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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その97 自由気ままな部長
しおりを挟むいつもの練習時間。僕らは次の三回戦に向けて、練習に励んでいた。
「どうですか、路世先輩?」
「そうだな……。大体のリズムも掴んできているし、何よりミスがだいぶ減ってきたな。上達したんじゃないのか?」
と、珍しく路世先輩に褒められる。僕もこの部活に入って三か月は経っているのだ。このくらい上達していないといけないが、今はこうして褒められるのがとても嬉しかった。
「そういうちぃもしっかり練習を積んでたから、かなり上達したな」
「いえ、路世先輩の教えが良かったからこそ、ここまでこれたんですよ」
ちぃはそう、平然とした表情でそう返すが、あれは内心物凄く嬉しがっているのだ。
小さい時からずっと一緒にいる僕だからこそ分かることだった。
「っと、そういえば望子先輩遅いですね」
「そうだな……。どこで油売ってるんだか……」
そう。おつかいに行ったきり、望子先輩は帰ってきていなかった。もう部室を出て、十五分以上は経っているというのに、未だに帰ってくる気配はなかった。
望子先輩のことだし、どこかでまた誰かと話し込んでいるのかもしれないが……それにしては遅すぎる。
「探してきた方がいいですかね?」
「いや、このまま待っていよう。どうせ望子のことだ。ボロボロになって帰ってきたりするかもしれんからな」
確かにそれは大いに有り得た。こんなに遅いということはもしかすれば、ソフトボール部やフットサル部のお世話になっているのかもしれない。
望子先輩におつかいを頼むと、たまに泥んこで帰ってきたりする時がある。その時は決まって他の部に混ざって遊んで帰ってきた時なのだ。
この前なんかテニス部にお邪魔しており、制服のポケットからはテニスボールが出てきたこともあった。
「……ホント、自由人だよな。望子って」
「そうですね……」
路世先輩と二人、「あはは……」と苦笑しながら顔を合わせた。
流石に大会も三回戦まで近づいているということもあってか、望子先輩に限ってそんなことはしないだろうとは思っているが……なんだか不安だった。
と、そんなコトを思っていると、部室の扉が開く。……望子先輩だった。制服は特に汚れておらず、他の部のお邪魔になった形跡はなかった。
「望子! 一体なにしてたんだ!」
路世先輩はまるで望子先輩の母親のように問いかけた。
「ちょっとコンビニまで。ほら、新発売のジュースがあったでしょ? あれがどうしても飲みたくて買ってきちゃった!」
なんとも自由気ままな部長だった。
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