜の傍で生徒会長としていたいからだ。
あの日の償いもこめて……。
「徐々に手紙の量が増えていってるわねー。望子先輩からのラブレター、いい加減にお返事でもしたらどうかしら?」
と、茶化すように一夜は笑みを浮かべながらそう言った。
「返事なんて返すつもりはないわ。そもそも生徒会が忙しいってのに……。それに私はもう二度と太鼓を叩くつもりはないもの」
「でも、この前の助っ人の時は引き受けたわよね」
「あっ、あれは……この学校のイメージを壊したくなかったからよ! 私はこの学校に誇りを持っているもの! あんなとこであいつらにリタイアされるのも腹ただしいったらありゃしないわよ!」
確かにそうだ。この前の試合で助っ人に行ったのも、単にこの学校のイメージを壊したくなかったからである。
……別に、もう一度太鼓を叩きたいなんて思ってなかった。きっとあれで本当に最後なのだ。
「……それに、私はこのまま生徒会長としてこの学校をよりよくしたい。それが今の私の夢なのよ」
「紗琉ちゃん……」
「ほら。ボサっとしないで、今日中に終わらせる書類があるでしょ。さっさと取り掛かって、下校時刻までにはちゃんと帰るわよ」
「はーい」
……そう。私はこれから先、太鼓を叩く予定なんてないし、叩くつもりもない。
本当に、あれ一回が最後なんだから……!
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