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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その103 夏休みの予定
しおりを挟む「ふぅ~……今日は仕事がなくて平和ねー」
と、生徒会室で自分の淹れた粗茶をすすりながら、一夜は独り言のように呟いた。
私は出された課題を生徒会室で済ませながら、その独り言を聞いていた。
今日は何故か珍しく、生徒会としての仕事がなかったのだ。昨日のうちに仕事を済ませたせいなのかは分からないが。
「……ま、たまにはこういう日もあっていいんじゃないの? いつも生徒のためにところ狭しと仕事してんだし、たまにゃ生徒会にも休息が必要なのよ」
「そうねー。はー……緑茶の美味しい季節になったこと」
「……アンタ、よく平気で熱い飲み物飲めるわね」
すでに室内の温度は冷房が効いているにも関わらず25度。こんな真夏ともいえる季節に熱い飲み物を飲もうだなんて無謀すぎる。
「お茶は別なのよー。やっぱりお茶は熱いのが一番よ」
「……わかったわ。今度アンタに淹れるお茶だけ特別アツアツなのを用意してあげるわ」
そんなことを返しながらも、私は自分の課題を済ませていく。テストが明けてしばらくすれば夏休みだというのに、これじゃ夏休みの課題なんてどれだけ出されるのか……考えるだけでも頭が痛くなってくる。
「そういえば、紗琉ちゃんは夏休みの予定はもう考えてあるのかしら?」
「んなわけないでしょ。そういうアンタこそ、どうせいつも通りの店の手伝いとかいうんじゃないでしょうね?」
一夜の家は洋菓子店なのだ。この街じゃ有名であり、よくお客も来店するらしい。私も何度か遊びに入ったことはあるが、確かに繁盛はしている様子だった。
長期休暇中、一夜はその店の手伝いをしており、折角の休暇を潰すかのように働くのだ。……これじゃホントに長期休暇なのかさえ分からない。
「そうね。でも今年は他のバイトの人も入ってくれたみたいだし、一応暇な時間はあるのよ」
「へぇ……珍しいわね。アンタのとこにバイトが入るだなんて」
「そろそろお父さんたちもいい歳だからかしら……最近仕事が終わるとすぐに寝ちゃって、きっと老化が始まってるんだわ」
「……自分の親になに言ってんだか、アンタは」
まぁ、そういうことらしく、今年は例年とは違い、一夜にも時間はあるらしい。
「だからね、紗琉ちゃんとどっか出かけようかなと思って」
「言うと思ったわ。……毎年誘ってくるわよね」
まぁ、去年までは家が忙しくてその計画も全部パーになってたんだけど。
「今年こそ、紗琉ちゃんとともに海に行くわよ!」
ぐ、と拳を握りしめながら、気合いの入ったような口調でそう宣言した。確か去年も一昨年も同じことを言っていたような気がする……。
「そりゃそうよ! なんたって紗琉ちゃんと二人だけで海に行くのは私の夢なんだから」
「夢が小さいわね、アンタ……」
でもまぁ、こうして一夜も時間があるんだし……今年こそは、一夜とともに何処かへ出かけたいとは私も思っていた。生徒会の仕事で忙しかったし、たまには二人でのびのびと羽を伸ばしたいものだ。
しかも、今年も一夜のほうから誘ってきているし、これはチャンスだと私は感じた。
「そうね、私は全然構わないわ。行き先のほうは一夜におまかせするけど」
「任せなさい! 私たちにピッタリな旅行先をサーチしておくから!」
どん、と胸を叩く一夜。……なんだかんだ言って一夜は頼りがいのある幼馴染だと痛感してしまう。
確かにどっか抜けてるし、結構ドジするけれども……それでも彼女は私以上に頑張っているんだ。それは私が一番に理解している。
だからなのだろうか……。私が生徒会に入ろうとした時に、一夜も一緒に誘ったのは。
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