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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その108 プール掃除(太鼓部Side)
しおりを挟む「暑ーい」
「ガマンしてくださいよ、先輩……」
外の眩しい日差しを浴びながら、僕ら太鼓部はプール掃除を行っていた。
すでに授業も半日までとなっており、午後からは三者面談などが開催されている最中だった。
僕らは望子先輩の提案により、生徒会に頼んでプール掃除をやっているところだったのだが……。
「でもまさか、生徒会がプール掃除をしなくちゃいけないなんてなぁ」
「そうですね。完全に私たちに任せる形になるとばかり思ってました」
ちぃと路世先輩が紗琉と一夜のほうを見ながらそう呟く。
そう。望子先輩の説明によれば、僕らだけでプール掃除だと聞いていたハズなのに、当日になって生徒会もプール掃除をしなくちゃいけないと説明が加わったのだ。
「えー、だって一夜ちゃんそう言ってたよー?」
「きっと先輩の聞き間違いなんじゃないですか?」
先輩のことだ。どうせ聞き間違えていつの間にか生徒会も加えた僕らで掃除するのではなく、僕らだけでプール掃除をすることにすり替わっていたのだろう。
まぁ、先輩の聞き間違いはいつものことだ。気にすることはない。
「えぇ……」
「でもまぁ、こうして紗琉たちが手伝ってくるのはありがたいよね」
と、紗琉たちのほうを振り返りながら、僕はそう呟いた。
確かに、僕ら太鼓部だけでプール掃除をするとしても四人でやることになる。つまりは人手不足なのだ。
そんななか、紗琉と一夜が加わってくれたことにより、なんとか六人でプール掃除をすることとなり、人手不足を補うことができたというわけだ。
「……そもそも先輩が、太鼓部だけでプール掃除をやるって言いだしたのが原因なんですからね。無謀なんですよ、その考えが」
「えー……。だって、最近暑いじゃん。だから少しでも涼むようにって……」
「……本音は?」
「掃除した後、プールで泳ぎたいなーって」
「はぁ……」
まぁどうせ、そんな理由で引き受けたのだと思ってはいたが、まさか本当だったとは……。やっぱり望子先輩の考えは単調だ。誰にだってわかる。……まぁそこが望子先輩のいい所なんだとは思うけど。
「おーい、ケン後輩、望子。口ばっかり動かさないで手も動かせよー!」
「はーい」「はーい」
路世先輩に注意されながらも僕らは、生徒会と協力し、なんとかプール掃除を済ませたのであった。
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