93 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~
その93 背後に潜む影
しおりを挟む「……ふぅん。これがあいつらの実力か」
ため息交じりに呟きながら、その光景を見つめる一つの影。
それが見ているものは「どん・だー」予選第二回戦である海老津学園こと、「b's」対桜ケ丘学園の試合である。
序盤は桜ケ丘学園が優勢であったものの、後半戦で海老津学園が一気に追い上げ、すでに結果は見なくても分かる程度だった。
「……でもまぁ、このままじゃ本戦になんか行けるわけないか」
ふん、と鼻をならしながら踵を返す。彼女もまた、彼らの実力を十二分に知っているものの、彼ら海老津学園太鼓部を認められなかった。
それはかつての自分たちの影を照らし合わせているかのような……。
「……ち。なんでこんなところまで来て、大嫌いな太鼓の鉄人の試合なんか見ないといけないのか」
自分から足を運んだのに、こんなことを言うのもアレだが……正直自分は「太鼓の鉄人」が大嫌いだ。
イヤな過去を思い出し、自分の不甲斐なさを感じさせるからだ。 以前は沼にハマっていたかのようにやっていたのに、あの事件以来嫌いになってしまったのだ。
だからこそ、自分の学校に太鼓部なんて必要ないと思ったし、何度も潰してやろうかと思った。でも、彼らはその障害をなんとも思わずに乗り越えていったのだ。
……あいつは言っていた。「今の太鼓部こそ、これからの希望になる」と。だが、私はそうは思えなかった。
私たちの時と同じ二番煎じになるとしか思えない。このままいけば、確実に本戦一回戦で潰れてしまうだろう。
そんなことにならないためにも、私は何度も忠告したハズ。それなのに彼らは私の話に耳を傾けることはなかった。
「……まったくね」
試合の結果はもちろんのこと、彼ら「b's」の勝利となっていた。「b's」のメンバーは勝利したことをチームで喜んでいた。
……その笑顔がいつまで続くのか。そんなことを思いながら会場を後にする。
「……これが『希望』だなんて、笑わせてくれるわね……一夜」
こんなのは『希望』でもなく、『絶望』だ。そう思うのははたして、私だけなのだろうか……?
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
へたくそ
MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。
チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。
後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。
3人の視点から物語は進行していきます。
チームメイトたちとの友情と衝突。
それぞれの想い。
主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。
この作品は
https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています)
小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS
にも掲載しています。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
雪花 ~四季の想い・第一幕~
雪原歌乃
青春
紫織はずっと、十歳も離れた幼なじみの宏樹に好意を寄せている。
だが、彼の弟・朋也が自分に恋愛感情を抱いていることに気付き、親友の涼香もまた……。
交錯する想いと想いが重なり合う日は?
※※※
時代設定は1990年代となっております。そのため、現在と比べると違和感を覚えられる点が多々あるかと思います。ご了承下さいませ。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
神様自学
天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。
それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。
自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。
果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。
人の恋心は、どうなるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる