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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その107 大人びている?
しおりを挟む夏休みまでもう指で数え切れるほどになった今日のこと。
私は一夜とともにいつも通り生徒会室で作業をしていた。
「……もう夏休みね」
「そうねぇー」
抜けたような声で答えてくる一夜。最近ずーっとこうして生徒会室に籠って作業ばかりしているので、正直退屈だったのだ。
夏休みに入るのだから、そりゃ生徒会もやることは限られていく。だからこそ今は、文句をブー垂れる前に手を動かすコトを優先させられていた。
「あ、紗琉ちゃん。そのプリントこっちに渡してくれない?」
「ええ、いいわよ」
手渡しでとあるプリントを一夜に渡す。それが一体なんなのかは私も知らないが、きっと一夜の今やっている作業で必要なんだろうと察した私は、特になにも言わずに手渡した。
「ごめんなさい。たまーにプリント類が交ってたりするのよ」
「あー……どうせ他の生徒会の人のせいでしょ? いい加減にプリントくらい整理整頓してほしいものね」
ため息交じりに愚痴をこぼす。今年になってからというもの、私たち以外の生徒会役員たちはプリントを整理しなくなってしまっていたのだ。
入って間もない頃はちゃんとしていたのに、もうこの生徒会に慣れてきたからなのか、それとも単にめんどくさいからか、真偽は分からない。
「そうね。たまーに間違って他のプリントが混ざってて一度、先生たちに怒られたものね」
「そういえばそんなこともあったわね……。思い出すだけでなんだかムカムカしてくるわ……」
あの時は私たちの不祥事でもないのに、どうして生徒会長が謝罪しなくちゃいけないのか分からなかった。まさに理不尽だと思った時だ。
「生徒会長ってこういう時が、立場が悪いのよね……」
「でも、生徒会長になりたいって言ったのは紗琉ちゃんよ?」
「それは……そうだけど……」
確かに、生徒会長になりたいといったのは私だが……まさかこんなことになるとは思ってなかったので、正直その時だけは生徒会長になったことを後悔したものだ。
「でも紗琉ちゃん。昔よりもしっかりしてきた気がするわ」
「……いきなりなに言い出すのよ」
「昔よりもなんだか大人びてきたっていうか……しっかりしてきて大人っぽくなってきた気がするの」
「……そんな無駄口叩く暇あったら、手を動かしなさいよね」
「はーい」
と、一夜は止まっていた自分の仕事に手を付け始める。しかし私は、一夜のその言葉に惑わされながら自分の作業を進めていた。
……昔よりも大人っぽい。今の自分と、一夜とともに「どん・だー」を目指していたあの頃の私はどう変わっているのだろうか。
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