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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~

その96 生徒会のお仕事

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 その日。いつも通り、私は生徒会の仕事をこなしていた。

「だから何度も言っているでしょう。部室にクーラーをつけてしまえば、この学校の電力がバカになりません」
「ですが、このままではこれからの夏にどう対応していけばいいのですか」
「そこを私ども、生徒会と理事長とで話し合いをして検討すると言っています。なので、もうしばらく時間を……」
「時間時間って、結局は解決になってないじゃないですか」

 最近になって、部室にクーラーをつけろと言ってくる部活が多くなった気がする。
 すでに季節は夏であり、確かに猛暑の続く日が多くなっている。が、それでも一部室に一台クーラーをつけるのは流石に困難だった。
 なんとか理事長と話をしてみないと分からないのに、どうしてかそう説明しても、この部活だけは引き下がらなかった。

「解決にはなりませんよ。何故ならまだ話し合っていないのですから」
「じゃあ、いつになれば話し合ってくれるのですか」
「未定です。理事長の都合もありますし、私たち生徒会だって忙しいのですから」
「それじゃ意味ないじゃないですか」

 そうワガママを言われても仕方ない。理事長だって忙しいし、当然生徒会も忙しい。互いの都合が合わない限りはこの話は一向に進むわけがないのだ。
 それまで待ってくれと言っているのに、どうもこの部活だけは聞き分けが悪かった。

「それでは、貴方たちの部活は試合をする時、相手側の都合を考えて試合日程を決めないのですか?」
「え、あ、いやそれは……」
「それと同じです。互いの都合が合わない限り、私たちも話し合おうとしてもムリな話なのです。だから、それまでもうしばらく待ってはもらえませんか?」
「……ち。分かったよ。悪かったな、急かすようなこと言って」
「いえ。このような事態はもう慣れていますから」

 すました顔で相手側の顔を見る。すでにその表情は反省の色を見せており、もう急かすようなことは言わないような感じだった。

「……邪魔したな」
「いえ。またなにかあればいらしてください。いつでも話は聞きます」

 そう告げると、その部活は生徒会室を去って行った。それを確認すると、私は深いため息を漏らした。

「ふぅ……。今回ばかりはかなり面倒な部活動に目をつけられたものだわ」
「大丈夫、紗琉ちゃん。はい、麦茶」
「ん、ありがと」

 一夜の準備してくれた茶を一気に飲み干す。カラッカラに渇いた喉を、キンキンに冷えた麦茶が喉を通っていき、完全に喉が生き返った。

「ふぅ……。しっかし、どうしたものかしらね。部室に一台クーラーって……学校の電力超えてしまうっての」
「そうよね。ただでさえ教室に一台ずつつけてるのに、それ以上つけてしまっては容量オーバーしてしまうものね」

 それに特別教室もクーラーは完備されている。もうこれ以上つけてしまえば、確実にこの学校は停電のオンパレードとなってしまうだろう。
 だからこそ、私たち生徒会だけで決めることはできないのだ。なんとか理事長と相談し、そこからどうするかを決めなくてはいけなかった。

「しっかし暑いわねぇ……。今気温何度?」
「えーっと……三十度超えてるわ」

 そりゃ暑いか……。まだ七月だというのに、こんなに暑けりゃ八月なんてたまったものじゃないだろう。

「まぁいいわ。で、今度の仕事はなにかしら?」
「そうだったわ。意見箱にまた色々と入ってたから、それについてのコメント返しがあったわ」
「……それも? まぁ生徒の意見を聞くのが生徒会の仕事だしね。いいわ、早めに終わらせましょうか」

 一夜とともに私は意見箱に入っていた用紙一枚一枚にコメントを書いていく。生徒の意見を聞き、先生たちと相談する。それが生徒会の仕事だ。
 先生と生徒の壁は非常に分厚く、どうしても意見することができなかったりするものだ。それを繋ぐために、私たち生徒会が存在するのだから。
 だからこそ、生徒一人ひとりの意見を聞く。そのことだけを大事にしながら、この暑い中仕事をしていくのだった。
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