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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その109 プール掃除(Side生徒会)
しおりを挟む「暑いわねー……」
「そうね……」
眩しい炎天下のなか、私たちはとある事情により、プール掃除を太鼓部の連中とともに行っていた。
……わざわざ望子先輩が、こんなめんどくさいプール掃除を引き受けることはないと思っていたのにも関わらず、彼女は真っ先にそれを引き受けると言ってきたのだ。
きっとこの話にはウラがあると思った私は、自分たちもプール掃除に参戦し、その計画を暴こうという根端だ。
しゃかしゃかとブラシでプールをこすりながら、一夜は私に尋ねてきた。
「本当に望子先輩たちはなにか考えがあって、プール掃除を引き受けようとしているのかしら?」
「……それは分からないわ。けれど、こんなめんどくさい作業をただ普通に引き受けるなんておかしいわ。きっとなにか考えがあるのよ」
と、まさにその時だった。ケンと望子先輩が話している声が耳に入ってきたのだ。
「……そもそも先輩が、太鼓部だけでプール掃除をやるって言いだしたのが原因なんですからね。無謀なんですよ、その考えが」
「えー……。だって、最近暑いじゃん。だから少しでも涼むようにって……」
「……本音は?」
「掃除した後、プールで泳ぎたいなーって」
「はぁ……」
と、ケンはため息を吐きながら掃除を再開する。その光景を見ながら私は開いた口が塞がらなくなっていた。
……まさか、そんな単純な考えのためだけにプール掃除を引き受けたのだろうか……? いや、絶対にまだ他に理由があるに違いない。絶対そうだ!
「……望子先輩って、意外と単調な考えしかしないって鍵くん言ってたからもしかしたら本当かもしれないわよ?」
「えぇ……」
まさか、本当にたったそれだけの理由のために掃除を引き受けたのだろうか……。それならば、今まで私が散々推測して、わざわざ生徒会の仕事を早めに切り上げてプール掃除を手伝っているこの行為はムダだったってことになるのだろうか……?
「そうみたいね」
「即答すなっ! あーあ……私、なんのためにこうして太鼓部と炎天下のなか、プール掃除してるんだろ……」
こんなことにならなければ、今頃涼しい生徒会室でプリント類の整理をしながら一夜と無駄話しつつ、作業できたというのに……。
「……ドンマイ、紗琉ちゃん」
「えぇ……。こんなに空回りしたのは初めてよ……」
がっくりと項垂れる。……一体私はなんのためにここにいるのか。その目的でさえも忘れてしまういそうなくらいだった。
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