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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その106 望子先輩の問題
しおりを挟む夏休みまでもう残り僅かだというこの時期に、事件は起きた。
「補修だぁ~~~!?」
路世先輩は部室内で素っ頓狂な声を上げた。その目線の先には申し訳なさそうに正座をする望子先輩。
「うん……」
「ウソだろお前! いつもなら補修なんて受けなくていいのに、どうして今回補修を受けなくちゃいけないんだよ!」
路世先輩が必死になって望子先輩に問いかける。
そう。望子先輩は元々頭はいい方だ。それは路世先輩も僕もちぃも知っていた。仮にも廊下に成績順位者として張り出されるほどだ。
それなのに、どうして今回補修を受けることになったのか、それが不思議でたまらなかった。
「それが……分からないの。点数はそこそこ良かったのに、先生から言われたんだよ……」
「先生って……あの数学のか!?」
望子先輩は静かにこくり、と頷いた。先輩の補修は数学だけらしく、望子先輩のニガテとする教科らしいが……それでも平均以上は取っていると路世先輩は言っていた。
そんなに成績がいいのに……どうして補修を受けないといけないのか、ますます分からない。
「私だって聞きたいよ! でも先生は『自分の胸に聞いてみろ』ってしか答えないの!」
「自分の胸にって……心当たりがないから聞いてるのに」
望子先輩は先生に言われたままの言葉をそのまま告げるが、路世先輩は納得がいっていない様子だった。
そりゃそうだ。こんなにも成績がいいというのに、どうして補修なんか受けないといけないんだ。
それに「どん・だー」の試合ももうじき。時間も限られているのに、そんな中で補修なんて受けている余裕がなかったからだ。
「間違いじゃないんだよな……?」
「うん。何度も聞き返したけど、先生は私も対象だって……」
くそ……、と呟きながら、路世先輩は下唇を強く噛んでいた。折角いいペースで練習に取り組んでいたというのに、これじゃあこれからの練習計画に支障が出てしまう。
そして何より、望子先輩の腕前も下がってしまう。音ゲーってのは地道にこつこつとやっていないと、腕前が下がってしまうものだ。
「でも、たった一日じゃないですか」
「その一日が重要なんだよ。一日練習できないってなると、なかなか辛いんだぜ?」
と、路世先輩は訴えてきた。そういえば、体育大会の時もかなり空けていたからこそ、みんな腕前が下がっていた。
「だからこそ、なんだよ。なぁ、望子! どうして補修なんて受けないといけないんだよ!」
「そんなこと言われてもって……あ、」
と、まるで今思い出したかのように声を漏らす望子先輩。
「……どうした、望子? なにか心当たりでもあったか?」
「そういえば……数学の授業の時間、私ほとんど寝てばっかりだったから、もしかして授業態度のせい……?」
「……あ、」
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